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センセイの鞄 (文春文庫) 文庫 – 2004/9/3

5つ星のうち 4.4 178件のカスタマーレビュー

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商品の説明

受賞歴

第37回(2001年) 谷崎潤一郎賞受賞

商品説明

   川上弘美といえば、生き物とモノ、時間と空間などさまざまなものの境目が溶け、混じり合うような、エロチックで不思議な世界を描いた作品が特徴的だ。

   本書では、日常を静かに淡々と過ごしていた2人がゆっくりと近づき、季節の移り変わりとともに、互いの関係を育んでいく大人の恋愛を描いている。恋愛といっても、勢いにまかせた情熱のそれとは違う。穏やかな情愛というほうが、しっくりくるような愛だ。あのどろりとした「川上ワールド」を期待する読者はちょっともの足りなさを覚えるかもしれない。

   およそ恋愛とは結びつかないはずの2人―― 38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の駅前の一杯飲み屋で居合わせて以来の仲だ。お互い1人で酒を飲み、さかなの好みがよく似ている。
 「『女のくせに手酌ですかキミは』センセイが叱る。『古いですねセンセイは』と口答えすると、『古くて結構毛だらけ』とつぶやきながらセンセイも自分の茶碗いっぱいに酒を注いだ」
   憎まれ口をたたき合いながら、2人は共に過ごすようになる。

   センセイはツキコさんの高校時代の国語の先生だ。背筋をしゃきんと伸ばし、ジャケットを着、いつも同じ黒いかばんを頑固に持っている。一方のツキコさんは独身でもてないわけではないのだが、同世代の男性に誘われてもぴんとこない。かつては恋人とさえ「ぬきさしならぬようになってしまう」のを恐れていた。そんなツキコさんが、しだいにセンセイを強く求めるようになっていく。

   30歳の年齢差を超えるというよりむしろ、センセイの老いをしっかりと見つめていくツキコさん。ツキコさんのまっすぐな思いをまぶしい気持ちで受け止めるセンセイ。進展しているのかなんなのか、じれったい、ゆったりとした2人のやりとりが、ほほえましく、安らかだ。

   川上の紡ぐ言葉と情景がやわらかで、温かく、人を愛することのせつなさがじんわりと伝わってくる作品だ。(七戸綾子) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

商品の説明をすべて表示する

登録情報

  • 文庫: 278ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2004/9/3)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4167631032
  • ISBN-13: 978-4167631031
  • 発売日: 2004/9/3
  • 商品パッケージの寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4 178件のカスタマーレビュー
  • Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 16,255位 (本の売れ筋ランキングを見る)
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カスタマーレビュー

トップカスタマーレビュー

形式: 単行本
久しぶりに、ゆったりとした幸せな「恋」の話を読んだという満足感が得られる本でした。最近は激しく恋い慕うもの、恋愛を通して女が自立していくもの、夫婦でダブル不倫しているものなどの恋愛小説を読み続けて、ちょっと疲れていましたから、ずごく新鮮に感じました。ツキコさんとセンセイの、これは恋愛小説というより、“恋物語”と呼びたいと思いました。なぜ、この本が出た時に手にとらなかったかと、少し後悔しました。ツキコさんとセンセイは、淡々と酒を呑み、おいしいさかなを食べ、静かに話し・・・端からみればそれは立派なデートのようなんだけど、本人たちはそう意識しないで会っている、そんな二人の行間から切なさや愛しさやためらいが立ちのぼり、こちらの胸に迫ります。贔屓の野球チームをめぐる小さないさかい、ツキコさんのかわいいやきもち、「ツキコさんデートをいたしましょう」というセンセイの申し込み・・・どれをとっても穏やかで細やかで、こんな恋があるんだなあ、とため息。でも、センセイの老いを見据えた、謙虚な態度には頭が下がります。ツキコさんがセンセイを強く想うようにみえて、実は何もかも受け止めているセンセイ。30歳近く年の離れた二人に訪れる、センセイの最晩年。それを引き受けさせるのをセンセイはどんなに思い悩んだことかと考えると、胸に突き上げるものがありました。センセイがいつも持っていた黒い鞄。何も入っていないけれど全てが...続きを読む ›
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投稿者 cocco2002 投稿日 2002/2/16
形式: 単行本
「私」と「センセイ」の物語が,丁寧に丁寧に,季節に沿って緩やかに流れていきます。ストイックなほどの二人の駆け引きは,それでも,おたがいに,決して無理しているようには見せません。これを単純に「大人の恋愛」と表現していいのかどうかは分かりませんけれど,時間をかけて美しく積み上がった「センセイ」の存在は,「私」にとって永遠の財産になったように思います。世間に恋愛の模様は限りなく溢れていますが,今の時代に,この物語を読めることは素敵なことです。
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投稿者 美花絵留 VINE メンバー 投稿日 2005/7/22
形式: 単行本
70代のセンセイと、38歳のツキコさん。二人に共通するのは「孤独」。一人で、生きて、ひとりで食べて、一人で旅してきた二人。行きつけの居酒屋で、約束もせず会うようになってから、いつの間にか互いがなくてはならない存在になっていく。
二人の会話の中には何も熱い想いや、激しいものはない。いたって、日常的な、先生と生徒の会話。でも、そこからとても温かい優しい気持ちが伝わってくる。センセイの老いだけが、悲しく横たわり、「永遠」のないことを意識させる。
ゆっくり味わって読める1冊。
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形式: 単行本
 この小説を読み終えるまでに、何杯の酒を飲んだことか。
 居酒屋で偶然(必然?)に再会したかつての教師と教え子の、淡々と、そしてしっかりと熱い恋の物語。あまりにも透き通るような文章のために、読んでいるこちらのほうは、小説の世界を漂う雲のような気分になる。そして、絶妙なのが、酒と肴とそれを楽しむ登場人物の描写だ。きっと、酒好きの人なら呑まずにはいられなくなるだろう。
 雲になったような気分で、この小説を肴に一杯やりませんか? 
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形式: 単行本
37歳の女性と70代の男性の恋物語。
年齢差もあるし、「大人」よりも大人の恋愛。
けれども、男と女の間に巻き起こる感情には
それらはまったく関係ない。
二人は、真剣に相手のことを考え、互いに優しくなれ、
思いやり、大切にし、愛し合っていく。
センセイの「体のふれあいはとても大切なことです」という
言葉がとても心に響きました。
やきもちを焼いたり、センセイに甘えたり、意地をはったり、
ツキコさんの心が揺れ動きながら、センセイにかたまっていく
軌跡にはとても共感できたし、最後、鞄をあける場面では
ツキコさんのかなしみと喪失感がとてつもなく伝わってきて
涙がこぼれました。
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形式: 単行本
恋愛小説としても、とても淡々と美しい佇まいで存在していますが、日本ならではのお酒や肴の楽しみ、日本ならではの枯れた風情が満載の滋味あふれる小説です。特に料理が各場面で効果的に出てきます。
私はこの小説で初めて「たで酢」という言葉を知りました。
季節それぞれのシンプルな料理が美味しそう!目の前に小鉢を出されたようにつばを飲みこんでしまうこともしばしば。
私もサトルさんのお店で食べてみたい。飲んでみたい。
そして、この小説では恋愛という言葉を使うのが憚られるほど、もっと素朴な切実な気持ちがあふれてます。いとしい気持ち、相手を請うる気持ち…。それは、二人の歳の差や、かつて先生と生徒だったという気後れを弾みにして、かえってふくらんでいくようです。
この小説を読んだ後しばらくは、抑制の効いた付き合い方が眩しくて、センセイの口調を真似してしまうこと請け合いです。
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