今の時代はシンデレラを白人が演じることができないんだなと感じた。
シンデレラは差別の象徴であるのでもし白人が演じると「白人なのに差別? 不幸ぶって!」と思われちゃう。かといって黒人にするとわざとらしすぎる。
キューバ出身のカミラ・カベロが演じるのはぴたりと本作のシンデレラ像としてはまってる。しかもとんでもなくキュートなので惚れちゃいます。
ただ場面の進行はすごく勢いがあって好きなんだけど全方位に配慮して無難に収めている。
これは『映画』というより『映画風なプロパガンダ作品』。
特に唐突に出てくる「女性は店を持てない」「ええ不公平だこと」「女性は家事も育児もこなしてる」という一連の流れのシーンは無理矢理女性差別への姿勢を見せるためだけにあるシーンで不自然。シンデレラが差別されているのではなく、女性差別をシンデレラに代弁させるためだけにあるシーン。
差別の壁にぶちあたっているのは女性という総称であってシンデレラ本人ではないので、シンデレラに対して感情移入が発生しない。
(シンデレラは日頃から紅茶の練習もしてないし洗濯もさぼっているので)
この映像作品が真に『物語』であるのなら(シンデレラが差別の象徴なのはいいが)シンデレラ自身が差別を代弁してはいけない。
この映像作品で表現されているのは「配慮」であり「シンデレラ」は一切表現されていない。
配慮によって望まされたものじゃなく、シンデレラ自身が本当の本当に心の底から望んだものはいったい何?
だから女優のカミラ・カベロには惚れちゃうけど「シンデレラ」には惚れない。
ミュージカル調なので社会風刺のギスギス感が薄まって重た苦しくなく観てもらえるし、アメリカにおける配慮や建前を学ぶことができる映像作品としては☆5であるが、私は2時間もある教養の授業を受けたいわけじゃあない。
ただ『映画』が見たいんだ。