39年前のきょう
(1979年11月4日)
小雨降る大阪球場で
日本シリーズ第7戦
近鉄対広島が行われ
1点差で広島が勝ち
球団初の日本一となりました。
その9回裏の攻防を描いたのが
『江夏の21球』です。
いったんはノーアウト満塁となります。
そもそもなぜそんなことになったのか
そのピンチをいかにして切り抜けたのか
すべての要素は
19球目、スクイズをはずした投球に
収斂されていきます。
勝者にとっては
「カーブの握りで意識してはずした」
であり
敗者にとっては
「カーブのすっぽ抜けだ」
です。
読者にはそのどちらを是とするか
あたかも推理小説を読むような
思考と判断の楽しみが残されています。
山際淳司(1948-1995)は
攻める側、守る側
あるいは選手、ベンチ
双方の当事者たちにインタビューを行い
思惑と心理と結果を描き出しました。
『江夏の21球』によって
スポーツ・ノンフィクションという
分野を確立したと言われます。
初出は文藝春秋の雑誌『ナンバー』
(Sports Graphic Number)
創刊号でした。
もともと山際淳司はとくだん野球に
詳しかったわけではないそうです。
ちなみにNHKは
野村克也氏(1935ー)の解説で
NHK特集・スポーツドキュメント
『江夏の21球』(1983.1.24放送)
を作製しDVD化もされています。
山際淳司とナンバー編集部も
制作に協力しました。
情報量はオリジナルの文章より
映像の方が多く盛り込まれています。
さて本書には
『江夏の21球』を含む8篇が
収められています。
そのうち圧倒的な白眉が
『江夏の21球』であり
8篇のうち前から2番めに位置し
文庫本なら27ページあります(pp.39-66)。
(なぜ冒頭に持って来なかったのか
今となっては不思議です)。
最初、本のタイトルの
『スローカーブを、もう一球』は
あの日、決め球に使った
大きくタテに落ちるカーブのことか
と思いましたが
別の話(高校野球)でした。
そもそも江夏豊氏(1948-)は
指が短いのでフォークの握りはできず
そのかわりカーブが2種類あり
ひとつが右打者の膝もとに
大きくタテに落ちるカーブでした。
あの日はこの
「カーブが有効」
と分かったので
決め球を落ちるカーブとし
それから逆算して
ピッチングを組み立てた由です。
従って決め球の前、見せ球としての
直球が重要でした。
逆にそれを見逃した打者は
ずっと後悔することになります。
詳細は是非
本書をお読みになっていただけると幸いです。
併せてDVDも参考になると思います。
実は39年前、私は
リアルタイムでこの試合の中継を
ラジオで聴いていました。
日曜日だったと思います。
溝畑茂(1924-2002)『数学解析』(朝倉書店)
という本を読みながらラジオをつけていました。
数学解析(mathematical analysis)とは
要するに「解析学」のことで
微分・積分・簡単な微分方程式が内容です。
距離の2乗に反比例して働く力があるならば
質点は楕円軌道を描く
(たとえば惑星や彗星の運動)
ということが丁寧に書かれていました。
ケプラー(1571-1630)が
観測と直観によって導いた法則を
ニュートン(1642-1727)は
数学を駆使して計算で導きました。
力学的な世界観が生まれる一因です。
話がそれましたが
プロ野球に関してはもともと
「西鉄」ライオンズのファンでした。
三原脩(1911-1984)
中西太氏(1933-)
仰木彬(1935-2005)
豊田泰光(1935-2016)
稲尾和久(1937-2007)
などの名前を周囲の大人たちが
よく語っていました。
1979年、西鉄はもうありません。
ライオンズつながりで西武ファンになるか
京都に来たから阪急ファンになるか
(四条河原町は阪急電車の終点)
決断を先延ばしにしていました。
本業(勉強)が忙しくてあまり
プロ野球をフォローしていなかった
というのが正直なところです。
従って
近鉄対広島戦は
試合そのものを楽しみに聴きました。
実は『江夏の21球』を読んだのも
DVDを観たのもずっと後年のことです。
9回裏の攻防は26分49秒。
リアルタイムで聴いていると
あっと言うまに感じました。
「すごい試合だなあ」
と思ったのを覚えています。
翌日、大学に行くと
広島修道高校卒の同級生が
「なんどテレビを消そうと思ったことか」
と言いつつ
満面の笑みを浮かべていたのが印象的でした。
日頃から
「わしは樽募金をしたけえのお」
(ぼくは樽募金をしたんだよ)
が口癖のカープファンでした。
人間の(私の)記憶とは曖昧なもので
あの日、大阪球場に小雨が降っていたとは
ずっと知りませんでした。
(ボールがすべりやすかったことも
ゲームに影響したかもしれません)
さらに、てっきり
江夏氏は9回裏から登板したと
思い込んでいましたが
実際は7回裏から登板でした。
1点差で7回裏から登板とは
現在の標準的継投法とは違って
たいへんだったのだと思います。
セットアッパーという
ポジションはなかったことになります。
(ホールドという記録もなかった)
単にリリーフと呼んでいたのでしょう。
そう言えば
阪神で先発として大活躍した江夏氏ですが
血行障害で長いイニングが投げられなくなり
南海にトレードに出されます。
当時、南海の選手兼任監督だった(前述の)
野村氏が「短いイニングなら」と
リリーフ転向を勧めましたが
なかなか承諾しなかった。
先発からリリーフという配置転換が
都落ちのようなイメージがあった頃です。
ところがある日、野村氏が
「野球に革命を起こそうじゃないか」
と何気なく口にしたところ
江夏氏が反応
「なに、革命か?」
「おう、革命じゃ」
とリリーフ転向が決まった由です。
なんだか時代を如実に反映しているので
好きなエピソードです。
エピソードついでに申し上げれば
あの日、ノーアウト満塁になった時点で
二塁ランナーだった
吹石徳一氏(1953-)の御令嬢が
福山雅治氏(1969-)の御令室
一恵さんです。
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スローカーブを、もう一球 (角川文庫) 文庫 – 2012/6/22
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ホームランを打ったことのない選手が、甲子園で打った16回目の一球。九回裏、最後の攻撃で江夏が投げた21球。スポーツの燦めく一瞬を切りとった八篇を収録。
- 本の長さ285ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA/角川書店
- 発売日2012/6/22
- ISBN-10404100327X
- ISBN-13978-4041003275
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
たったの一球が、一瞬が、人生を変えてしまうことはあるのだろうか。一度だけ打ったホームラン、九回裏の封じ込め。「ゲーム」―なんと面白い言葉だろう。人生がゲームのようなものなのか、ゲームが人生の縮図なのか。駆け引きと疲労の中、ドラマは突然始まり、時間は濃密に急回転する。勝つ者がいれば、負ける者がいる。競技だけに邁進し、限界を超えようとするアスリートたちを活写した、不朽のスポーツ・ノンフィクション。
著者について
1948年神奈川県生まれ。80年「ナンバー」創刊号の短篇ノンフィクション「江夏の21球」でデビュー。81年『スローカーブを、もう一球』で第8回日本ノンフィクション賞受賞。1995年、没。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山際/淳司
1948年神奈川県生まれ。80年「Sports Graphic Number」創刊号の短編ノンフィクション「江夏の21球」でデビュー。81年『スローカーブを、もう一球』で第8回日本ノンフィクション賞受賞。95年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1948年神奈川県生まれ。80年「Sports Graphic Number」創刊号の短編ノンフィクション「江夏の21球」でデビュー。81年『スローカーブを、もう一球』で第8回日本ノンフィクション賞受賞。95年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA/角川書店; 改版 (2012/6/22)
- 発売日 : 2012/6/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 285ページ
- ISBN-10 : 404100327X
- ISBN-13 : 978-4041003275
- Amazon 売れ筋ランキング: - 25,630位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 669位角川文庫
- - 695位スポーツ (本)
- - 2,564位ノンフィクション (本)
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本作は1979年から1981年前後まで、作者が取材したプレイヤー達のノンフィクション。
星稜高校 堅田外司昭
広島東洋 江夏豊
ザ・トール・キング・クラブ 津田真男
読売巨人 黒田真治
堀口ジム 春日井健
トヨタカローラ神奈川 坂本聖二
高崎高校 川端俊介
土庄高校教員 高橋卓巳
当然ですが、勝者もいれば敗者もいる。
モスクワオリンピックで日本が出場を辞退したため、どちらにもなれなかった方もいる。
作者は8人に対して真摯に向かい合い、勝ち負け以上にそれぞれのプロセスを客観的に描いております。
個人的に「ジムナジウムのスーパーマン」は出来過ぎなので割愛するとして、
その他7人のプレイヤーには弱さを認めながら「ここだけは譲れない」ものをそれぞれが持っている事。
それも誰かのためでなく、自分のために戦っているのが共感します。
野球の話が半分ですが、4人の投手の共通点は繊細かつデリケートですね。
本書は他の競技や社会でも類似する話はあるハズで、全ての戦っている方にお勧めできる良書です。
星稜高校 堅田外司昭
広島東洋 江夏豊
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個人的に「ジムナジウムのスーパーマン」は出来過ぎなので割愛するとして、
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それも誰かのためでなく、自分のために戦っているのが共感します。
野球の話が半分ですが、4人の投手の共通点は繊細かつデリケートですね。
本書は他の競技や社会でも類似する話はあるハズで、全ての戦っている方にお勧めできる良書です。
2014年6月1日に日本でレビュー済み
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作者が亡くなって、早いもので20年が経とうとしています。彼の死後も、時折思い出したように本書を手にとっては、まるで初めて読むかのように、何度もこの作品を読み返しています。
「江夏の21球」は何度読んでも、ヒリヒリするような緊張感に包まれるし、表題の「スローカーブを、もう一球」は県立高校の爽やかな夏に胸が熱くなります。まさに、時代を超えた名作として、私はこれからも何度も読み返すことと思います。
「江夏の21球」は何度読んでも、ヒリヒリするような緊張感に包まれるし、表題の「スローカーブを、もう一球」は県立高校の爽やかな夏に胸が熱くなります。まさに、時代を超えた名作として、私はこれからも何度も読み返すことと思います。






