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サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 Kindle版
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2016/9/9
- ファイルサイズ29916 KB
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
「歴史」を超えたスコープで私達を捉えなおす
出版社にはたいへん失礼なのだが、ゲイツ、ザッカーバーグ推薦の帯を見て「何だかなぁ」と敬遠した人には是非手にとってもらいたい一冊だ。「五胡十六国を覚えなさい」と言われたあたりから世界史とは関わりのない人生を歩もうと心に決めた人にも、強く勧めたい。
この本の最大の魅力は、スコープが「歴史」に留まっていないこと、そしてそのおかげで「歴史」の理解がより深まるところにある。七万年前からわれわれが生物学と歴史の両方の線路を走る存在になったこと。そして、生物としての順応力を超えたスピードで飛躍してしまったために、不安を抱えたとても危険な種になっていること。超ホモ・サピエンス(シンギュラリティ)は科学技術だけでは語れず、否応なしに哲学、社会学を巻き込んでいく。小賢しく言ってしまえば、リベラルアーツを学ぶことの重要さへの示唆が、この本には詰まっている。
「サバンナの負け犬だったわれわれサピエンスが今の繁栄を築いたのは妄想力のおかげ」という主題には説得力があって、この魔法の杖一本でネアンデルタール人駆逐から資本主義隆盛までの大イベントを語りつくす。「農業は史上最大の詐欺」という奇を衒(てら)ったような主張も、種の繁栄か個の幸福かという重たいテーマを考える糸口となっている。
ヘブライ大学での歴史の講義が下敷きになっているそうだ。本文中に「歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、(中略)私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するため」というくだりがあるが、この本を一味違った出来栄えにしているのは、社会に出ていく若者たちに歴史への興味を持って欲しい、という一途な熱意かもしれない。理解を助けるエピソードにも工夫があって、こなれた日本語訳と相俟って、読みやすい。たとえばオランダ東インド会社設立のあたりの名調子は、池上彰さんの時事問題解説を聴いているようだ。
イスラエルでは歴史本は売れないとかで出版社に断られ続け、五社目で漸(ようや)く出版に漕ぎつけたところ大ベストセラーとなり、今や四十八ケ国語に翻訳、そんな成功譚が似合う本でもある。
人類の誕生に始まり、コンピューターの進化、そして超ホモ・サピエンス……映画ファンならお気付きだろうが、キューブリック=クラークの「2001年宇宙の旅」とよく似た筋立てだ。七万年前にご先祖様が妄想力を獲得したのはモノリスの力かもしれない、と思わず妄想した。
評者:西澤 順一
(週刊文春 2016.11.14掲載)三つの重要な革命
私たち現生人類につながるホモ・サピエンスは、20万年前、東アフリカに出現した。その頃にはすでに他の人類種もいたのだが、なぜか私たちの祖先だけが生き延びて食物連鎖の頂点に立ち、文明を築いた。40歳のイスラエル人歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』は、この謎を三つの重要な革命──認知革命・農業革命・科学革命──を軸に解き明かす。
たとえば、サピエンス躍進の起点となった認知革命はおよそ7万年前に起きた。原因は遺伝子の突然変異らしいが、サピエンスは柔軟な言語をもって集団で行動できるようになり、先行する他の人類種や獰猛な動物たちを追い払った。この認知革命によって獲得した〈虚構、すなわち架空の事物について語る〉能力は神話を生み、大勢で協力することを可能にした。後に国家、法律、貨幣、宗教といった〈想像上の秩序〉が成立するのもここに起因している。
文理を問わないハラリの博学には驚くばかりだが、レトリックの利いた平易な文章も魅力のひとつだ。そんな彼の知見と表現力に導かれ、私たちは三つの革命や壮大な文明史を再認識するだけでなく、人工知能や遺伝子操作の進歩によって現れるかもしれない〈超ホモ・サピエンスの時代〉についても考えることになる。私たちが生みだした、私たちにそっくりのサピエンスがこの世界を支配する時代の到来……ハラリは最後にこう書いている。
〈私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない〉
今、読まれるべき本である。
評者:長薗安浩
(週刊朝日 掲載) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。内容(「BOOK」データベースより)
著者について
1976年生まれの歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。軍事史や中世騎士文化についての3冊の著書がある(いずれも未訳)。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。軍事史や中世騎士文化についての3冊の著書がある。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している
柴田/裕之
翻訳家。早稲田大学、Earlham College卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B01LW7JZLC
- 出版社 : 河出書房新社 (2016/9/9)
- 発売日 : 2016/9/9
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 29916 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 328ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 3,826位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 11位歴史学 (Kindleストア)
- - 18位歴史学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について

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カスタマーレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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ただ、文章が翻訳されたものであるためか読みづらいし、説明がけっこうまわりくどい。なので、要点を端的に整理しておく。新作の「ホモデウス」を読む前にどうぞ。
1. 我々ホモサピエンスはホモエレクトスやネアンデルタール人やデニソワ人などと比べると特別勇猛でもないし、身体能力ではネアンデルタール人にかなわなかった。火をつかうことを覚えたのもネアンデルタール人やデニソワ人やホモエレクトスと同時期であった。が、あるとき突然変異が起こり、そこにはいないだれかの噂話をしたり、神話のような架空の話を語ってコミュニティの中の共通認識をつくりあげたり、獲物を狩る際の綿密な段取りを打ち合わせするコミュニケーション能力を身につけた。すると、自分たちのコミュニティはもとより、他のコミュニティの者たちとの連携プレイが可能となり、チームプレイによる効率のいいハンティングができるようになった。今、我々は直接会って話したことのない人でも、その人の噂を聞いて仕事を依頼したり、実際に使ったことのない道具でも、それをつくった会社の噂を信用して購入したりしているが、これはこのときに獲得した能力によるものである。この能力がなければ100名以上の人数をまとめるリーダーをつくることは不可能だし、100名以上の人数がひとつのコミュニティをつくるのは無理となる。また、遠く離れた地域の人と交易したりすることもできない。尚、宗教やイデオロギーや貨幣制度などは虚構に類する実態のない概念を理解できるようになったことの産物であり、ヒト科の中でこの能力を獲得したのはホモサピエンスだけであった。
で、サピエンスは、ネアンデルタール人やデニソワ人やホモエレクトスなどの自分たちとは匂いの違うヒト科の者たちをやっつけるようになった。目ざわりだったからなのか、食べるためだったのか、向こうが襲ってくるからなのか、そのあたりの経緯は不明。で、他のヒト科のものたちをすべて駆逐するのと同時にマンモスなどの大型哺乳類などもどんどん絶滅に追い込み、アフリカ、ユーラシア大陸ばかりかオーストラリア大陸、南北アメリカ大陸にまで進出して行った。
2. 今から1万年ほど前にあちこちで農耕をはじめる部族が登場し、人類の苦難がはじまった。はじめはあくまでも狩猟採集生活がメインで、米や麦を栽培したり羊や豚などの家畜を飼うのは補助的な活動でしかなかったのだが、次第に農耕による生産活動に夢をもつようになり、そっちをメインとした生活様式にシフトチェンジしていった。が、農耕は人口を増やす効果があったものの、個人の生活を豊かにするものではなかった。森の中にはいって好きな食べ物を選んでとってくる方がバラエティに富んだ食生活であったし、労働時間もずっと短くてすんだし、他の部族との争い事があったり、災害などがあれば他の地域に移動することができた。が、農耕民は他の地域に移動することができない。畑や田をつくるには長い年月を要するため、それを捨てて他の場所に移れば部族を維持するのは不可能だった。で、貯蔵してある作物をねらう者の襲撃をうけたり、隣接していた部族との間でいさかいが起きても逃げるわけにはいかず、死にものぐるいで戦わねばならなくなり、戦闘で命を落とす者の比率が急上昇した。成人した男子の半分が戦闘で死ぬような状況は珍しくなくなった。それでも、略奪を受けたり、天候不順などで作物が全滅したりすることがある。そういう場合は部族が全滅することもあった。
尚、狩猟採集生活に必要とされる知識や技能は農耕民のノウハウよりも高度で広範囲なものであり、ボンクラな者は足手まといになる。このため、狩猟採集生活においては役に立たない年寄りや知能の低い者は排除され、有能なエリートだけが子孫を残す。が、農耕民はボンクラでも下働きの仕事ができるため、多少知能が低くても子孫を残せる。で、農耕をはじめると人類の脳容積は小さくなった。
3. 農耕をはじめた部族は人口が増えるため、それらは狩猟採集生活をつづける部族を駆逐していき、またたく間に世界の人類のほとんどが農耕民となった。で、農耕社会には余剰生産をしぼりとる支配階級ができあがり、階級社会が定着するようになった。が、そのコミュニティが広範囲なものに発展し、王朝のようなものをつくるには税の取り立てを組織的に行うための文書作成能力が必要とされ、余剰物資を交換するための貨幣制度が必要となった。で、紀元前3500年ごろのメソポタミア地方に現れたシュメール人はそのための貨幣制度と文字を発明し、多数の都市国家を築いて高度な文明を発展させた。
4. 大小の王国が多数できあがると、それらは互いに侵略し合い、いくつもの国を吸収した国は大きな帝国となった。帝国は次々と勃興しては滅亡したが、次第に規模の大きなものが発生するようになり、アッカド王国>ペルシャ帝国>ローマ帝国といった具合に拡大していき、東アジアには始皇帝の秦朝が成立し、インドにはムガル帝国、中米にはアステカ王国が成立し、モンゴル帝国なども出現した。人類のほとんどはそういう帝国の支配下に置かれるようになり、小さな部族や小さな民族の独自の文化や言語はどんどん失われ、その過程で虐殺される者も莫大な数に上ったが、生き残った者は広範囲な経済圏の中で安住できるようになった。
5. 現代社会は500年前の中世社会と比べると人口も生産力も科学技術力もケタ違いである。過去500年間で全人類の人口は14倍に増え、生産量は240倍に増え、エネルギー消費量は115倍に増えている。この現象をもたらしたものは金融システムの変革と科学革命によるわけだが、その引き金となったのはコロンブスのアメリカ大陸発見であった。アメリカ大陸での植民地経営が莫大な富を築きスペイン王国の経済力や軍事力は一気に飛躍したわけだが、コロンブスがインドへの新航路を見つけるために西へ航海したいと言ったときにそのプロジェクトにカネを出すものは皆無だった。当時の人類には「投資」をして手持ちのカネを増やすということを悪だとする観念があった。農業による余剰生産が今よりも格段に少なかったこともあり、世界の資産は有限で増えることがないと思われており、だれかが手持ちの資産を増やすということはだれかがそのぶんを失うということだと考えられていた。また、一般に、未来は暗いものであり、人々の暮らしは過去に遡るほどよかったと思われていた。そういう背景があったためか、科学技術の発展も非常にゆっくりとしたペースでしか進まず、中国で発明された火薬がヨーロッパで大砲に使われるまでに400年間もの歳月を要した。そこには権威ある者が自分たちの無知を認めないという障壁もあった。宗教家や預言者などは宇宙の仕組みについては全てを知っているという建て前をもっており、自分たちにもわからないことがある・・という点を認めなかった。このため当時の世界地図には空白部分がなく、既にわかっている地理情報のみを紙面いっぱいに詰め込んだ図となっていた。したがって、コロンブスが新しい航路の開拓について提案しても、そのために出資をする者はなかった。が、たまたまスペイン王国がムーア人との戦いでグラナダを陥落させて財政に余裕ができ、そのあぶく銭の一部をコロンブスのプロジェクトに出資することにした。と言ってもその規模は大したものではない。3隻の船に水夫120人が乗っているだけだった。その90年前に中国の明朝の武将である鄭和がインドへ往復した際の艦隊は30隻弱の船で組織されていて乗組員は3万人近くであった。これと比べればコロンブスの艦隊は屁のようなものである。が、アメリカ大陸の発見はスペイン王国に莫大な富をもたらした。ヨーロッパではこれを機に国家が投資をして新しい発見をすると「儲かる」ということに気づいた。世界の資産は有限ではなく増やせるのだということもわかった。また、世界には自分たちが知らないことがまだまだ山ほどあることに気づき、学者たちは知識の空白部分を埋めることに情熱を燃やすようになり、新たな発見に対する世間の評価と期待が膨らみ、未来は明るいものかもしれないと思う人が増えた。大航海時代が幕をあけ、資金を広く集めるための株式会社が出現し、国家がそれに投資してその利益を保証するために軍事力を使うという軍産複合体の原型がここにできあがり、これが世界を征服した。その大航海には必ず学者が同行するのが慣例となり、ダーウィンの進化論が生まれた。
6. ヨーロッパにはじまった軍産複合体に科学者が参加するシステムは、アフリカはもとより中国やインドにも伝播しなかった。中世そのままの時代にあったアジアの権力者たちは近隣の国に対してのみ興味を持ち、地球の裏側のことにまで興味を抱かなかった。このため、コロンブスがアメリカ大陸を発見したと聞いても、世界経済の3分の2を押さえていた中国やインドの権力者はアメリカ大陸に軍を派遣して植民地をつくろうとは思わなかった。産業革命が起きてヨーロッパに鉄道が普及しても中国やインドやオスマントルコは興味を示さなかった。そこには、ヨーロッパで熟成された神話や社会政治的な構造がなかったからである。とりわけ、公正な司法システムの構築による信用の獲得で資本を集めるという観念がなかった(今の中国には依然としてこの観念がない)。国民は王に服従し、どのような裁定が下されても文句を言えないというような社会構造では国家に投資する資本家は出て来ない。国民は自分の身の安全を考えるばかりで海の向こうのことや新しい便利な機械などに興味を持つ余裕がないのである。が、それらアジアの社会構造はヨーロッパに征服されることによって破壊され、ヨーロッパ式の神話と社会政治的な構造を注入された。ちなみに、日本だけは欧米に社会構造を破壊されることなく自力で破壊し、すすんでヨーロッパ式の文化を取り入れた。
7. 第二次大戦が終わり、世界の経済がひとつのシステムに統一され、富を生むものが土地や安い労働力から高い教育を受けたエンジニアたちの発明にとって代わられると大規模な戦争は起こらなくなった。他国の土地を占領して資産を横取りするよりも平和な環境で公正な商取引をするほうが儲かるようになったからであるが、核兵器の発明による戦争への恐怖ということもある。で、人類の科学技術は政治や産業界の求めに応じて飛躍的な発展を遂げ、医療や遺伝子工学や、コンピューターや、その他の電子機器の発達などにともなって人類を非死(怪我をすれば死ぬので不死ではない)の境地に導きつつある。我々は神の領域に入りつつあるわけだが、精神面での発達はほとんどなく、狩猟採集生活をしていた時期よりも後退している可能性があり、自分たちの欲望をコントロールすることもできていない。将来的な課題がここにあり、技術の発展によって仏教の悟りのような境地をだれもが得られるようになったりするかもしれないが、そうなったときには、「わたしたちは何になりたいのか?」ではなく、「わたしたちは何を望みたいのか?」という疑問に直面するかもしれない。
主題はそんなに多くないのでもっと短くても良い気がしましたが、
その分丁寧に様々な解説を拾っていて、その脇道部分が個人的には面白かったです。
しかしながら、個人的にはこの本って相当テキスト慣れしていないと
なかなかスムーズに読めない本だと思うのだけれども、
本当に高評価している方はちゃんと読んでいるのだろうか?
なんとなく空気的に高評価する流れがあって、それに押されている気もする・・・
良い本なのは間違いないんだけど、もうちょい人を選ぶような気がするんだよなぁ。
食糧分野でのイノベーションが起こらない限りは、完全犯罪となりそうです。
詐欺には騙す側と騙される側とがいるわけですが、自分がどちら側の子孫なのかがはっきりさせられるでしょう。
怒りに震えながらではなくても、心ざわめきつつ読むことになるのは請け合いです。
特定の穀物を主食にして歴史を紡いだつもりが、実は穀物の奴婢として使役されていたのでは?
という問いは、様々に応用がきくと思います。
電子機器はどうでしょう。我々は使っているのか?使わされているのか?とか。
人類250万年史と現在をつなぐ、壮大という語にふさわしい物語が垣間見られました。
なお、柴田裕之さんの翻訳はガザニカの「人間らしさとはなにか?」に続いて二冊目ですが、
訳本とは感じさせない軽妙な訳で、素晴らしい仕上がりだと思いました。
著者は、ホモ・サピエンスこそ、自然界の食物連鎖の頂点に君臨し、多くの生物を絶滅させた史上最悪の生物と言う。しかし、14世紀のペスト(3千万人)、第一次世界大戦を終わらせたスペイン風邪(5千万~1億人)、ホロコーストの汚名を着せられるはめになった強制収容所の発疹チフスなど、地球史上、動植物を絶滅に追い込んだ極悪非道な細菌やウイルスを議論に含めれば、人間など取るに足らない。人間体内には、人体細胞数の2倍以上の微生物が共生し、人間の感情や無意識に影響を与えている。虚構概念「認知」の進化を、宗教的偏見無しに冷静に辿れば、生物学的な目的の無い進化と見ることができる。著者がネットで知った悲観的歴史は、過去の見識の狭い学者により、妄想的後付け説明が積み重ねられた、また、将来必ず訂正されるであろう「虚構のドラマ」として、冷静に読み流すべきだ。
【下巻:大航海時代~:科学革命とは、支配者が人間を道具化する格差社会時代】
①聖職者が政治家に代わり、宗教が法律に代わった。
モンゴル帝国によるユーラシア経済圏の開拓が、ヨーロッパ帝国支配者の贅沢心に火を付けた。イスラム商人との交易に必要な金・銀を外洋へ求めた大航海時代を、著者は、「科学革命」の始まりと位置付けた。それは、説明に窮する未知の世界が、聖書の説得で事足りていた世界観を崩壊させ、植民地争奪だけでなく科学的好奇心おも奮い立たせたからだ。信仰や宗教が人心を操った時代から、科学的裏付けを要する帝国政治の時代へ代わった。
②「自由と平等」は、支配層が格差社会を維持する便法であった。
「自由と平等」を高らかに謳うことに疑問を感じない読者は、もし支配者層でなければ、愚かな被支配者(民衆)と言わざるを得ない。現在の資本主義(自由競争)と民主主義(平等の権利)は、「自由を愛する資本家」と、「平等を望む大衆」を隔てる、格差社会維持の便法にすぎないからだ。著者が、サピエンス全史(下)で主張する要点は、現在の格差社会が将来どのように進化するかを読者へ問いかけたことだ。
【従順で常時幸福感に満たされる人間に品種改良】
「劣等民族を絶滅すること」は、公然とは許されないが、進化のレベルでは自然と行われている。例えば、支配階級同士、オリンピック選手同士、政治家同士の婚姻は、禁止されていない。サピエンスは、意図的に格差拡大の方向へ進化している。現在、世界の頂点に立つ極少数の資本家達が考える将来像は、完全な階層社会であり、支配者に適した帝王、従順な労働者、警察・軍隊に適した屈強さ、など、職能に合わせた人間を品種改良することである。そして被支配者達の脳は、常に幸福感(セロトニン)で満たされる遺伝子操作が行われる。
サピエンス全史の割には最近の話が多く、歴史と言うよりエッセイのような印象も。
それと全編通して気になるのが、回りくどい物言いや比喩。
難解な文章とまでは言わないが、もっと平たい物言いが出来ないものか。
乱暴にまとめると、かつて複数存在した我々以外のホモ属(人間種)は、知っている者同士
しか協力し合えず、その数せいぜい150人程度。
それ以外の知らない者は、敵か、生活の圏外に居る未知の存在だった。
一方我々ホモサピエンスは、知らない者同士でも同じ事を信じ、協力し合うことが出来た。
ちなみにハチやアリなどは150匹どころではない社会を形成するが、すべての行動はDNA由来。
DNAに無い価値基準を後天的に信じ、協力し合う事は無い。
我々ホモサピエンスが、ホモ属はもとより他の生物にはない特別な繁栄を手にしたのは、
同じ事を信じて協力し合う能力があったから。
ちなみに、本書を人に勧めるかは正直微妙。
当方自身が回りくどい物言いにウンザリし、下巻に手を伸ばす気になれないので。