2012年10月から刊行が始まった、この角川文庫の国名シリーズの新訳版も、遂に最終の第9作目「スペイン岬の秘密」が2015年4月に刊行され、一つの区切りがついたところです。
小学生の頃、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティのジュブナイルを読んだのち、高学年になってからは、大人と同じ文庫で海外ミステリを楽しみ出した私にとって、クイーンの国名シリーズは、「あの<読者への挑戦状>のあるミステリ」として、強く心に残っていました。
それから数十年、多くのミステリを読んできましたが、国名シリーズも細部は忘れてしまい、本棚から、古い文庫を取り出して、再読しようとした矢先、この新訳版が発表順に刊行され初めていることを知り、さっそく第1作「ローマ帽子の秘密」を買って読んだのが、2013年7月のこと。
あれから、新訳が発行されるたびに、読み続けてきました。
じつは、私は国名シリーズを完読していたわけでなく、一部読み落としていました。
この「スペイン岬の秘密」もそのひとつで、全く初めての読書となりました。
アメリカの北大西洋に面したスペイン岬に立つ別荘。
この建物のテラスで、男の絞殺死体が発見される。
男はマントで覆われていたが、その下は、「全裸」。
一体なぜ衣服をはぎ取られていたのか?
本作品は、このホワイ・ダニットをエラリー・クイーンが解き明かすというものですが、このシリーズの命とも言える、「ロジックによる真相解明」の妙味が楽しめる一作となっています。
9作を読み通して思ったことは、国名シリーズは傑作揃いだということ。
一部「読者への挑戦」のない作品もありますが、フェアプレーの精神と、各作品に凝らされた工夫は、今後もミステリの古典として、不動の地位を保っていくことでしょう。
シリーズものは第1作から順番に──が原則ですが、このシリーズは、どこから手をつけても問題ないと思います。
各種ミステリランキングで上位に食い込む、「エジプト十字架」や「ギリシア棺」からでも良いし、もちろん本作からでも構わないと思います。
なお、この角川文庫の新訳は、各作品とも充実した巻末解説があり、読み落としてしまいそうな、著者の工夫やロジックの面白さなどが説明されているので、本編読了後もお楽しみが待っているのも、オススメのひとつです。
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