2004年イラクのフセイン政権が大量破壊兵器を隠匿しているという理由で、アメリカにブッシュ(子)政権が「有志連合」を率いてイラクを完全に破壊し、フセイン大統領を捕らえて辱めを加え、処刑した。その時、私はなぜアメリカ政府やイギリスのブレア首相がこのような乱暴をするのか理解できなかった。
理解できないという理由の第1は、1981年から84年までの2年半イラクの製油所建設現場で働いたわたしにとって、イラクはもっとも世俗的な社会主義国として、男女平等の教育熱心な国で、高度経済成長下の中産階級が形成されつつある活気ある国で、外からいわれるような独裁政権が人民をひどく抑圧しているという状態ではなかったと観察していたからである。支配政党のバース党は民族社会主義を標榜しており、石油資源はもちろん国営石油会社がその富を国家財源にしており、水道や電力や鉄道などのインフラや基幹産業は国営企業が所有していた。
そのイラクを、米英を中心とする有志連合が集中的な爆撃を行った。
1991年の湾岸戦争の際には、およそ300発のトマホーク・ミサイルが5週間にわたってイラクに打ち込まれたが、2003年にはたった1日で380発以上が発射された。「大規模戦闘」が行われた3月20日から5月2日までの間に、米軍はイラクに3万発以上の爆弾を投下し、2万発の精密誘導巡航ミサイルを発射したが、これは過去に発射されたミサイル総数のじつに67%に相当する 。
いち早く旧フセイン大統領宮殿を占拠して事務所を開いたブッシュ大統領の特使ポール・ブレマーは、次から次と政令を発し、イラクの石油会社をはじめとする数々の国営会社をアメリカ資本の大企業に次から次と安値で売り飛ばした。爆撃に身をすくめていたイラク人が気が付いた時には、イラク国民の財産は、ほとんどアメリカの大資本に奪われてしまった後だった。
後日、イラクに大量破壊兵器がなかったことを、アメリカとイギリスの政府機関が正式に認めたが、ブッシュ大統領もブレア首相も、正式に陳謝したという話は聞いたことがない。イラク人の富はこうして奪われ、その後遺症は今も深刻な影響を及ぼしている。
この本は、世界最強の軍事組織を総動員して一国の富を奪う強欲資本主義の実態を詳らかに示してくれた。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。