現状出ている書籍はこの六話までの収録らしいですが、諸事情が絡んだのかいつもより倍の分量でお送りする第六話です。
流石に未読者に配慮している余裕が無くなったので、ネタバレ全開でいきますがご容赦ください。
セロルティアさんの意外過ぎるパーソナリティーは世界の裏事情もしくはメタ視点に通じているのか、単なる中二病なのか判断に困りつつ。
暫定一人称視点が前話で沈黙してしまいましたので、視点の方は事態を俯瞰できるマイペースで頭脳明晰な彼女目線へ移行することになりました。
そんなこんなで、さて。
まずは血の狂騒/競走からはじまり、そこから生き延びたわずかな訓練生たちの、詰んでる現状の確認が第一幕といったところ。
ネームドと十把一絡げの間で右往左往していた轟鬼五姉妹に欠員が出るのは覚悟していました……。
が、やっぱりこの手の戦局が進むにつれて失われていく家族のパターンは、同じ人の死と違う人の死を同時に、それも何度も味合わされるようで私自身は好みはすれど、辛い展開だと思います。
で、ここからが前半戦のはじまり。
刹那の判断が生死を分かつ攻防もさることながら、塹壕という一応の安全地帯を隔てて限られたリソースをどう使うか、前々回までで出た価値観の衝突、とそれ以前の感情の激突がまたしても再来、といったところでしょうか。
籠城か? 脱出か? どちらにせよ八方ふさがりの中、この世界のルールについて考えるセロルティアは突破口を発見します。
戦場であり、サバイバルが私とて大好きなのでしょうね。ワンアイデアに乗っかりつつ、敵機撃破を目指し即興でセオリーを組み立てていく反撃の図式がたまりません。
その上で、計算を崩す不確定要因、これが戦略眼を持つ者でも見通せない戦場の霧、なのだと。
そして、その霧を払う爽快感。嫌いな人、います?
後半戦は、まさかの衝撃の真実から幕開けです。
まさに、地下から天井を貫くような驚天動地、主人公は誰なのか? という疑問はさて置いて、暫定主人公から「死」が取り上げられた瞬間です。
もうね、ご都合主義とか野暮な言葉が吹き飛びました。
一気に脳内に情報が叩き込まれて、それでも疾走感を損なっていない。
さんざ人体から巻き上げられる血煙でモヤモヤさせられていた中、風が吹くかのような反撃を、前半の余勢を駆りて一気に書き立てられたのですから!
前半のセロルティア視点は従来の価値観が全部ぶっ壊されるこの後半に備えてなのかと思わせられます。
前半が「既知」の領域の中であがく物語だとすれば。
後半は「自由」過ぎる人格を持っているのに、「不自由」な肉の檻と「不合理」な鉄の檻に閉じ込められていたシーエなんですが、一転。完全な「自由」、死からすら自由という「未知」に放り出された物語とします。
別に、従来の価値観が一切合切無効化されたわけじゃなくて、変わったのはシーエ周りだけ。
その辺の齟齬を知っているからこそ、読者は怒涛の展開についていけたと思えば興味深いです。
というか、物語から退場したミカイヌの未消化の伏線回収もお見事。本人の回想に文を割くわけでなくて、読み手側に一気に悟らせた一枚の挿絵、あれも強かったですね。
謎は増えていくんですが、残酷な中に明瞭に情報を開示していく手管の鮮やかに憧れます。
それと、もうね、壁のあったシーエとエムジが完璧に対等なバディとして、男女とかいう境目さえ越えて共闘するシチュエーションに痺れます。
仮に、機械と機械の恋で、愛で、信頼なんですが、もう言葉要らず説明要らず。
初見「は!?」の連続で上下に振り回された中で変わらないものがあるんだって思うと、この瞬間作者と読者は信頼関係で結ばれたと思います。
うん、このジェットコースターに最後まで乗っていいよッ!
途中下車イコール大怪我ですよ、だけど関係ないよねッ! ってなものですよ。
それはそうと、最後いろんな意味で美味しいところを持って行くセロルティア(略称)さんは、最高でしたが。
シーエが主人公って時点で躁的な物語になるのはわかっていたとは思うんですが、この子シーエの独自性に負けてなかったです、いやー、性格的な意味はもちろん、生態的な意味でも。
さて、筋書きを書いているのは誰なのか、登場人物がその領域に手を伸ばしてくるのはこの作者としても望むところのような気がいたしますが、私読者としても気になりつつ、この六話を閉じたいと思います。
まずは四話まで、さすれば六話、さてその次は――?
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シーエが死んだ……!? 安全なはずだった「実習」が未曾有の惨劇に描き換えられ、未熟な軍学徒たちは次々にその犠牲となっていく。絶望だけしか見えない状況のなかで、戒那・セロルティア・イデアはある事に気がつく――。遅れてきた主人公とは? シーエは本当に死んだのか? 様々な謎の一片が明らかになっていく怒涛の第6話。
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2015/11/20
- ファイルサイズ19007 KB
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登録情報
- ASIN : B017NK43HU
- 出版社 : PHP研究所 (2015/11/20)
- 発売日 : 2015/11/20
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 19007 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
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- 本の長さ : 177ページ
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