S.ゲッツは幅の広いミュージシャンだ。ボサ・ノヴァのフィールドで名盤を残した後、ストレート・ジャズ路線に戻ってからの60年代にはビル・エヴァンスと、70年代には女優のシビル・シェパード(タクシー・ドライバーやラスト・ショーが代表作)とまで共演する。しかし、彼のクールだがとがったところのないテナー・サックスのスタイルの芯に変わりはなかった。
そのことは67年録音の、新旧マイルス組のC.コリア、R.カーターを従えた本作についても当て嵌まる。本作はC.コリアが自己のトリオで”Now he sings, now he sobs”を録音する前年の作品ということで注目される。チックの自作曲が2曲取り上げられ(M1、5)、チックのピアノの音がキラキラ光を放つが、主役はS.ゲッツ。チックはホーンに伴奏をつけるのが巧みだということがわかる。
全体に音圧は低めだが、押し付けがましさがないのがかえって心地よく、まさにタイトルのスィート・レインにふさわしい作品に仕上がっている。