シリア情勢――終わらない人道危機 (岩波新書) (日本語) 新書 – 2017/3/23
青山 弘之
(著)
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本の長さ224ページ
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言語日本語
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出版社岩波書店
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発売日2017/3/23
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ISBN-104004316510
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ISBN-13978-4004316510
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦。「独裁」政権、「反体制派」、イスラーム国、そして米国、ロシア…様々な思惑が入り乱れるなか、シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている。なぜ、かくも凄惨な事態が生じたのか。複雑な中東の地政学を読み解く。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
青山/弘之
1968年東京生まれ。東京外国語大学アラビア語学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員などを経て、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専攻は現代東アラブ政治、思想、歴史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1968年東京生まれ。東京外国語大学アラビア語学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員などを経て、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専攻は現代東アラブ政治、思想、歴史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2017/3/23)
- 発売日 : 2017/3/23
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4004316510
- ISBN-13 : 978-4004316510
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 118,317位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 19位中東のエリアスタディ
- - 653位岩波新書
- - 1,517位政治入門
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2020年7月20日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
シリア内戦の複雑な様相を、読みやすい文章でコンパクトにまとめている。アラブの春をきっかけに、反イスラエルを貫くアサド政権を倒そうと外国勢力が暗躍したが、結局受け皿となる統治能力のある政権が作れず、国際法を熟知した老練なロシアの活躍により、アサド政権維持の方向となりそうだ。それにしても反アサド政権の武装勢力諸派の複雑なこと。また、プロパガンダはうまいアメリカの戦略的判断の甘いこと。犠牲になったシリア国民は、いい迷惑。なお、直近の情勢までわかる著者が運営するウェブサイトの紹介もある。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2017年6月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
【全体的な流れ】
サブタイトルに「人道危機」とあり、また帯には犠牲者の数が書かれていますが、
全体的には被害状況などよりも、政治・地政学等マクロな問題を扱った本です。
街の被害や難民の状況などは、あまり解説されません。
しかし、複雑なシリア情勢を、段階別にわかりやすく解説した本かとは思いました。
応仁の乱の本を読み、また第一次世界大戦について勉強していると、
この本で扱われるシリア内戦との共通点も見えてきました。
【主体の不在】
アサド大統領も、マスコミや他の書籍のイメージ程は無能ではなく、
政権側としても一応の沈静化対策はしているように感じました。
ただし、日露戦争の伊藤博文や普墺・普仏戦争のビスマルクに比べると
やはり戦争の主体にはなれていないと思われます。
この辺が、足利義政に近いかと。
これは他の国や組織にも言え、「どうやって終わらせるか」を
きちんと考えて戦っている人がいないのではと、本書で改めて思いました。
応仁の乱も第一次世界大戦も、皆終戦のイメージを持たずに暴れ始めて、
収集がつかなくなった戦争ですし。
それと、国や政権など、マクロのしぶとさというのは、なかなか見極めが
難しいと言うことも改めて考えさせられました。
【ロシアの立ち回り】
帝国時代には日本に負け、第一次世界大戦でつぶれた国ですが、
そんな国を再び偉大な帝国にしようとするプーチン政権。
アサド政権の要請に応じての空爆や、国際会議での立ち回りなど、
外交面でも美味しい所をとっているように感じました。
【シリアのその後】
中東本をたくさん書いているイメージの内藤正典さんが方々でコメント
されていましたが、2017年4月にシリアで化学兵器が使用されました。
また、トランプ大統領も空爆に踏み切っています。
本書は3月発行の為、こちらは間に合わなかったようです。
これによってアサド政権の中東内でのメンツも変わってくると思いますが、
これは著者の青山さんや、他では内藤さんの本を待たなければいけなそうです。
化学兵器の使用が本当にアサド政権側ならば、プーチン大統領のメンツも
潰したことになりますし、油断が出来ません。
一方、トランプ大統領が、またアメリカ合衆国の株を下げなければ良いが
とも思えますね。
サブタイトルに「人道危機」とあり、また帯には犠牲者の数が書かれていますが、
全体的には被害状況などよりも、政治・地政学等マクロな問題を扱った本です。
街の被害や難民の状況などは、あまり解説されません。
しかし、複雑なシリア情勢を、段階別にわかりやすく解説した本かとは思いました。
応仁の乱の本を読み、また第一次世界大戦について勉強していると、
この本で扱われるシリア内戦との共通点も見えてきました。
【主体の不在】
アサド大統領も、マスコミや他の書籍のイメージ程は無能ではなく、
政権側としても一応の沈静化対策はしているように感じました。
ただし、日露戦争の伊藤博文や普墺・普仏戦争のビスマルクに比べると
やはり戦争の主体にはなれていないと思われます。
この辺が、足利義政に近いかと。
これは他の国や組織にも言え、「どうやって終わらせるか」を
きちんと考えて戦っている人がいないのではと、本書で改めて思いました。
応仁の乱も第一次世界大戦も、皆終戦のイメージを持たずに暴れ始めて、
収集がつかなくなった戦争ですし。
それと、国や政権など、マクロのしぶとさというのは、なかなか見極めが
難しいと言うことも改めて考えさせられました。
【ロシアの立ち回り】
帝国時代には日本に負け、第一次世界大戦でつぶれた国ですが、
そんな国を再び偉大な帝国にしようとするプーチン政権。
アサド政権の要請に応じての空爆や、国際会議での立ち回りなど、
外交面でも美味しい所をとっているように感じました。
【シリアのその後】
中東本をたくさん書いているイメージの内藤正典さんが方々でコメント
されていましたが、2017年4月にシリアで化学兵器が使用されました。
また、トランプ大統領も空爆に踏み切っています。
本書は3月発行の為、こちらは間に合わなかったようです。
これによってアサド政権の中東内でのメンツも変わってくると思いますが、
これは著者の青山さんや、他では内藤さんの本を待たなければいけなそうです。
化学兵器の使用が本当にアサド政権側ならば、プーチン大統領のメンツも
潰したことになりますし、油断が出来ません。
一方、トランプ大統領が、またアメリカ合衆国の株を下げなければ良いが
とも思えますね。
2017年4月25日に日本でレビュー済み
もう5年以上も戦争が続くシリアですが、本書でなぜいつまでたっても戦争が終わらないかが分かります
アラブの春に触発された、アサドへの抗議デモから始まったシリア内戦ですが、アサド側が暴力的に抑えようとしたことで、抵抗運動が過激化
それに伴いアサド側もテロとの戦いを名目として軍事力による弾圧をはじめるが、湾岸諸国やトルコなどが反政府側を支援することによって反政府側も本格的な武力抵抗運動を開始
また、シリア周辺国からイスラム過激派が流入することによって、見境の無いテロが継発し、それに伴い反政府側同士での争いも勃発
反政府側はクルド人独立派からISISに至るまでまったく統率がとれておらず、それぞれの思惑に違いがありすぎます
シリア内戦の悲劇はアサド側が勝つことはもちろんのこと、反政府側が勝ってもろくなことになりそうもないことだというところです
なによりの悲劇はアサドを支援してるイランやロシアも反政府側を支援してるトルコや湾岸諸国も自分たちの思惑で動いているにすぎず、真にシリア国民のことを考えているようには見えないところだと思います
この本を読んでシリア情勢を分かればと思いましたが、思った以上に複雑な要因が絡み合っており、この戦争に終わりはありえるのだろうか?という暗い気分になるばかりでした
アラブの春に触発された、アサドへの抗議デモから始まったシリア内戦ですが、アサド側が暴力的に抑えようとしたことで、抵抗運動が過激化
それに伴いアサド側もテロとの戦いを名目として軍事力による弾圧をはじめるが、湾岸諸国やトルコなどが反政府側を支援することによって反政府側も本格的な武力抵抗運動を開始
また、シリア周辺国からイスラム過激派が流入することによって、見境の無いテロが継発し、それに伴い反政府側同士での争いも勃発
反政府側はクルド人独立派からISISに至るまでまったく統率がとれておらず、それぞれの思惑に違いがありすぎます
シリア内戦の悲劇はアサド側が勝つことはもちろんのこと、反政府側が勝ってもろくなことになりそうもないことだというところです
なによりの悲劇はアサドを支援してるイランやロシアも反政府側を支援してるトルコや湾岸諸国も自分たちの思惑で動いているにすぎず、真にシリア国民のことを考えているようには見えないところだと思います
この本を読んでシリア情勢を分かればと思いましたが、思った以上に複雑な要因が絡み合っており、この戦争に終わりはありえるのだろうか?という暗い気分になるばかりでした
2018年8月20日に日本でレビュー済み
2011年に始まり、今なお続く「シリア内戦」。その過程を、「(2017年3月までの)国内外の動きを可能な限り、具体的、網羅的に記述した」本。「シリア内戦」がどのようなものであるのか、を理解するためだけではなく、“中東情勢”や“国際紛争の解決は、各国のあいだに避けることができない結びつきと相互依存関係があるために、困難なものになりがちであること”を考えさせる良書。
2010年の「アラブの春(チェニジアで始まった抗議デモは、他のアラブ諸国にも飛び火し、チェニジア・エジプト・リビア・イエメンでは政権退陣や体制崩壊が起こった)」の波及を警戒したシリアの「アサド政権」が、民主化要求デモに「過剰に弾圧」を加えたために、「反体制派」が「武器を手に反抗」したことが、「シリア内戦」の発端といわれる。「反体制派」は、アメリカ・サウジアラビア・トルコ・カタールなどの援助を頼り、対する「アサド政権」は、ロシア・イランなどに支援を要請した。著者は、「シリア内戦」の解決が遅れている理由として、“諸外国の介入を受けたために、「内戦」がシリアの自力で解決できる規模を超えて、拡大した”ことを指摘している。
中東情勢は、①アメリカとロシアのどちらを同盟国としているか(=東西冷戦以来の図式)、という初期条件がある。それに加えて、②周辺諸国のバランス・オブ・パワー(=中東諸国は微妙な“力の均衡”で成り立っているので、どこかの国に大きな変動が起こると、周囲の国々にも必ず動揺が及ぶ)、③「武装集団」の参加(=中東の紛争には、“国家による正規軍”以外の戦闘部隊が、よく現れる)、という二つの要素によって、時々刻々と変化していくのが特徴だ。
①アメリカとロシアのどちらを同盟国としているのか、でいえば、シリアはロシアと同盟関係(もとはフランスの委任統治領だったのが、1946年にソ連の軍事支援を受けて独立した)にある。ロシアにとっても、シリアのタルトゥース市にある地中海岸のロシア海軍の補給基地は、「対NATO軍事戦略において欠くことのできない前哨地」であるため、シリアは「失いたくない同盟者」なのである。
②周辺諸国のバランス・オブ・パワー、では、シリアの対外方針は「反米」と「反イスラエル」であるため、「イスラエルとの軍事的均衡を維持」しようとして、「ロシアやイランの後ろ盾」を得ていた。もう一方で、ロシアやイランと敵対しているトルコやサウジアラビアなどとは友好的な関係ではない。
③「武装集団」の参加、でいえば、アサド大統領やその親族はアラウィー派(シーア派の分派。シリアでの信者数は12%ほど)であるが、シリア国民の大多数(70%ほど)はスンナ派であるため、“スンナ派信者の保護”を訴える「武装集団」が、「反体制派」に加勢する動き(とはいえ、本来のシリア国民は、宗教や宗派の違いには寛容)が目立った。そして、「(反体制派を支援するために)外国人戦闘員を含むイスラーム過激派のシリア潜入を後援したのが、アサド政権の打倒に強く固執するサウジアラビア、カタール、そしてトルコだった」。対してイランやレバノンは、「ヒズブッラー」や「パレスチナ諸派」などの「武装集団」を、アサド政権支援のために派遣した。
これらの「武装集団」は、中東の人々にとっては、思いのほかに身近なものである。本書によると、一般に「アラブ諸国において広く見られる」団体に、「人民諸委員会」と呼ばれる「若者など住民が各街区、学校、職場などで自発的に組織・運営する互助団体」があるのだが、これらの団体が“民兵や自警団などの母体”になるなど、「武装集団」が結成されやすい土壌が中東にはある。それに、宗派を訴えるのも“信仰心”というだけでなく、「イスラーム教を唱道する方が、資金(宗派を同じくする信者たちからの「義援金」など)や武器を得られやすいという実利的な判断」によるものであったり、戦況によって「離合集散」をするなど、それぞれの「武装集団」の動きを捉えるのは、(本書ではよく調べてあるが)困難なところがある。
この「シリア内戦」に対して、オバマ大統領はアメリカのプレゼンス(国外で示される、軍事・経済の影響力)を要所ごとに示そうとしたが、そのたびに「直接の軍事介入」を行なわなかったために失敗した。「反体制派」の主要な武力は、アメリカからの「直接の軍事介入」という支援が無かったので、外国人による「武装集団」と、その中に混入していた「イスラーム過激派」に頼っていた。このことは、①「イスラーム国」の出現(反体制派側についていた「武装集団」の一派である「ヌスラ戦線」から分離して生まれた)、②「テロとの戦い」の自己矛盾(反体制派側にとっては、「アル=カーイダ」系などの「イスラーム過激派」も主力戦力の一部になっている)、③「停戦合意」の無効化(アサド政権は「テロとの戦い(=イスラーム過激派に対する戦い)」を口実に、「反体制派」を攻撃し、「内戦」が終わらない)、という事態をもたらした。
そして、オバマ大統領のもう一つの失敗は、同盟国であるトルコが離脱したことだ。2016年12月に、トルコは(アメリカ抜きで)ロシアと一緒になって、「反体制派」と「アサド政権」との間に「停戦合意(アサド大統領によって、後に破棄された)」を締結させてしまった。トルコとしては、“ロシアと対峙するプレッシャー”に立ち向かっていたつもりであったのに、オバマ大統領が冷淡だった(2016年7月のトルコの「軍事クーデター未遂」事件に対する、エルドアン大統領の処置を批判)ように思えたことと、アメリカが「イスラーム国」に対する実戦部隊として「クルド人武装勢力」に頼ったことが、トルコの「安全保障」に抵触した、と感じたためだ。トルコには、「武装闘争を通じて(トルコから)分離独立を目指していたクルディスタン労働党(PKK)をテロ組織と位置付け、その存在を国家安全保障上最大の脅威」と見なしている、という事情があった。
今後アメリカが、シリアに対してどのように距離をとっていくのかは分からない。しかし、中東に対するアメリカのプレゼンスを維持していくためには、“アメリカのための重要な同盟国をよく選び、その国と協力していくこと”以外の方法はないだろう。これからの“中東情勢”を考えるときの、参考になる本だった。
2010年の「アラブの春(チェニジアで始まった抗議デモは、他のアラブ諸国にも飛び火し、チェニジア・エジプト・リビア・イエメンでは政権退陣や体制崩壊が起こった)」の波及を警戒したシリアの「アサド政権」が、民主化要求デモに「過剰に弾圧」を加えたために、「反体制派」が「武器を手に反抗」したことが、「シリア内戦」の発端といわれる。「反体制派」は、アメリカ・サウジアラビア・トルコ・カタールなどの援助を頼り、対する「アサド政権」は、ロシア・イランなどに支援を要請した。著者は、「シリア内戦」の解決が遅れている理由として、“諸外国の介入を受けたために、「内戦」がシリアの自力で解決できる規模を超えて、拡大した”ことを指摘している。
中東情勢は、①アメリカとロシアのどちらを同盟国としているか(=東西冷戦以来の図式)、という初期条件がある。それに加えて、②周辺諸国のバランス・オブ・パワー(=中東諸国は微妙な“力の均衡”で成り立っているので、どこかの国に大きな変動が起こると、周囲の国々にも必ず動揺が及ぶ)、③「武装集団」の参加(=中東の紛争には、“国家による正規軍”以外の戦闘部隊が、よく現れる)、という二つの要素によって、時々刻々と変化していくのが特徴だ。
①アメリカとロシアのどちらを同盟国としているのか、でいえば、シリアはロシアと同盟関係(もとはフランスの委任統治領だったのが、1946年にソ連の軍事支援を受けて独立した)にある。ロシアにとっても、シリアのタルトゥース市にある地中海岸のロシア海軍の補給基地は、「対NATO軍事戦略において欠くことのできない前哨地」であるため、シリアは「失いたくない同盟者」なのである。
②周辺諸国のバランス・オブ・パワー、では、シリアの対外方針は「反米」と「反イスラエル」であるため、「イスラエルとの軍事的均衡を維持」しようとして、「ロシアやイランの後ろ盾」を得ていた。もう一方で、ロシアやイランと敵対しているトルコやサウジアラビアなどとは友好的な関係ではない。
③「武装集団」の参加、でいえば、アサド大統領やその親族はアラウィー派(シーア派の分派。シリアでの信者数は12%ほど)であるが、シリア国民の大多数(70%ほど)はスンナ派であるため、“スンナ派信者の保護”を訴える「武装集団」が、「反体制派」に加勢する動き(とはいえ、本来のシリア国民は、宗教や宗派の違いには寛容)が目立った。そして、「(反体制派を支援するために)外国人戦闘員を含むイスラーム過激派のシリア潜入を後援したのが、アサド政権の打倒に強く固執するサウジアラビア、カタール、そしてトルコだった」。対してイランやレバノンは、「ヒズブッラー」や「パレスチナ諸派」などの「武装集団」を、アサド政権支援のために派遣した。
これらの「武装集団」は、中東の人々にとっては、思いのほかに身近なものである。本書によると、一般に「アラブ諸国において広く見られる」団体に、「人民諸委員会」と呼ばれる「若者など住民が各街区、学校、職場などで自発的に組織・運営する互助団体」があるのだが、これらの団体が“民兵や自警団などの母体”になるなど、「武装集団」が結成されやすい土壌が中東にはある。それに、宗派を訴えるのも“信仰心”というだけでなく、「イスラーム教を唱道する方が、資金(宗派を同じくする信者たちからの「義援金」など)や武器を得られやすいという実利的な判断」によるものであったり、戦況によって「離合集散」をするなど、それぞれの「武装集団」の動きを捉えるのは、(本書ではよく調べてあるが)困難なところがある。
この「シリア内戦」に対して、オバマ大統領はアメリカのプレゼンス(国外で示される、軍事・経済の影響力)を要所ごとに示そうとしたが、そのたびに「直接の軍事介入」を行なわなかったために失敗した。「反体制派」の主要な武力は、アメリカからの「直接の軍事介入」という支援が無かったので、外国人による「武装集団」と、その中に混入していた「イスラーム過激派」に頼っていた。このことは、①「イスラーム国」の出現(反体制派側についていた「武装集団」の一派である「ヌスラ戦線」から分離して生まれた)、②「テロとの戦い」の自己矛盾(反体制派側にとっては、「アル=カーイダ」系などの「イスラーム過激派」も主力戦力の一部になっている)、③「停戦合意」の無効化(アサド政権は「テロとの戦い(=イスラーム過激派に対する戦い)」を口実に、「反体制派」を攻撃し、「内戦」が終わらない)、という事態をもたらした。
そして、オバマ大統領のもう一つの失敗は、同盟国であるトルコが離脱したことだ。2016年12月に、トルコは(アメリカ抜きで)ロシアと一緒になって、「反体制派」と「アサド政権」との間に「停戦合意(アサド大統領によって、後に破棄された)」を締結させてしまった。トルコとしては、“ロシアと対峙するプレッシャー”に立ち向かっていたつもりであったのに、オバマ大統領が冷淡だった(2016年7月のトルコの「軍事クーデター未遂」事件に対する、エルドアン大統領の処置を批判)ように思えたことと、アメリカが「イスラーム国」に対する実戦部隊として「クルド人武装勢力」に頼ったことが、トルコの「安全保障」に抵触した、と感じたためだ。トルコには、「武装闘争を通じて(トルコから)分離独立を目指していたクルディスタン労働党(PKK)をテロ組織と位置付け、その存在を国家安全保障上最大の脅威」と見なしている、という事情があった。
今後アメリカが、シリアに対してどのように距離をとっていくのかは分からない。しかし、中東に対するアメリカのプレゼンスを維持していくためには、“アメリカのための重要な同盟国をよく選び、その国と協力していくこと”以外の方法はないだろう。これからの“中東情勢”を考えるときの、参考になる本だった。
2019年2月4日に日本でレビュー済み
著者は一体、読者になにを伝えたいのだろうか。
悪い意味で教科書的で、砂を噛むような無味乾燥な記述が続く。著者の実体験に基づいた、活き活きとした記述は一つもない。
文章もすこぶる読みにくく、一つも頭に入ってこない。もってまわったような表現が多く、無駄な括弧が多用され、読みにくいことこの上ない。
「まえがき」で著者はいう:
<本書では、感情の赴くままに、読者の憂いや憤りに訴えかけるような記述は行わない。政治的、人道的なメッセージを発信したり、実現性を欠く理想論を掲げたりもしない。本書では、こうした無責任なアプローチを避け、シリア内戦を可能な限り、冷静、ないしは冷淡に記述することを心がける。>
たしかに、本書には何のメッセージもなく、ではどうすれば良いかという提言もない。
国際情勢について語っていながら、政治的なメッセージを発するのがなぜ「無責任」なのか、理解に苦しむ。
ただ統計的なデータをつらつらと書き並べただけで、なんの提言も行わない方がよっぽど無責任ではないのか?
悪い意味で教科書的で、砂を噛むような無味乾燥な記述が続く。著者の実体験に基づいた、活き活きとした記述は一つもない。
文章もすこぶる読みにくく、一つも頭に入ってこない。もってまわったような表現が多く、無駄な括弧が多用され、読みにくいことこの上ない。
「まえがき」で著者はいう:
<本書では、感情の赴くままに、読者の憂いや憤りに訴えかけるような記述は行わない。政治的、人道的なメッセージを発信したり、実現性を欠く理想論を掲げたりもしない。本書では、こうした無責任なアプローチを避け、シリア内戦を可能な限り、冷静、ないしは冷淡に記述することを心がける。>
たしかに、本書には何のメッセージもなく、ではどうすれば良いかという提言もない。
国際情勢について語っていながら、政治的なメッセージを発するのがなぜ「無責任」なのか、理解に苦しむ。
ただ統計的なデータをつらつらと書き並べただけで、なんの提言も行わない方がよっぽど無責任ではないのか?