SMAPの香取の宣伝で最高の液晶テレビと言えば「AQUOS」と言われたシャープが2012年に奈落の底に落ち、連結最終赤字が3760億円となり、創業以来の最大の赤字を記録した。
4代目社長の町田は、一流メーカーへの仲間入りをしたい、そのためには液晶テレビでリーダーとしての地位をとろうと執念を燃やしていた。
5代目社長の片山と町田の対立があったようだ。
液晶パネルで次々と成果を上げてきた片山を社長に任命したときの町田の発言が、「社長と会長の境目は明確にせず、二人体制でやる」というものだったらしいが、どんな組織でもリーダーが二人いる場合で成功した事例を自分は知らない。この院政だけは絶対に日本の企業文化からは根絶させないと同じ問題が今後も発生するだろう。パナソニックでも幸之助が辞めさせようとして失敗した松下正治が99歳まで院政に居座って社長の裏で経営と人事を操ったというが、引退しても潔く身を引けないでいつまでも権力欲に取りつかれた老害が日本経済を蝕んでいる構図が、規模こそ違えどシャープにもあった。
反対意見を押し切って作り上げた亀山工場の大成功で勢いづいた町田は、トヨタのように装置会社などを周辺に配置した「21世紀のコンビナート」にするという気運で2007年、堺工場建設の発表を行ったが、この強気の目論見の失敗が会社を傾かせる決定打となってしまった。
液晶テレビの価格下落については我々一般人にも奇異に感じるほどだった。「安くなってうれしい」というよりも「なんでこんなに安いの?」と思った。まさかここまで下落が進むとはどの会社も予想できなかっただろうし、日本メーカーがこだわる画質の差は一般人の目には違いがわからなかった。そもそも毎日のテレビ番組にそこまでの画質にこだわる必要などまったくない。堺工場の稼働率は悪化し、円高を受けてソニーなど他の日本メーカーは海外からパネルを買い付ける。「オンリーワンになるはずがロンリーワンになった」。
2011年から液晶ビジネスの斜陽が明らかになると会長の片山が町田の経営手腕に疑いを持ち始め、社長会長の間に亀裂が生じる。片山は腹心である副社長の浜野を対町田として使い、この、片山、町田、浜野がそれぞれ好きなことを言うものだから「キングギドラ経営」と言われた。三本の首から重力破壊光線をそれぞれ吐き出しながら日本の空を飛びまわり地上を破壊しつくす。実にうまいこと言ったものだ。
片山退任後は、浜野は子飼いの奥田を次期社長に町田に勧めた。町田、浜野が院政を存続できるようにという構図がここにもある。さらに事態を悪化させたのは取り引き銀行が介入してきたこと。これは三洋の例も同じでますます社長の判断権限をブレさせる大きな要因。
結果的にシャープを買い取ったホンハイ(鴻海)の社長、郭はシャープの経営難を知ってシャープのブランド力を取り込むことに興味を示すが、院政のおかげで奥田は社長でありながら意思決定ができない。一代で大帝国を築き上げた郭のバイタリティ、決断力、リーダーシップとは極めて対照的だ。ややこしいのは経営提携のためにサムソンにも接近したことで、サムソンは当然宿敵アップルの最大供給会社のホンハイを敵視しているため、シャープの救済戦略は極めて政治的なかけひきとなり、何が何だかわからなくなってしまった。
ニュースで話題になったが、液晶テレビなどという日本の技術的根幹を資金だけの理由でホンハイに売ってしまうのは人財の流出も含めて日本の産業自体の大きなリスクであると感じた。しかしながらJDIの力ではシャープを救うことはできなかった。皮肉なことに、従業員の雇用を救ったのはホンハイで、JDIになっていたら大量のリストラが発生していたと思われる。三洋の白物がハイアールに変われたシナリオとよく似ている。
落ちぶれたシャープはジャンクと呼ばれる投資不適格企業と同列の評価となりハゲタカファンドすら相手にしなくなり、銀行はトップの人事にも口をだし、ついに本社ビルもニトリに売却させられることとなった。社員にとって本社ビルの売却の心理的インパクトははてしなく大きかっただろうと思う。東京大空襲みたいなもの。
また自分もニュースでみて驚いたのが、大減資を行い資本金を一億円まで減らし、シャープを中小企業化させて税金を減らそうという計画だ。「こんなことが可能なのか?」とも思ったし、「こんなことになっていてもはや会社としての体をなしていないのでは?」とも感じた。「あまりにも下品」という表現はズバリだと思う。
社員にシャープ商品を買ってくださいというお願いのメールもなんだか情けない。一般職5万円、部長10万円って強制でもないのに値段を言って何か意味があるのか?もうこうなったら末期症状だ。
三洋のケースと非常によく似ていると思ったが、シャープの場合は内部に対しても外部に対しても極めてみっともない形で終焉をむかえたと言えるだろう。三洋と違ってホンハイの元々の思いもあってブランドは残っているが、果たしてお店でシャープの製品をみた消費者はどう感じるのだろう。
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シャープ崩壊--名門企業を壊したのは誰か (日本経済新聞出版) Kindle版
絶頂から鴻海買収交渉まで転落劇のすべてを活写! 「キングギドラ経営」「会長主導のクーデター」「1社長1工場」――。シャープは権力者の人事抗争の末に悲劇が起きた。堺工場に代表される液晶事業への身の丈にあわない巨額投資の失敗はもちろんだが、経営危機に陥った後に内紛が激化し、効果的な打開策を打ち出せず、傷口が広がった。液晶主導の成功から赤字転落、鴻海精密工業による買収提案まで、日本経済新聞大阪本社・経済部が総力を挙げて名門企業が瞬く間に転落する姿を描く緊急出版!
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2016/2/17
- ファイルサイズ14190 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
シャープは権力者の人事抗争の末に悲劇が起きた。堺工場に代表される液晶事業への身の丈にあわない巨額投資の失敗はもちろんだが、経営危機に陥った後に内紛が激化し、効果的な打開策を打ち出せず、傷口が広がったのだ。名門企業が権力抗争によって瞬く間に転落する姿を描く。 --このテキストは、tankobon_softcover版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B01CEA631S
- 出版社 : 日経BP (2016/2/17)
- 発売日 : 2016/2/17
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 14190 KB
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- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 211ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 193,349位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
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2016年7月15日に日本でレビュー済み
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ベスト1000レビュアー
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本書の内容自体に大きな誤りはないとしても、同じような経営者や体質の企業も多く見てきましたが、潰れるとは限りません。
シャープの崩壊を論じる前提として、韓国(LG・三星)や台湾(AUO・CMO)の巨大液晶工場群と経営、これらへの韓国・台湾の政府支援をどう見るべきか、シャープは亀山工場建設時点(2000年代初頭)で規模的に負けかけているのです。日本の液晶パネル製造設備メーカーや材料・部品メーカーの関心も韓国や台湾に向きがちになります。
液晶パネルと言う戦場を選らんだこと自体が、シャープ最大の敗因と見るべきです。日立やPanasonicもTV用液晶パネルから最終的に撤退しています。
ブラウン管からTV受像機まで一貫生産していたSONY、Panasonic、日立、東芝に対し、ブラウン管製造設備を持たないシャープが液晶に賭けることは必然と言うより「運命」であったと思っています。名人芸が必要なブラウン管(SONYのトリニトロンなどは、何十年も誰も真似できなかった)から⇒差別化が持続しない液晶パネルへの移行という落とし穴に自ら飛び込んで行き、運命に従い破綻したと言う物語でしょうか。
小生の知る限りでは、シャープの液晶部門・TV部門の仕事の速さは、素晴らしいものでした。自分の時間軸ではなく業界最速の時間軸で動こうとする点では日本では珍しい企業だったと思います。
数十年の苦節を経て、ブラウン管から平面ディスプレイへのパラダイムシフトを成し遂げたシャープの軌跡を考えれば、人事抗争など枝葉のことです。
なお、液晶パネルの需給逼迫時に社内向けを優先し、東芝やSONYへの供給を絞った結果、その後の助力を得られなくなったと言う本書の記述が事実とすれば残念ですね。業種は違いますが、営業は売る時よりも断る時の方が難しいと言うのが小生の実感で、この点だけは気になっています。
シャープの崩壊を論じる前提として、韓国(LG・三星)や台湾(AUO・CMO)の巨大液晶工場群と経営、これらへの韓国・台湾の政府支援をどう見るべきか、シャープは亀山工場建設時点(2000年代初頭)で規模的に負けかけているのです。日本の液晶パネル製造設備メーカーや材料・部品メーカーの関心も韓国や台湾に向きがちになります。
液晶パネルと言う戦場を選らんだこと自体が、シャープ最大の敗因と見るべきです。日立やPanasonicもTV用液晶パネルから最終的に撤退しています。
ブラウン管からTV受像機まで一貫生産していたSONY、Panasonic、日立、東芝に対し、ブラウン管製造設備を持たないシャープが液晶に賭けることは必然と言うより「運命」であったと思っています。名人芸が必要なブラウン管(SONYのトリニトロンなどは、何十年も誰も真似できなかった)から⇒差別化が持続しない液晶パネルへの移行という落とし穴に自ら飛び込んで行き、運命に従い破綻したと言う物語でしょうか。
小生の知る限りでは、シャープの液晶部門・TV部門の仕事の速さは、素晴らしいものでした。自分の時間軸ではなく業界最速の時間軸で動こうとする点では日本では珍しい企業だったと思います。
数十年の苦節を経て、ブラウン管から平面ディスプレイへのパラダイムシフトを成し遂げたシャープの軌跡を考えれば、人事抗争など枝葉のことです。
なお、液晶パネルの需給逼迫時に社内向けを優先し、東芝やSONYへの供給を絞った結果、その後の助力を得られなくなったと言う本書の記述が事実とすれば残念ですね。業種は違いますが、営業は売る時よりも断る時の方が難しいと言うのが小生の実感で、この点だけは気になっています。
2018年6月27日に日本でレビュー済み
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この書は、経営者の権力抗争で描かれている。
でも、シャープの崩壊は、旬が無くなったものと捉えた方が良いのでは思う。
企業や産業には、旬というものがあるように私は思っている。
戦後直ぐは、石炭産業、そして、石油化学、重工業、家電などの製造業 それぞれに旬があった時期があった。
其々に、旬があり、旬が過ぎ去ると魅力がなくなり注目されなくなると思う。
将に、シャープの目覚ましい発展があった、電卓、ワープロ、液晶テレビ、太陽光発電は、家電メーカーのシャープを二流から一流にした。
が、それも束の間、旬が失せてしまったのだ。シャープに限らず家電業界自体の旬が失せたのだと私は理解したい。
でも、シャープの崩壊は、旬が無くなったものと捉えた方が良いのでは思う。
企業や産業には、旬というものがあるように私は思っている。
戦後直ぐは、石炭産業、そして、石油化学、重工業、家電などの製造業 それぞれに旬があった時期があった。
其々に、旬があり、旬が過ぎ去ると魅力がなくなり注目されなくなると思う。
将に、シャープの目覚ましい発展があった、電卓、ワープロ、液晶テレビ、太陽光発電は、家電メーカーのシャープを二流から一流にした。
が、それも束の間、旬が失せてしまったのだ。シャープに限らず家電業界自体の旬が失せたのだと私は理解したい。
2016年4月24日に日本でレビュー済み
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ある会社が没落する原因は3つに集約されると思う。
1つはイノベーションの不在、2つ目は経営戦略のミス、そして3つ目が権力抗争による意思決定の不在だ。
本書はこの3つ目の要因からシャープの急落の真相を描き出した良書だ。
私が本書を読んで強く感じたことは、創業者・早川徳治氏が行いその後のシャープの経営精神となった家族主義経営こそが、権力抗争の原因となったのではないか、ということだ。
大学あるいは大学院新卒で入社し、数十年会社のために働き、事業部長、取締役など徐々に役職が上がり、最後は社長、そして会長に就任する…。
皆が役員や社長になれるはずもなく、ピラミッドの頂点を目指す争いは熾烈だ。しかも自らのサラリーマン人生で築いた成功体験に基づいてモノを見る。そのため自然と「きょうだい喧嘩」が起こる。
リストラをしない、終身雇用を守るという家族主義こそが、「きょうだい喧嘩」の果てに家をボロボロにするモンスターを産み出してしまったのではないか。
シャープが没落した原因は権力争いだけではない。前述のイノベーションの不在と経営戦略のミスも重要だ。
特にシャープ没落の直接原因となった液晶・エレクトロニクス事業への大型投資の失敗は、いわゆる「イノベーションのジレンマ」で容易に説明できると思う。
本書は権力抗争に主眼を置いた良書であるものの、こうしたテクノロジーと経営を絡めた考察があれば、シャープの没落をより深く理解せきると感じた。
今後、そのような視点からのシャープ没落のノンフィクションの出現を期待したい。
1つはイノベーションの不在、2つ目は経営戦略のミス、そして3つ目が権力抗争による意思決定の不在だ。
本書はこの3つ目の要因からシャープの急落の真相を描き出した良書だ。
私が本書を読んで強く感じたことは、創業者・早川徳治氏が行いその後のシャープの経営精神となった家族主義経営こそが、権力抗争の原因となったのではないか、ということだ。
大学あるいは大学院新卒で入社し、数十年会社のために働き、事業部長、取締役など徐々に役職が上がり、最後は社長、そして会長に就任する…。
皆が役員や社長になれるはずもなく、ピラミッドの頂点を目指す争いは熾烈だ。しかも自らのサラリーマン人生で築いた成功体験に基づいてモノを見る。そのため自然と「きょうだい喧嘩」が起こる。
リストラをしない、終身雇用を守るという家族主義こそが、「きょうだい喧嘩」の果てに家をボロボロにするモンスターを産み出してしまったのではないか。
シャープが没落した原因は権力争いだけではない。前述のイノベーションの不在と経営戦略のミスも重要だ。
特にシャープ没落の直接原因となった液晶・エレクトロニクス事業への大型投資の失敗は、いわゆる「イノベーションのジレンマ」で容易に説明できると思う。
本書は権力抗争に主眼を置いた良書であるものの、こうしたテクノロジーと経営を絡めた考察があれば、シャープの没落をより深く理解せきると感じた。
今後、そのような視点からのシャープ没落のノンフィクションの出現を期待したい。
2016年5月16日に日本でレビュー済み
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日経の本らしく細やかに親切に足で稼いだ事実が書いてありました。思い起こせば”液晶のシャープ!”で当社は行きますと息巻いて突進し始めた頃、”これは賭けだよなぁ。成功すれば金字塔。失敗すれば崩壊だろう。”くらいには見えました。
ちょっと大きな投資をしすぎたようには経営コンサルでなくてもSHARPは見えました。
同様の事が書いてあり、改めて会社は誰のものか?
自分の栄誉を満たすために会社を私物化すればこうなるのでしょう。実名で書かれても多くの人を路頭に迷わせた罪でしょう。反省をお願いしたい。会社を潰した皆様には。
こういった話はシャープに限らず大小どこにでも転がっている話です。結局、経営は私心を捨て去り公に奉仕する心がなければこうなるということなのでしょう。こういうのを”愚”と言う。昔から大は国単位から小は個人企業までどこにでもある普遍的な話でした。
ちょっと大きな投資をしすぎたようには経営コンサルでなくてもSHARPは見えました。
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自分の栄誉を満たすために会社を私物化すればこうなるのでしょう。実名で書かれても多くの人を路頭に迷わせた罪でしょう。反省をお願いしたい。会社を潰した皆様には。
こういった話はシャープに限らず大小どこにでも転がっている話です。結局、経営は私心を捨て去り公に奉仕する心がなければこうなるということなのでしょう。こういうのを”愚”と言う。昔から大は国単位から小は個人企業までどこにでもある普遍的な話でした。





