和菓子屋の娘のあかりが、畑違いの洋菓子のショコラティエ、長峰シェフとのかかわりのなかで、お菓子について、職人の仕事について、またお菓子とかかわる人の心について、いろいろな経験をしてゆく物語(かたちはミステリ)です。
ふたりの恋愛よりも、お菓子の世界の光と影がメインテーマ。
お菓子の描写が華やかにちりばめられ、洋菓子好きなら文字通り垂涎ものの連作ですが、モチーフはそれとバランスを取るかのように、かなり苦めです。冒頭の万引き事件や、ケーキにいれる陶器のフェーヴの数の謎や、新作菓子のコンペティションでの少しハードな結末や、病気でお菓子を食べられないのに洋菓子の大好きな紳士の生活・・・甘い世界とビターなテーマが微妙な合わせぐあいをなしていて、「膨大な数の素材が奇跡のように丁寧に組みあげられ、ひとくちでは語り尽くせないような味覚のハーモニーを作り出す・・」というショコラティエの世界そのもののようにも思われます。
全体を通して幸福感あふれるというよりは、まつわる人々の生き方がすこし痛いです。
この痛さは、ほんのりというよりも、かなり切りつけるように鋭い箇所もあります。
しかしそれゆえに夢のお菓子の世界も絵空事ではない実体感を帯び、第三話の菓子コンテストで幻になってしまう「月人壮士」がわたしは一番気に入りました。
ひとびとの人生をかかえこんでこそ、お菓子は甘いのかもしれません。
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