答えは「是」。
この限られた共同体においては、社会機構の存続のためにはそれが当然のことと認められ、宗教的な規範さえもって、そのあり方を補強しています。
生殖という天成のメカニズムにテクノロジーという人為的な要素が加わることで「貧乏人の子沢山」という言葉さえ認められません。
底辺の種族は増えすぎたとしても、間引かれるだけです。
うーん、ＳＦですねー。
合理性の前に人倫が膝をつくところとか。システムの裏に非合理性が隠れているところとか。
「ヒトリディアム」という名で呼ばれる作中の人類たちはその実、数多くの人種に分かれていて、種ごとに社会階層が定められています。
その区分は厳密かつ強固なもので、安定した社会特有の秩序と歪さを築く一因となっているのです。
それこそ、最上位が最底辺を足蹴にしても誰も気に留めない程度には。
うーん、ＳＦだなー。
家格を背負いつつ、自身の夢を目指す橙子、吏人。
天衣無縫に夢を語る我らがシーエ。
我関せずのセロルティア。
そして家族のため、目先を精一杯生きるしかないミカイヌ。
主人公シーエの所属する第玖班は変人揃いですが、「夢」を目指す冒険思考という意味では大体一致していると思います。すくなくともチームを牽引する側は……。
一方、既得権益に乗っかかる層は別にそんな冒険をせずに、箱庭の中で平和を謳歌していればいいという保守思想が強いようで――。
今回、そんな思想を代弁して主人公たちと対立した輩は粗暴で卑劣な手段を取りましたが、考えだけは理解はできます。
結局、生まれてきた「命」をどう使うかはその人次第で誰にも邪魔は出来ないんです。
安穏に暮らすもよし、盛大に夢に捧げるもよし、と。
その辺はゼロマキナ公式Webサイトで公開されている「楽屋話」というコーナーでも語られていると思うので、読み終わった方はＧＯ！ です。
同コーナーは作中人物とは関係ないシーエとエムジがボケツッコミを繰り広げつつ、やいのやいのと今回こーだったねーとか、今度どうなるんだ？ とか語り合ったりする対談形式の読み物です。
笑いあり、涙は、ありませんが、一話ごとに総括をする意味でも「シーエ」について知る意味でもおススメです。
さて。
今回、生まれるための手段を介して語られるのは、「何のために生まれてきたか？」ではなくて「何のためにこの命を使うか？」という余裕のない問答。
「家族」という概念が希薄になりつつある社会の中で、それぞれの人間関係と大事な人を見つけている各々ですが、その中にあって種と家族のために身命を賭そうとするミカイヌが危うく、また不穏な引きで終わります。
余裕、資源であったり空間であったり様々ですが、それが乏しい社会は人々から選択の余地を奪います。
それでも、何をすべきか？ 実力主義の軍の中から「アルマ」という夢への道を繋げた主人公。
平穏はいつまで続くのか？ また、これからの危機にあって選んでいられる暇は与えられるのか？
不安を感じつつ、四巻（みち）を目指して三巻を閉じます。
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