本書は「はじめに」で現代ロシアではスターリンの人気が意外に高いという事実を紹介している。スターリンはジョージア(グルジア)出身なのであるが、私も最近ジョージア人と話す機会があり、スターリンを評価する人物も多いという話を聞いた。本書は、スターリンの功罪を記載することで、なぜ「非道の独裁者」と従来考えられているスターリンがロシアでは人気があるのかを推察する内容になっている。
第1章「ゴリの少年」、2章「カフカ―スの革命家」、3章「コーバからスターリン」はスターリンの生い立ちから若き日の活動が少ない資料と新資料を掘り起こし、丁寧に解説し、これまでの後のスターリンから推測したような少年時代像とは異なる科学的な評価をしていて本書の中ではもっとも充実した内容。ここまでスターリン自身が書いた詩なども紹介される93頁は、スターリンの実像に迫っている。
これ以降、表舞台に登場するスターリンについては、その死までを重要な事件をカバーしながら駆け足で記載。それにも関わらず、教科書的な記載が羅列されているだけではなく、非常に読みやすく初学者にも楽しめる内容。20世紀のソビエトの歴史の優れた要約であり、末尾の索引と年表も重宝で、レファレンス替わりに使える。この部分は、スターリンがソビエトという国を発展させるためにやったことと、その犠牲と誤りについて歴史的な評価はバランスがとれており信頼ができる。一方で、スターリン自身の言葉については記載が少なく、当時、スターリンが何を考えていたのか、どういう人物であったのかは、彼が関連した事件から推測するしかない点は物足りない(若き日のスターリンよりは情報が多いはずなので、表舞台に出て来てからのスターリンについて、もう少し人物像を浮き彫りにしていくことが可能だったのではと思われる)。以下にそれぞれの章で興味深い記載を抜粋する。
4章「ロシア革命と内線」。“第一次世界大戦で帰還することのなかった軍人が285万、非軍人が44万で、これはロシアが第一次世界大戦の交戦国の中で最も多くの犠牲者を出した国であったことを意味するp96”. “ヨーロッパの社会主義革命という本来の目標を無視した素人議論を後に一国社会主義論に発展させたp102。”1990年代に発見されたレーニンの隠された一面を示す文書には富農の銃殺など残虐な命令(実行されなかったが)書かれているp108。“ ”レーニンの労働者らの軍隊への動員に関する恐ろしい提案p116(ソ連崩壊後にあきらかになった)“ ”辺境地域の地方的自治制は辺境地域の人々、すわなち多くは少数民族を味方にするために必要な措置(レーニン・スターリンの少数民族の権利擁護とスターリンの民族に対する知識を示す)p123“。
5章「権力闘争の勝者」ではスターリンの思考過程を示す次の引用。”資本主義国では、工業化のための資本を他国の略奪とか、外国からの借金奴隷的な借款とかによって調達してきた。しかしソ連にはこうした方法はあり得ない。残っているのは国内の蓄積によって国を工業化することだけであるp166.“
6章「最高指導者」では農村の悲劇を紹介、”餓死者は400-500万人ほどで第一次世界大戦で死亡したロシア国民より多くのソ連人が、この時期の政策の結果として命を落としたp191.“
7章「ヒトラーとの戦い」では”ドイツの戦後の解体を最初に説いたのはローズヴェルトp230“ ”1943年スターリンは北カフカ―スの少数民族の強制的追放政策を推し進めたp231“ ”1944年チャーチルも大国による勢力圏分割の発想から逃れられなかったp234“ ”ヒトラーとの戦いでソ連は軍人866万人、国民全体で2700万人の犠牲者を出したが、スターリンはこの事実を隠すことによって、ソ連体制と彼の権威を守る道を選んだp236“。
8章「アメリカとの戦い」ではスターリンは戦後のドイツと日本の復讐戦を警戒しており、”ドイツ人を復讐戦に駆り立てないようにするには、西側諸国はドイツの分割という政策を軽々しく論じるべきではないp239. 日本は人口が多く、復讐心の強い国民p241“と予測。この”ドイツ軍国主義と日本軍国主義の再生という議論は1980年代までソ連の定期刊行物ではお馴染のテーマだったp241.“ ”トルーマンは原爆を手に入れたことを打ち明け、モロトフらにアメリカが自分を偉そうに見せている印象を与えたp242“ ”スターリンは英米両国とソ連が世界各地の支配をめぐって競争状態にあると受け止めながらも、一部の地域では早々と和解の姿勢を示し、‘我々がイランに引き続きとどまることができないのは、主として、イランのわが軍の存在がヨーロッパとアジアにおけるわが国の解放政策の基礎を掘り崩すからだ’と発言p246“。1947年のトルーマン・ドクトリンに対しては”当時スターリンの周辺にいた人々も、ギリシャがイギリスという帝国主義国の手に落ちないよう、ソ連が支援するのは当然だと考えていた。現在でもロシアの多くの人々は、こうした行動が内政干渉ならば、アメリカのギリシャ政府に対する軍事的支援も同様だと考えているp248.“ ”1946年当時、ロシアの餓死者は100-200万人p250.“
終章「歴史的評価をめぐって」では”スターリンの死亡時の1953年に日本人は565人抑留されていたp281.“ ”フルシチョフに言わせれば、スターリンがいたからソ連は戦争に勝てたと考えるのは奴隷の発想p288“。”
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スターリン - 「非道の独裁者」の実像 (中公新書) 新書 – 2014/7/24
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「非道の独裁者」はなぜ今もロシアで支持されるのか。生い立ちから、ソ連を率いてヒトラーやアメリカと争うまで、その生涯をたどる。
- 本の長さ318ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2014/7/24
- ISBN-104121022742
- ISBN-13978-4121022745
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「非道の独裁者」―日本人の多くが抱くスターリンのイメージだろう。一九二〇年代末にソ連の指導的地位を固めて以降、農業集団化や大粛清により大量の死者を出し、晩年は猜疑心から側近を次々逮捕させた。だが、それでも彼を評価するロシア人が今なお多いのはなぜか。ソ連崩壊後の新史料をもとに、グルジアに生まれ、革命家として頭角を現し、最高指導者としてヒトラーやアメリカと渡りあった生涯をたどる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
横手/慎二
1950(昭和25)年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院博士課程中退。外務省調査員としてモスクワの日本大使館に勤務。慶應義塾大学法学部助教授を経て、同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1950(昭和25)年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院博士課程中退。外務省調査員としてモスクワの日本大使館に勤務。慶應義塾大学法学部助教授を経て、同教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2014/7/24)
- 発売日 : 2014/7/24
- 言語 : 日本語
- 新書 : 318ページ
- ISBN-10 : 4121022742
- ISBN-13 : 978-4121022745
- Amazon 売れ筋ランキング: - 19,552位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 5位ロシア史
- - 45位ヨーロッパ史一般の本
- - 88位中公新書
- カスタマーレビュー:
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最近、書評などでも話題になっている本であり、呉智英に薦められたこともあって、読んでみた。
ソ連崩壊後に公開された最新の資料なども駆使して、旧来とは別のスターリン象の新たな構成を試みる、という触れ込みだが・・・・。
新たな資料は使われているものの、ぼくにとってスターリン象が変わったということはない。
旧来の一部の論者が言うような、幼少時からの個人的なコンプレックスと猜疑心だけで、党内で影響力を持つようになり、やがて独裁者になっていくというのでは、やはり彼が党内で支持を得ていくプロセスは説明できない。
こうした場合、その論拠とされるのは最晩年のレーニンが、政治局メンバーに対して、「スターリンはあまりにも粗暴すぎる」と批判したことを根拠に挙げるのだが、本書では横手は、それは高々、政治局内部での振る舞いとしての粗暴さであって、それ以降のクラークの撲滅や粛清、対ナチスドイツの初期で見られた残忍性と同一視するのは無理があると指摘する。
まあ、このあたりは同意できるが、しかしそれとて、新しい見解とは言えない。
また、一国社会主義論がトロツキーの世界革命論に勝利していくプロセスは、当時のヨーロッパ革命の退潮との関連で考えれば、理論的にはともかく政治的には当然のことであり、少なくとも某党派は30年以上前からそれを指摘していたw
また、30年代初頭の急速な工業化の原資が農民からの収奪によるものであったが、しかし、急速な工業化は社会主義の前提であり、かつナチスドイツとの戦争を切迫したものと感じていた当時の彼らにとってみれば避けて通れないものであったことも、目新しい見解ではない。
というわけで、歴史のおさらいではあるものの、刺激を受けたとは言えない本書であった。
ただ、改めて感じるのは、独裁者と呼ばれる政治家の中で、例えば毛沢東は、様々な誤りや粗暴性が明らかになっているものの、その一方で魅力もあった人格であったことは疑いえない。
歴史上最悪の独裁者であったヒトラーにしても、当時のドイツ国民が熱狂し魅了されてしまうほどに、悪魔的な魅力があったこともしかりである。
対して、スターリンはある点では優秀な政治家ではあったが、本書によっても、もちろんアイザック・ドイッチャーの『スターリン』でも、何を読んでも、人格的魅力を感じることができない。
権力を確立した党の書記局を牛耳ることで独裁的権力を掌握したスターリンと、大衆に向かって直接演説することで権力を得た独裁者との違いのようなものを、改めて感じたのであった。
ソ連崩壊後に公開された最新の資料なども駆使して、旧来とは別のスターリン象の新たな構成を試みる、という触れ込みだが・・・・。
新たな資料は使われているものの、ぼくにとってスターリン象が変わったということはない。
旧来の一部の論者が言うような、幼少時からの個人的なコンプレックスと猜疑心だけで、党内で影響力を持つようになり、やがて独裁者になっていくというのでは、やはり彼が党内で支持を得ていくプロセスは説明できない。
こうした場合、その論拠とされるのは最晩年のレーニンが、政治局メンバーに対して、「スターリンはあまりにも粗暴すぎる」と批判したことを根拠に挙げるのだが、本書では横手は、それは高々、政治局内部での振る舞いとしての粗暴さであって、それ以降のクラークの撲滅や粛清、対ナチスドイツの初期で見られた残忍性と同一視するのは無理があると指摘する。
まあ、このあたりは同意できるが、しかしそれとて、新しい見解とは言えない。
また、一国社会主義論がトロツキーの世界革命論に勝利していくプロセスは、当時のヨーロッパ革命の退潮との関連で考えれば、理論的にはともかく政治的には当然のことであり、少なくとも某党派は30年以上前からそれを指摘していたw
また、30年代初頭の急速な工業化の原資が農民からの収奪によるものであったが、しかし、急速な工業化は社会主義の前提であり、かつナチスドイツとの戦争を切迫したものと感じていた当時の彼らにとってみれば避けて通れないものであったことも、目新しい見解ではない。
というわけで、歴史のおさらいではあるものの、刺激を受けたとは言えない本書であった。
ただ、改めて感じるのは、独裁者と呼ばれる政治家の中で、例えば毛沢東は、様々な誤りや粗暴性が明らかになっているものの、その一方で魅力もあった人格であったことは疑いえない。
歴史上最悪の独裁者であったヒトラーにしても、当時のドイツ国民が熱狂し魅了されてしまうほどに、悪魔的な魅力があったこともしかりである。
対して、スターリンはある点では優秀な政治家ではあったが、本書によっても、もちろんアイザック・ドイッチャーの『スターリン』でも、何を読んでも、人格的魅力を感じることができない。
権力を確立した党の書記局を牛耳ることで独裁的権力を掌握したスターリンと、大衆に向かって直接演説することで権力を得た独裁者との違いのようなものを、改めて感じたのであった。
2017年7月7日に日本でレビュー済み
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若いころの話や母親や家族との関係、スターリンの性格とかは丁寧に書かれている。これまでの説を紹介し、新たな事実などから著者の考えを書くというスタイルだ。ところが、肝心の、スターリンの粛清が始まって全国的に悲惨な事態に至るあたり以降では、なにやら記述が、史実を通り一遍に説明することで終わっている印象。一番肝心なところで深い考察や新しい議論がない。この時期、妻の自殺、若いころから一緒の活動し、ともに幹部になった同志の自殺など、興味深いことが続くのだが。スターリンの心の中に入り込んだ考察がないのだ。嗚呼。なんだこれ。
どうも、山岳ガイド(著者)に案内されての登山で、入り口や一合目、二号目あたりはとても丁寧に説明してくれていたのに、頂上に近づくと、ガイドも息切れし、無口になり、登山者(読者)も同様に息切れし、ただ登ったな、という感想しか残らない登山みたいなイメージの本だな。
どうも、山岳ガイド(著者)に案内されての登山で、入り口や一合目、二号目あたりはとても丁寧に説明してくれていたのに、頂上に近づくと、ガイドも息切れし、無口になり、登山者(読者)も同様に息切れし、ただ登ったな、という感想しか残らない登山みたいなイメージの本だな。
ベスト500レビュアーVINEメンバー
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本書の内容に関しては他のレビューアーの方が詳しく書いているので、私は読後感を語らせていただきます。
私の少年時代にはテレビなんてものはありませんでしたので、スターリンの姿を見るのは映画館で見るニュース映画くらいしかありませんでした。
ニュース映画の映像に出てくるスターリンは鼻下に有名な「スターリンひげ」を蓄え、陸軍軍人の制帽と重々しい外套を着てクレムリン宮殿のバルコニーに立っていました。恐ろしかったのは、一緒にバルコニーに立っていた高官がしばらくすると姿を消して、次の高官が一緒に立っている、またしばらくすると同じようなことが起こっていました。新聞報道によれば、スターリンの側近が次々と粛清(死刑)されているとのことでした。
スターリンの死は新聞の一面トップにでかでかと報じられました。見出し後は「巨星墜つ」だったと思います。
そんなスターリンのベールに包まれた実像を本書は明らかにしてくれたと思います。
なんの変哲もない少年時代、長ずるにしたがって左翼思想に染まり学校がもてあますような問題児になったようです。
ソ連共産党時代も40歳代までは競争相手を蹴落とすのに熱心でしたが、まだまだ頭角を現すほどにはなっていませんでした。
たぶんスターリンがソ連という国の実権を握るのは50代以降のことなのでしょう。
マルクス・レーニン主義の思想に染まって、資本主義国は発展するにつれて革命や戦争を通じて自壊に陥ると考えていました。
第一次大戦で西側諸国が国力をすり減らしているのを見て、ソ連は西欧諸国の自壊に備えて工業力の伸長を国策にせねばならない。そのためには農民は犠牲になってもやむを得ないとの考え方で、五か年計画、集団農場などの政策を打ち出し、日本の戦国時代の悪徳代官のように農民を搾取し飢餓においやりました。その結果数百万単位の農民が餓死したというのですから、恐ろしい男です。
しかし、この工業化政策のおかげでソ連は第二次大戦の対独戦争に勝利することが出来ました。
当面の敵、ドイツに勝利したソ連の次なる敵は資本主義大国のアメリカでした。
このころになると、私もリアルタイムでニュース映画や新聞報道でスターリンの動静をしることができるようになりました。
スターリンは74~75歳で亡くなりましたが(実際の生年月日不明)、亡くなる直前は権力が脅かされるのではないかと考え、次から次へと側近の粛清にからります。
最後は耄碌の末、別荘で一人でなくなりました。
このスターリンの生涯を通じるキーワードは本書の副題にも」あるように「非情の独裁者」でした。
その大量殺戮の実態はヒトラーのユダヤ人虐殺にも匹敵するものと思います。
たちがわるいのは、その殺戮の相手が自国民だったということです。
本書は、そんなスターリンの一生を最新の資料に基づいて興味深く提供してくれます。
私の少年時代にはテレビなんてものはありませんでしたので、スターリンの姿を見るのは映画館で見るニュース映画くらいしかありませんでした。
ニュース映画の映像に出てくるスターリンは鼻下に有名な「スターリンひげ」を蓄え、陸軍軍人の制帽と重々しい外套を着てクレムリン宮殿のバルコニーに立っていました。恐ろしかったのは、一緒にバルコニーに立っていた高官がしばらくすると姿を消して、次の高官が一緒に立っている、またしばらくすると同じようなことが起こっていました。新聞報道によれば、スターリンの側近が次々と粛清(死刑)されているとのことでした。
スターリンの死は新聞の一面トップにでかでかと報じられました。見出し後は「巨星墜つ」だったと思います。
そんなスターリンのベールに包まれた実像を本書は明らかにしてくれたと思います。
なんの変哲もない少年時代、長ずるにしたがって左翼思想に染まり学校がもてあますような問題児になったようです。
ソ連共産党時代も40歳代までは競争相手を蹴落とすのに熱心でしたが、まだまだ頭角を現すほどにはなっていませんでした。
たぶんスターリンがソ連という国の実権を握るのは50代以降のことなのでしょう。
マルクス・レーニン主義の思想に染まって、資本主義国は発展するにつれて革命や戦争を通じて自壊に陥ると考えていました。
第一次大戦で西側諸国が国力をすり減らしているのを見て、ソ連は西欧諸国の自壊に備えて工業力の伸長を国策にせねばならない。そのためには農民は犠牲になってもやむを得ないとの考え方で、五か年計画、集団農場などの政策を打ち出し、日本の戦国時代の悪徳代官のように農民を搾取し飢餓においやりました。その結果数百万単位の農民が餓死したというのですから、恐ろしい男です。
しかし、この工業化政策のおかげでソ連は第二次大戦の対独戦争に勝利することが出来ました。
当面の敵、ドイツに勝利したソ連の次なる敵は資本主義大国のアメリカでした。
このころになると、私もリアルタイムでニュース映画や新聞報道でスターリンの動静をしることができるようになりました。
スターリンは74~75歳で亡くなりましたが(実際の生年月日不明)、亡くなる直前は権力が脅かされるのではないかと考え、次から次へと側近の粛清にからります。
最後は耄碌の末、別荘で一人でなくなりました。
このスターリンの生涯を通じるキーワードは本書の副題にも」あるように「非情の独裁者」でした。
その大量殺戮の実態はヒトラーのユダヤ人虐殺にも匹敵するものと思います。
たちがわるいのは、その殺戮の相手が自国民だったということです。
本書は、そんなスターリンの一生を最新の資料に基づいて興味深く提供してくれます。







