偉大な航海者、クリストファー・コロンブスの名は知っていたが、その息子、エルナンド・コロンのことは、『コロンブスの図書館』(エドワード・ウィルソン=リー著、五十嵐加奈子訳、柏書房)を読むまで知りませんでした。
本書は、クリストファー・コロンブスの愛人の子で、次男のエルナンド・コロンの評伝です。クリストファー・コロンブスは本来、クリストバル・コロンと表記されるべきだが、本書では、敢えて、日本人に馴染深いクリストファー・コロンブスが採用されています。
エルナンドの生涯で特記されるべきことが、3つあります。
第1は、エルナンドが13歳の時、父の第4回航海に同行して、貴重な経験をしたこと。
「いやになるほどゆっくりと海岸沿いを航行するあいだに父子を襲った熱病によって、エルナンドはよりいっそう父親を身近に感じるようになった。コロンブスはのちに、まだ13歳の息子が苦しむのを見て胸が痛み、ぐったりした姿に気持ちが落ち込んだと書いている。だが、甲板にしつらえたベッドに横たわって息子の姿を見ているうちに、その気持ちはやがて、わが子を誇らしく思う果てしない親心へと変わっていった。エルナンドは病気にもかかわらず一所懸命に働き、それが他の男たちを元気づけ、さらに父が楽になるようにとつねに気を配っていた。お前はまるでその道80年の船乗りのようだと、コロンブスは息子に向かって言った。これは、コロンブスがいままで自分だけにそなわっていると思っていた航海者としてのある種直感的な才能を息子にも認めたということで、父親ゆずりのその資質を、エルナンドは自己像のいちばん重要なものとして生涯大切にしたのだった」。
第2は、崇拝する父の伝記『コロンブス提督記』を著したこと。後代の私たちがコロンブスについて、いろいろ知ることができるのは、この著作に拠るところが大きいのです。
「『コロンブス提督伝』のなかで彼はくり返し、コロンブスがほかの人々にはできなかったことを成し遂げたのは、並外れた修練と忍耐力、自制心のたまものであることを示唆している。それゆえにコロンブスは、大洋で数々の兆候に出会っても、水夫たちのように陸地が近いと早とちりなどせずゆったりと構え、西へ行けば必ず陸地があると確信するに至った3つの論理に意識を集中させることができたのである。その3つとは、根拠、古代の著述家たちの権威、そして大西洋を渡った他の船乗りたちの報告である。エルナンドは、父のこの思慮分別の証拠は彼が欠かすことなくつけつづけた航海日誌にあると考えた。その綿密な日誌は、時間をかけた丹念な計測と記録、観察の集積が新世界発見へつながったことを示している。エルナンドは伝奇のなかで対立役――コロンブスとは対照的なやり口のライバル――まで登場させている」。
第3は、誰も考えたことのないような個人図書館構築を目指したこと。エルナンドが構想した図書館は、幅広く世界中の書物を集めて収蔵するというレヴェルを超えて、キーワードで検索可能な図書館という現代のIT時代の先駆けともいうべき先進的なものであったこと。
「40年前、父が新世界を発見し、謀反と忘恩に打ち勝って生きのび、身の証を立てた――そのころの感覚が、襲いかかるさまざまな中傷や風説によって脆くも崩れ去り、彼の父親が神話と伝説の世界から苦労して掘り起こして日の目を見せた土地が、ゆっくりとまた元の霧のなかへ姿を消そうとしていた。古代史や、迷路のごとく入り組んだ法体系から、古代貨幣の使用や歴史を知るための銘刻にいたるまで、エルナンドが一生涯を費やして学んできたものすべてが、いまや彼に背を向けつつあった。大切に思ってきたものがすべて消滅したいま、エルナンドは残された唯一の武器(彼の図書館と、そこに所蔵された、コロンブスが彼に残した記録文書)に目を向けた。指のあいだからすりぬけていきそうな父を、しっかりとその手にとどめるために――」。
「言語やテーマ、宗教に縛られない図書館というエルナンドの発想は、ヨーロッパにおける知識の概念を根本から変えるものである」。
「本棚は、必要に迫られて考案されたものだ。従来のコレクションならばせいぜい数百ないし数千冊の蔵書で、テーブルに積み上げるか収納箱に入れておいても、記憶力のいい司書ならば難なく見つけ出せただろう。だが、エルナンドの図書館ほどの規模になると、いくらすぐれていても人間の記憶力ではとうてい追いつかず、また、部屋という部屋が本であふれかえってしまっただろう。その点、新型の本棚は場所をとらず、本の重みを後ろの壁にゆだねることができた。棚は整然と並び、付されたナンバーを左から右へ一連のテクストのように読み取ることができ、さらには、本を立てて収納するので、水平に積み上げるのとは違って一冊ずつ取り出しやすく、下の本を取るさいに上の本が崩れそうになることもなかっただろう」。
「エルナンドがいかにすごいものをつくりあげたのか、それを真に実感するのは難しい。当時の、あるいはそれに続く時代の図書館の多くは、創設者の蔵書保管箱に毛が生えたようなものだった。そんな時代にあって、エルナンドは世界中の情報をグアダルキビル川のほとりに集約させるシステムを構築し、そうして集めた本を有効利用するための索引や要約を作成し、さらにそれを世に配布し、広大な印刷物の王国にアクセスできるネットワークを創造したのである。じつにすばらしい仕組みだ。だがエルナンドは、目録からタイトルを見つけ出し『題材別目録』でキーワードを見つけるこの方法では、探している本が具体的にわかっている人にしか役立たないと気づいた。それまで知らなかった新たな知識との出会いの場として図書館を利用する場合はまた別で、ブラウジング、つまり自由閲覧が必要となる。とくに目的もなく自由に見て回る、じつはそこにこそ、読者にとって最大の醍醐味がある。読者の心は、これは読まないわけにはいかないというカテゴリーや情報を教えてくれる一方で、眼中にないものは完全に遠ざけてくれるのだ」。
「エルナンドが遺した財産の主たる相続人は人間ではなく、彼の驚くべき創造物――図書館だった。この世で築いた財産を一群の『本』に遺すなど、ヨーロッパの歴史が始まって以来のことであり、その行為そのものが当惑を招いたに違いないが、それをさらに理解不能にしていたのが問題の図書館の『形態』だった。エルナンドの蔵書の多くは、当時の大型図書館に大切に所蔵されていた手稿本、すなわち神学や哲学、法学などの大冊、その価値に見合う豪華な装丁がほどこされた貴重な書籍ではなく。むしろ地位も名声もない著者による本や小冊子、さらに酒場の壁を飾るような、一枚の紙きれに印刷された物語詩など、当時の人々には紙くずにしか見えない代物だった。偉大なる探検家の息子が遺したものは、はたから見ればなんの役にも立たないごみ同然だったのである。しかしエルナンドにとっては、あらゆるものを蒐集し、それまで誰も思いつかなかった『ユニバーサル』な図書館をつくりあげたいという夢へ近づけてくれるかけがえのないものだった。いつ始まりいつ終わったのかもわからない種々雑多なコレクションには。書物に加え、いくつもの収納箱に入った版画(史上最大のコレクションだった)のほか、一カ所に集められたものとしては最多となる楽譜も含まれていた。また、外の庭園には世界中から集めた植物が植えられていたと伝えられるが、当時はまだ、そうした庭を呼ぶ『植物園』という言葉は存在しなかった」。
「だがなんといっても、彼が抱いた最大の野望である、全世界の知識を集めた宝庫――キーワードによる検索が可能で、概要を通じてさまざまな情報に触れ、異なる基準に沿った並べ替え、そして世界中に広がる拠点からのアクセスが可能なそれはまさしく、ほぼ500年後に登場するワールド・ワイド・ウェブ、サーチエンジン、データベースといった、インターネットの世界を予感させるものだった。エルナンドの努力は並大抵のものではなく、彼が描いたプランは驚異的だが、じつは彼が目指したプロジェクトは、デジタル化や、テクストを読み取って他の言語に書き換える機械の能力、コンピュータのブール論理で動く検索界の巨人グーグルはグーグル・ブックス・プロジェクトにおいて、エルナンドの死後500年のあいだ滞っていた作業の大半を、わすか数年で完成させた(だがしかし、この革新的プロジェクトもまた、たちまち著作権をめぐる法的な問題にはまり込み、いま現在もなかば非公開事項となっている)」。
自分なりの、知の脳内図書館構築に取り組んでいる私にとって、何とも刺激的な一冊です。
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コロンブスの図書館 単行本 – 2020/4/28
エドワード ウィルソン リー
(著),
五十嵐 加奈子
(翻訳)
購入を強化する
蔵書はあらゆる分野におよぶ3200冊。それでも持ち主が生涯をかけて蒐集したほんの一部だ。持ち主の名はエルナンド・コロン、コロンブスの私生児である。15世紀半ばのグーテンベルクの印刷革命から100年足らず、ルネサンス、宗教改革、大航海時代の最前線で世界のありとあらゆる情報を集めて目録化しようと試みた書物狂の知られざる物語。
【目次】
プロローグ セビーリャ 1539年7月12日
第1部 魔法使いの弟子
第1章 大洋からの帰還
第2章 純血の宮廷で
第3章 預言の書
第4章 父と子
第5章 夜の知識
第2部 絵であらわされる言語
第6章 靴と船と封蠟
第7章 世界都市
第8章 秩序の構造
第9章 辞書の帝国
第3部 世界地図
第10章 悪魔は細部に宿る
第11章 故郷に勝る場所はなし
第12章 切り取る
第13章 壁のない図書館
第4部 ものに秩序を与える
第14章 新たなヨーロッパ、変わらないヨーロッパ
第15章 どこにもない国の王
第16章 最後の指示
第17章 エピローグ――船のかけら
謝辞
『コロンブス提督伝』に関する注記
訳者あとがき
出典について
図版一覧
【目次】
プロローグ セビーリャ 1539年7月12日
第1部 魔法使いの弟子
第1章 大洋からの帰還
第2章 純血の宮廷で
第3章 預言の書
第4章 父と子
第5章 夜の知識
第2部 絵であらわされる言語
第6章 靴と船と封蠟
第7章 世界都市
第8章 秩序の構造
第9章 辞書の帝国
第3部 世界地図
第10章 悪魔は細部に宿る
第11章 故郷に勝る場所はなし
第12章 切り取る
第13章 壁のない図書館
第4部 ものに秩序を与える
第14章 新たなヨーロッパ、変わらないヨーロッパ
第15章 どこにもない国の王
第16章 最後の指示
第17章 エピローグ――船のかけら
謝辞
『コロンブス提督伝』に関する注記
訳者あとがき
出典について
図版一覧
- 本の長さ416ページ
- 言語日本語
- 出版社柏書房
- 発売日2020/4/28
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- ISBN-104760150900
- ISBN-13978-4760150908
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
1539年、スペイン・セビーリャ―世界最高の図書館をつくりあげたのはコロンブスの息子だった。あらゆる分野におよぶ蔵書は、ヨーロッパ一の規模を誇り、さらにその図書館には驚くべき“仕掛け”があった―。持ち主の名はエルナンド・コロン、コロンブスの私生児である。15世紀半ばのグーテンベルクの印刷革命から100年足らず、ルネサンス、宗教改革、大航海時代の最前線で世界のありとあらゆる情報を集めて目録化しようと試みた書物狂の知られざる物語。
著者について
著者略歴
エドワード・ウィルソン=リー(Edward Wilson-Lee)
ケニアに生まれ、スイスを経て、オックスフォード、ケンブリッジで大学時代を過ごす。現在はケンブリッジ大シドニー・サセックス・カレッジで中世・ルネサンス文学を教える。主な著書にShakespeare in Swahililandなどがある。本書でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞最終ノミネート、ヘッセル・ティルトマン賞受賞。
訳者略歴
五十嵐加奈子(いがらし かなこ)
翻訳家。東京外国語大学卒業。主な訳書にニコラス・グリフィン『ピンポン外交の陰にいたスパイ』、ローラ・カミング『消えたベラスケス』(以上、柏書房)、ジョン・クラリク『365通のありがとう』(早川書房)、『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館 シーズン1・2公式ガイド』(早川書房、共訳)、デボラ・ブラム『毒薬の手帖』(青土社)などがある。
エドワード・ウィルソン=リー(Edward Wilson-Lee)
ケニアに生まれ、スイスを経て、オックスフォード、ケンブリッジで大学時代を過ごす。現在はケンブリッジ大シドニー・サセックス・カレッジで中世・ルネサンス文学を教える。主な著書にShakespeare in Swahililandなどがある。本書でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞最終ノミネート、ヘッセル・ティルトマン賞受賞。
訳者略歴
五十嵐加奈子(いがらし かなこ)
翻訳家。東京外国語大学卒業。主な訳書にニコラス・グリフィン『ピンポン外交の陰にいたスパイ』、ローラ・カミング『消えたベラスケス』(以上、柏書房)、ジョン・クラリク『365通のありがとう』(早川書房)、『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館 シーズン1・2公式ガイド』(早川書房、共訳)、デボラ・ブラム『毒薬の手帖』(青土社)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ウィルソン=リー,エドワード
ケニアに生まれ、スイスを経て、オックスフォード、ケンブリッジで大学時代を過ごす。現在はケンブリッジ大学シドニー・サセックス・カレッジで中世・ルネサンス文学を教える。主な著書にShakespeare in Swahililandなどがある。『コロンブスの図書館』でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞最終ノミネート、ヘッセル・ティルトマン賞受賞
五十嵐/加奈子
翻訳家。東京外国語大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ケニアに生まれ、スイスを経て、オックスフォード、ケンブリッジで大学時代を過ごす。現在はケンブリッジ大学シドニー・サセックス・カレッジで中世・ルネサンス文学を教える。主な著書にShakespeare in Swahililandなどがある。『コロンブスの図書館』でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞最終ノミネート、ヘッセル・ティルトマン賞受賞
五十嵐/加奈子
翻訳家。東京外国語大学卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 柏書房 (2020/4/28)
- 発売日 : 2020/4/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 416ページ
- ISBN-10 : 4760150900
- ISBN-13 : 978-4760150908
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 571,751位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 104位西洋史
- - 2,231位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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ベスト50レビュアー
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2020年11月27日に日本でレビュー済み
新聞書評で高評価だったので読みました。
すごい作品だと思いました。
コロンブスの息子が作った図書館の話。
その息子の視点から、父コロンブスの冒険の細部が描かれています。
さらに、当時の街や国の様子。
国々の関係も。
そして、究極の図書館の作り方。
今まで見たこともない世界でした。
コロンブスの冒険も、詳しく見れば、大変な事ですよね。
面白かったです。
ただし、後半1/3は消化出来ませんでした。
当時の欧州の国々についての基礎知識が必要だという事ではないでしょうか?
すごい作品だと思いました。
コロンブスの息子が作った図書館の話。
その息子の視点から、父コロンブスの冒険の細部が描かれています。
さらに、当時の街や国の様子。
国々の関係も。
そして、究極の図書館の作り方。
今まで見たこともない世界でした。
コロンブスの冒険も、詳しく見れば、大変な事ですよね。
面白かったです。
ただし、後半1/3は消化出来ませんでした。
当時の欧州の国々についての基礎知識が必要だという事ではないでしょうか?
2020年7月29日に日本でレビュー済み
「訳者あとがき」で指摘しているように、コロンブスを知らない人は、ほとんどいないが、コロンブスの息子について知っている人も、ほとんどいないに違いない。本書は、そのコロンブスの息子エルナンド・コロンの生涯を描いている。
エルナンドは婚外子だった。著者が書くように、キリスト教の影響力が強かった当時にあっては、正当な結婚によらない子どもは大きなハンデを背負っていた。それでも、父の引きがあったこと、天文学などの知識、書物の収集とその分類などに現れる能力などを生かし、スペイン国王カルロス一世(神聖ローマ皇帝カール五世)に仕えている。
エルナンドの旅の日々が詳しく辿られている。なかでも、ヨーロッパ中をめぐりながら大量の書籍を購入しているのが印象的だ。書物を集め、分類し、自身の理想の図書館をつくるためだ。活版印刷技術により書物が大量に流通しはじめているのでその数はかなりのものとなっている。それでも264ページにあるように、三日間で200冊とか一か月間で1000冊というのには驚く。当時大量に刷られたパンフレットのような薄い本も混じっていたのだろうが、凄まじい。一方で、運搬中の船が沈み1674冊の本を失ったりしている。
もう一つの特色は、目録作りだろう。図書館で本を利用するための《題材別目録》や《著者・科目一覧》など人を雇いながら整備しており、その先見性を著者は高く評価している。また、現在のように本を立てて並べ始めたのもエルナンドだったことにも触れられている。
業績として父の伝記『コロンブス提督伝』をまとめたことにも言及されているが、本好きの私が強く惹かれたのはエルナンドの“書物狂”ぶりに関する部分だ。さらに、バルトロメ・デ・ラス・カサスとは友人だったし、デジデリウス・エラスムスにも会っている。360ページに「エルナンドは何かを始めることは得意でも終わらせることはあまり得意ではなかった」とあるが、それでも彼の人生が羨ましくてならない。
エルナンドは婚外子だった。著者が書くように、キリスト教の影響力が強かった当時にあっては、正当な結婚によらない子どもは大きなハンデを背負っていた。それでも、父の引きがあったこと、天文学などの知識、書物の収集とその分類などに現れる能力などを生かし、スペイン国王カルロス一世(神聖ローマ皇帝カール五世)に仕えている。
エルナンドの旅の日々が詳しく辿られている。なかでも、ヨーロッパ中をめぐりながら大量の書籍を購入しているのが印象的だ。書物を集め、分類し、自身の理想の図書館をつくるためだ。活版印刷技術により書物が大量に流通しはじめているのでその数はかなりのものとなっている。それでも264ページにあるように、三日間で200冊とか一か月間で1000冊というのには驚く。当時大量に刷られたパンフレットのような薄い本も混じっていたのだろうが、凄まじい。一方で、運搬中の船が沈み1674冊の本を失ったりしている。
もう一つの特色は、目録作りだろう。図書館で本を利用するための《題材別目録》や《著者・科目一覧》など人を雇いながら整備しており、その先見性を著者は高く評価している。また、現在のように本を立てて並べ始めたのもエルナンドだったことにも触れられている。
業績として父の伝記『コロンブス提督伝』をまとめたことにも言及されているが、本好きの私が強く惹かれたのはエルナンドの“書物狂”ぶりに関する部分だ。さらに、バルトロメ・デ・ラス・カサスとは友人だったし、デジデリウス・エラスムスにも会っている。360ページに「エルナンドは何かを始めることは得意でも終わらせることはあまり得意ではなかった」とあるが、それでも彼の人生が羨ましくてならない。









