まったく突然の訃報だった。
10年程前フジテレビのドキュメンタリー「ショーケンという名の孤独」で見かけたときは情け無さだけが目立つ、侘しさが漂い、悲壮感を禁じ得なかった。
その後、ここ最近、音楽、芝居両方で精力的に活動しつつ、
TVのバラエティなどで見かける面影は、良縁に恵まれたせいか、若々しく溌剌としており、私生活が充実している賜物とばかり思っていたが、まさか自分の死期を意識した闘病中の活動とは夢にも思わなかった。
亡くなって発刊されるタイミングからすると、商売っ気たっぷりの便乗商法と下衆な勘繰りをしてしまいがちだが、ずっと闘病しつつ、もはや抗ガン剤も効かなくなった昨年10月に"真実"を残しておきたいというショーケン自身の強い希望からスタートした9回のインタビューからの文字起こしされた貴重な遺言である。
だからこそ、ショーケンが安らかな眠りについた今、出版されなければならなかった。
文中にもあるが、けっして安直な"暴露本"でも、感動を押し売りする"闘病記"でも無い。
年齢、世代に関わらず、ショーケンの革命的なまでに時代の流れを取り入れた演技か、ロックシンガーとしてのキレッキレのパフォーマンスに心揺さぶられたことのない方達にとっては、どうしても彼の薬物使用や恐喝未遂事件での逮捕歴や女性遍歴といったスキャンダラスな側面ばかりに目がいき、"また破天荒な昭和のスターが一人、新しい元号を待たずして、この世を去った"といった、ありきたりな紋切り型の言い回しで片付けてしまうかも知れない。
但し、断言できるのは、こんな唯一無二の才能溢れる役者兼ロックシンガーが日本映画界、日本のロック史に残した功績は計り知れない。
またコンプライアンスという言葉が独り歩きして、やたら自主規制が高まったり、ネットやSNSで"匿名"という無責任さを強みに、一コメンテイター気取りの数千万人の自称モラリスト一般素人がウヨウヨしている今、現代。
ショーケンという漢は、昭和と平成という時代を自由奔放に振る舞いながらも、ちゃんと帳尻合わせのように筋を通し切った人生を見せてこの世を去っていった。
彼の芝居、歌唱ともエキセントリックな面ばかりがクローズアップされがちだが、元々テンプターズ解散後は映画の裏方を目指していただけあり、緻密な計算、生まれ持った感性が相まって独特な世界観を表現していた。
(前作「ショーケン」でかの蜷川幸雄氏が評していたとおり、面と向かって"貴女を愛してます"と言わない"照れ""間合い"の演技が出来るヌーヴェルバーグであったと思う)
また映画に対する愛情、プロフェッショナルな意識は、誰も他の役者が叶わない一途さに溢れ、本書内でも、多くページを割き、熱く語られている。
本人も文中に記しているが、自身の出自、環境から常に醒めながら、孤独な魂を抱え続け、自分の居場所を探し続けた50年以上に渡る芸能生活だったのではないか。
また逮捕されるような事件を犯したのだから致し方ないが、どんなにメディアに叩かれても、徒党を組んだり、周囲に迎合することなく、自分がオカシイと思うことは言わなければ気がすまない損な性格、生まれつきのアウトローであった。
けっして事件ばかりを起こす不良だからカッコよかったのではない。
"傷だらけの天使"の修もすべて彼と、周囲の名スタッフがジャズのセッション風インプロビゼーション的に創り上げた"イカれたワル"像は
オリジナルだから、今観直しても、風化せずに躍動感に溢れている。あの超有名なオープニングもショーケンのアイデアだが、何の予備知識なく感性を持ち得た現代の10代が観ても、痺れること受け合いである。
自分に正直過ぎるがゆえ、仕事以外ではかなり破天荒かつ破茶滅茶な部分があり、失礼ながら、初老を迎え、行く先は愚痴っぽいジジィになり、いずれ最期は、若き日に演じたマカロニのように、誰にも知られず、"野垂死に"してしまうと思いきや、安らかに息を引き取ったと夫人の話を耳にして安心した。
私生活において、最期にリカさんという良き伴侶に巡り会うことにより、彼は"萩原健一"から肩肘張らない本名である"萩原敬三"として、過ごす時間を持ち得た。本当に良かったと思う。
その直後に降りかかった希少ガンも、以前のショーケンであれば自暴自棄になっていただろうが、それも宿命として、自身で受け止めて、敢えて公表せずに、淡々と仕事をこなしていった。
途中、(自己弁明しているが)下世話な恐喝未遂事件などもありながらも、最期の最後まで、
ショーケンはショーケンであり続けた。
当方も、いろいろ影響受けたアーティストの訃報を聞く齢になったが、何故か、ショーケンの訃報は聞いた直後もショックだったが、数日経ったあと、じわじわボディーブローのようにきた。
ある深夜、ふとショーケンのことを思い出し、もうこの世にいないということを考えただけで、何故か、嗚咽が止まらなかった。
カッコ良すぎて困るぐらいだよ、ホントに。。
転がり続けた孤独の魂、ショーケン
沢山の感動を本当にありがとう! R.I.P
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