「あそこの店は、サービスが良い」と感じるのは、どんなときだろうか。安かったとか、おいしかっただけが基準ではなく、なんとなく明るい雰囲気だった、対応が心地よかったなどという、個人の主観がモノサシとなっていることが多いのではないだろうか。だからこそ、サービスは難しい。人によって好き嫌いが分かれるからだ。無難なマニュアル頼みのサービスに落ち着いてしまうのも、万人受けをねらおうとすれば、仕方の無いことなのかもしれない。
しかし本書のテーマは、一歩抜きん出たサービスの“仕掛け人”になるということである。そのためには普段からどのようなことに気をつけているべきか、どんな視点でサービスを考えるべきかを説いている。
本書の特徴は、1文が短く、歯切れの良い言葉の積み重ねになっていることである。こんな話を聞いた、こんな経験したという著者の言葉は、読みやすいながらも、深く心に引っかかる。たとえば、「さっぱりとした飲み物」という注文に答えて、ある飲み物を出したところ、「甘い」と怒られたというアルバイトの話。感覚は人によって異なるため、後々のクレームを避けるために特定のものを薦めてはいけないとしている店が多いなか、彼は良いサービスをしようとして失敗した。著者は、「サービスを追求すればするほど、感動するお客さんは増えるけど、クレームも増える」と言う。しかし、クレームを恐れずに挑戦していくことがサービスの“仕掛け人”であるという主張は、お仕着せの対応に飽き飽きしている現代人にとって新鮮だ。
本書は、サービス業に携わる人はもちろんだが、接客のアルバイトをしている人にも読んでもらいたい。下手なマニュアルよりも本書の方がよっぽど心に残るだろうし、サービスの重みも実感できるはずだ。(朝倉真弓)
内容(「MARC」データベースより)
サービスという仕事は、今日出会ったお客さんをハッピーにさせる素敵な仕事。つまり、「ハッピーの仕掛け人」なのです…。「サービスマン」から「サービスの仕掛け人」に変身するためのヒントをプレゼント。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石黒/謙一
昭和35年福岡県生まれ。岡山理科大学応用物理学科卒業。自動車ディーラーを経て、経営コンサルティング会社入社。営業力向上を目的とした経営指導、管理者・一般社員対象の研修などに従事する。その後、輸入住宅メーカーにて新事業の立ち上げを推進。平成9年、CIL社会教育研究所設立。現在は、顧客満足をテーマとして、個別企業、経営者団体、異業種交流会等での研修・講演などで活躍中。「わかりやすい」、「明日から、誰にでもスグにできる」、そして何より、「どんどん、元気が湧いてくる」、そんなエネルギッシュな講演は、「寝かせない講師」として、多くのファンからの支持を得ている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)