おそらく、現在のコンピュータ将棋プログラムの基本的なところを「全て」押さえた初めての本だと思います。そして、大会で必須になる通信機能の実装や、インターネット対戦も可能になるTCP/IP版プロトコルについても付章で解説していますので、この本をマスターできれば、すぐに大会やライバルプログラムとインターネット対戦が可能になります。
この本で基礎を学び、より高度な本で応用を学び、世界コンピュータ将棋選手権で入賞するようなプログラムを読者が作成することが出来たならば、著者としてそれ以上の喜びはありません。
「はじめに」より。
なぜ将棋を研究するのか?
ゲームのアルゴリズムの代表的な研究対象としては、チェスが挙げられる。
チェスの研究は、世界チャンピオンに勝利することで終わったかのように思われているけれども、実際のところそうではない。チェスの研究はまだまだ続けている人たちがいる。
一方で、チェスからより複雑なゲームに移っていくグループがあり、題材としては囲碁が好まれている。囲碁は、ルールが単純だが、コンピュータにとって非常に難しいゲームとして知られており、最強のプログラムでも、アマチュア初段レベルがやっとである。また、初期から商業的な成功を収めてしまったこともあり、強いプログラムは一般にアルゴリズムが公開されていない。
しかし、将棋は、商業的成功があったにもかかわらずオープンに研究が進められており、ルール上チェスと似たところがあり、チェスよりも複雑でまだ人間のチャンピオンを倒していない-といった理由で、日本では研究者の数が多い(残念ながら、海外への将棋の普及があまり進んでいないため、海外では研究者が多いとは言えない)。
また、コンピュータ将棋の世界大会は「コンピュータ将棋協会」(CSA)の主催で、毎年日本で開かれている。
本書を読み終えてマスターしたら、最新の知識を得てプログラムを強化し、世界大会に参加してみてほしい。この本のプログラムは、大会で自由に使えるよう、大会使用可能ライブラリ「れさぴょん」として登録ずみである。
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最近の棋力の上昇から判断すると、持ち時間の短い試合ならば、ここ10年以内に世界チャンピオンに挑戦して勝てる可能性がある。言ってみれば、もっとも熱い瞬間が我々の目の前に迫っていると言える。
世界チャンピオンに勝つプログラムを作るのは、この本を手にした貴方かもしれない。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
池/泰弘
1971年東京生まれ。1993年筑波大学第三学群情報学類卒業。(株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)