話のテーマとしてはソラリスに似ている。
地球外の知的生命体の、人ならざる知能に人が振り回されるが、結局理解は叶わないと言う点ではそっくりだ。
ただ決定的に違うのは、ソラリスの場合主人公が研究員なのに対して、今作のレッドは昔気質の技術者と言う事だ。
レッドのような、気難しい男は主人公として嫌いでは無いのだが、こう言う奇怪な世界観ではあまり向いてないのではと個人的に思う。
例えばソラリスの場合は、最終的に理解できないと言う結論に至るにしてもちゃんと知的生命体の思考を理解しようとするし、また読者に丁寧にそれらの事を描写してくれる。
対してレッドの場合、碌に説明してくれない。同行する新人や素人が妙な質問をしたり言う事を聞かなかったら拳が飛んでくる。
そんな調子なのでイマイチイメージが湧きにくい所が多かったし、それにレッドは異星人に対して研究対象としての興味が全くなく、ただ金を稼ぐためにずっと動いている。無論そうは行かず徐々に巻き込まれては行くが、姿勢としてはやはりその日その日を生きる事を優先するので、彼の物語は分かり易い起承転結を用意してくれない。
三章で急にピルマン博士が出てきて色々と喋っていたのは、レッドに最後までストーリーを任せていたらゾーンの世界を碌に説明しないまま終わってしまうからだろう。
世界観としては面白いし、設定も良いし、主人公もキャラ自体は悪くはないが、あまりに不親切なそのキャラは案内人としては適切では無いように思えた。何せ映画と違い、小説は言葉で説明してくれないと何も分からないのに最初から最後まで碌に説明してくれないんだもの。
とは言えゾーンの奇妙な世界自体は面白いので読んで観る価値が無いとは言わない。ただ案内人である主人公が読者に対してあまりにぶっきらぼうで不親切なのが残念。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
