一言で言えばレビュータイトルのように評するしかない。
著者は医療少年院に勤務経験がある児童精神科医。
職務を通して、非行少年の多くが知的障害にかろうじて含まれない「境界知能」の少年であり、「反省」→「更生」のステップを踏む以前に「反省」の意味すら認知できないことに気づいた。
彼らは知能や認知能力が低いがゆえに、他者と上手くやっていけず学校や社会から落ちこぼれるが故に非行に走ると考察したのだ。
その視点から、そのような子供の存在を早い段階で汲み上げ、普通教育以外の特別プログラムを練習させることで学校や社会生活で困らない程度のソーシャルスキルを身に付けさせるというメソッドの普及に尽力している。
成る程、非行の実情は確かにそうなのだろう。
だが、この本は内容のバランスが悪すぎて著者の意図と異なる読み方をされるだろう。
タイトルに代表されるように「いかに非行少年たちの知的能力が低いか」の例を第1章から第6章まで延々と並べている。
中には前頭葉に腫瘍があるため衝動を止められず大量殺人を犯したアメリカ人青年の例すら挙げている。
それなのに、最後の第7章で初めて自身が考案し普及させようとしている認知機能トレーニングが紹介されているだけである。
これでは読者が「ソーシャルスキルを身に付けさせることが非行の抑止につながる」との著者の考えに賛同する前に「やっぱり非行に走るのは知能が低いからだ」と考えてしまうに違いない。
最近売れている「残念な動物」シリーズに乗っかったようなセンセーショナルなタイトルも出版社の思惑なのだろうか。
その意義は高いはずなのに、本末転倒な構成が残念である。
ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書) (日本語) 新書 – 2019/7/12
宮口 幸治
(著)
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本の長さ192ページ
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言語日本語
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出版社新潮社
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発売日2019/7/12
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寸法18.2 x 11.3 x 2 cm
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ISBN-104106108208
-
ISBN-13978-4106108204
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。
著者について
みやぐち・こうじ 立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、二〇一六年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主催。医学博士、臨床心理士。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
宮口/幸治
立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主宰。医学博士、臨床心理士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主宰。医学博士、臨床心理士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2019/7/12)
- 発売日 : 2019/7/12
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4106108208
- ISBN-13 : 978-4106108204
- 寸法 : 18.2 x 11.3 x 2 cm
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 303位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 3位臨床心理学・精神分析
- - 5位新潮新書
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- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少年犯罪を犯した子供たちに長期に深くかかわった専門家の経験や意見は読むに値します。が、読者側に忍耐が必要な読みづらい本です。内容が難しいのではありません。3割ほど読んだあたりから、いわゆる「耳タコなほど聞かされた話をまた聞かされている」という感覚になってくるんです。前半は1章に1,2回そういう感覚になりますが、その感覚はどんどん増え、後半はほぼ「はいはい、またさっき言ってたアレね」感でいっぱいに。後半は新しい記載がある部分を探しながら読むという感じになりました。内容は悪くないので、是非とも編集し直してほしい。
著者が強調したいのは、境界知能の子達にはコグニティブトレーニング(認知機能の訓練)が必要という点のようです。説明は丁寧なのですが、「人を殺したい衝動の強い少年Aにコグトレをやりました」だけで終わっている部分もあって、不発感があります。で、トレーニングの結果はどうだったの?読者が知りたいのはそこです。それが本当に効果的だったかどうかは、その子が犯罪を重ねることなく人生を終えるまでわからないわけだし、評価が難しいのはわかります。でも、著者がトレーニング効果をどう感じたのかくらいは書いてほしかった。効果があると感じてるから本にしてるんだろうな、という程度の読後感で残念です。
上記以外の要点は下のような感じでしょうか。
・犯罪を犯す子供たちの中には、「犯罪を犯したという認識自体を持てない子」がたくさんいる。問題を抱えているのに、その自覚がなく、困っていると表現できない子達(例:俗に言う、IQが低いが、知的障害者というほどには低くない程度の子とか)
・今の矯正プログラムは、"認知機能が正常であること"が前提になっているので、上のような子供たちを対象としてない。だから、十分な効果がない。
・そもそも、今の知能判定法はあまり正確ではなく、「知的には問題がない」と誤って判定されてしまうことがある。すると、適切なプログラムにつなげられなくなる。
・そういう子供の支援には「学習面(認知面)」「身体面」「社会面」の3方面からの支援が必要。特に、認知面・社会面が大事。
・一般の学校では、境界知能の子の認知面・社会面を育てる教育・支援を行うのは難しいし、そういった支援に対する理解も乏しい。
・認知機能の低い子はあらゆることを歪んで捉えてしまう。例えば、誤った被害感情を持つ(目があっただけなのに"睨まれた"とか。他にも、悪口をいわれている、嫌われている)など
・イジメられた経験のある子がとても多い。知能が低いことや不器用なことなどが原因。
・周囲との軋轢やイジメは、ストレスや怒りになって、本人の中に蓄積していく。しかし、こういう子達は適切な表出方法を持たないので、どんどん溜まっていき、そのはけ口として犯罪に走ってしまう。そのため、なぜ犯罪を犯したのか(何がストレスだったのか、何が怒りの原因だったのか)がわからない子も多く、悪いことをしたという認識につながらない(「よくわからないけどイライラしてやった」とか)。
→この部分を説明するために、多数の例が本書の中で挙げられています。とても複雑です。無理に簡潔にまとめましたが、この解釈が正しいのかはわかりません。認知機能の低い子供達の認知の仕方を理解するのは本当に難しいのだと思います。
というわけで、"認知機能に困難を抱える境界知能の子" には適切な支援が必要なこと、それによって少年犯罪を防げるかもしれないこと、今の矯正プログラムは認知機能が正常なことを前提にしているので、それでは不十分であること、著者はそういう子供たちを対象としたコグトレをやっていること、の4点はよくわかりました。
それにしても、編集者は著者の書き散らしをそのまま本にしてしまっていて、仕事してないんじゃないかと。こういう本にセンセーショナルなタイトルをつけて、少年犯罪をおかした子供たちがいかに普通とは違うか、「ケーキも切れない!」と煽るように売っているのはやっぱり違和感があると思いました。
あと、矯正施設では少年も少女も「少年」と呼ぶらしく、この本では専門用語を優先して、性別に関わらず「少年」で統一しています。ただ、一般読者を対象としている本なので、やはり、区別するか中性的な言葉を使うかしたほうがよかったのでは、と思います。了承の上で読んではいますが、どうしても少年と言われると男の子のイメージで読んでしまって…。無意識的に男の子の問題という風に、脳内変換されてしまいます。
内容自体は興味深いので、ぜひ編集しなおして内容を深めて再出版してほしいです。
著者が強調したいのは、境界知能の子達にはコグニティブトレーニング(認知機能の訓練)が必要という点のようです。説明は丁寧なのですが、「人を殺したい衝動の強い少年Aにコグトレをやりました」だけで終わっている部分もあって、不発感があります。で、トレーニングの結果はどうだったの?読者が知りたいのはそこです。それが本当に効果的だったかどうかは、その子が犯罪を重ねることなく人生を終えるまでわからないわけだし、評価が難しいのはわかります。でも、著者がトレーニング効果をどう感じたのかくらいは書いてほしかった。効果があると感じてるから本にしてるんだろうな、という程度の読後感で残念です。
上記以外の要点は下のような感じでしょうか。
・犯罪を犯す子供たちの中には、「犯罪を犯したという認識自体を持てない子」がたくさんいる。問題を抱えているのに、その自覚がなく、困っていると表現できない子達(例:俗に言う、IQが低いが、知的障害者というほどには低くない程度の子とか)
・今の矯正プログラムは、"認知機能が正常であること"が前提になっているので、上のような子供たちを対象としてない。だから、十分な効果がない。
・そもそも、今の知能判定法はあまり正確ではなく、「知的には問題がない」と誤って判定されてしまうことがある。すると、適切なプログラムにつなげられなくなる。
・そういう子供の支援には「学習面(認知面)」「身体面」「社会面」の3方面からの支援が必要。特に、認知面・社会面が大事。
・一般の学校では、境界知能の子の認知面・社会面を育てる教育・支援を行うのは難しいし、そういった支援に対する理解も乏しい。
・認知機能の低い子はあらゆることを歪んで捉えてしまう。例えば、誤った被害感情を持つ(目があっただけなのに"睨まれた"とか。他にも、悪口をいわれている、嫌われている)など
・イジメられた経験のある子がとても多い。知能が低いことや不器用なことなどが原因。
・周囲との軋轢やイジメは、ストレスや怒りになって、本人の中に蓄積していく。しかし、こういう子達は適切な表出方法を持たないので、どんどん溜まっていき、そのはけ口として犯罪に走ってしまう。そのため、なぜ犯罪を犯したのか(何がストレスだったのか、何が怒りの原因だったのか)がわからない子も多く、悪いことをしたという認識につながらない(「よくわからないけどイライラしてやった」とか)。
→この部分を説明するために、多数の例が本書の中で挙げられています。とても複雑です。無理に簡潔にまとめましたが、この解釈が正しいのかはわかりません。認知機能の低い子供達の認知の仕方を理解するのは本当に難しいのだと思います。
というわけで、"認知機能に困難を抱える境界知能の子" には適切な支援が必要なこと、それによって少年犯罪を防げるかもしれないこと、今の矯正プログラムは認知機能が正常なことを前提にしているので、それでは不十分であること、著者はそういう子供たちを対象としたコグトレをやっていること、の4点はよくわかりました。
それにしても、編集者は著者の書き散らしをそのまま本にしてしまっていて、仕事してないんじゃないかと。こういう本にセンセーショナルなタイトルをつけて、少年犯罪をおかした子供たちがいかに普通とは違うか、「ケーキも切れない!」と煽るように売っているのはやっぱり違和感があると思いました。
あと、矯正施設では少年も少女も「少年」と呼ぶらしく、この本では専門用語を優先して、性別に関わらず「少年」で統一しています。ただ、一般読者を対象としている本なので、やはり、区別するか中性的な言葉を使うかしたほうがよかったのでは、と思います。了承の上で読んではいますが、どうしても少年と言われると男の子のイメージで読んでしまって…。無意識的に男の子の問題という風に、脳内変換されてしまいます。
内容自体は興味深いので、ぜひ編集しなおして内容を深めて再出版してほしいです。
2019年8月22日に日本でレビュー済み
公立小学校で通級指導教室を担当しています。
本書を批判します。
①「認知」という言葉に含まれる意味が未整理(知覚、情報処理〜スキーマまで)
②特性について未整理(情報処理システムとASD、ADHD、LD等の特性が整理されていない)
③非論理的な文章(事実と、感想・個人的印象の飛躍的な結び付け)
④非行少年の「頭の中(認知)」だけに非行の原因を矮小化している点。(貧困、愛着など、脳以外の社会的な要因の無視)
⑤専門機関(療育施設や心理士、ST、OT)、指導の専門家(SENS、通級、児童デイ等)の無視および過小評価。(そもそもWISCの解釈を丁寧にしてくれる人が周りにいない?そんなはずは…)
「困り感には背景があって、それには特別な支援が必要である」ということ、
「現行の教育システムでは、通常学級で適切に彼らを見ていくには限界がある」
ということを広く伝えている点は素晴らしいので☆2
本書が物足りないなら、
あるいは本書に感銘を受けたなら
藤川洋子(2010)「非行と広汎性発達障害」、日本評論社
の一読をおススメします。
また、認知に弱さのある子への指導内容について知りたい方は類書を参照。他にもたくさんあります。
(聞く話す読む書く計算推論の困り感の背景と指導)
特別支援教育の理論と実践[第3版]―II 指導
(見る:レイの複雑図形の再生が悪い子に)
「漢字の基礎を育てる形・音・意味ワークシート1 空間認知 編」、苫廣・今村(2019)、かもがわ出版
(きく)
「ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援」 、湯澤正通(2017)、学研プラス
(アセスメントと指導)
「子どもの達成感を大切にする通級の指導: アセスメントからつくる指導のテクニックと教材」、山田充(2019)、かもがわ出版
本書を批判します。
①「認知」という言葉に含まれる意味が未整理(知覚、情報処理〜スキーマまで)
②特性について未整理(情報処理システムとASD、ADHD、LD等の特性が整理されていない)
③非論理的な文章(事実と、感想・個人的印象の飛躍的な結び付け)
④非行少年の「頭の中(認知)」だけに非行の原因を矮小化している点。(貧困、愛着など、脳以外の社会的な要因の無視)
⑤専門機関(療育施設や心理士、ST、OT)、指導の専門家(SENS、通級、児童デイ等)の無視および過小評価。(そもそもWISCの解釈を丁寧にしてくれる人が周りにいない?そんなはずは…)
「困り感には背景があって、それには特別な支援が必要である」ということ、
「現行の教育システムでは、通常学級で適切に彼らを見ていくには限界がある」
ということを広く伝えている点は素晴らしいので☆2
本書が物足りないなら、
あるいは本書に感銘を受けたなら
藤川洋子(2010)「非行と広汎性発達障害」、日本評論社
の一読をおススメします。
また、認知に弱さのある子への指導内容について知りたい方は類書を参照。他にもたくさんあります。
(聞く話す読む書く計算推論の困り感の背景と指導)
特別支援教育の理論と実践[第3版]―II 指導
(見る:レイの複雑図形の再生が悪い子に)
「漢字の基礎を育てる形・音・意味ワークシート1 空間認知 編」、苫廣・今村(2019)、かもがわ出版
(きく)
「ワーキングメモリを生かす効果的な学習支援」 、湯澤正通(2017)、学研プラス
(アセスメントと指導)
「子どもの達成感を大切にする通級の指導: アセスメントからつくる指導のテクニックと教材」、山田充(2019)、かもがわ出版
2019年8月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何か問題を起こしたときに、その行為を反省できれば、その人は成長できるであろう。しかし、自分の行為やそれが周囲に与える影響を認知することができなければ、反省することすらできない。その結果として、成長できずに同じ問題を繰り返してしまう。本書は、このような認知機能が低いがゆえに問題行動を起こす人々をいかに更生させるか、認知機能を向上させるか、そしていかに社会をよりよくしていくかをテーマにしている。
多くの事例は、著者が勤務している少年院での体験が語られているのだが、彼らに共通する特徴、つまり認知機能が低いことによる行動の傾向というのは、我々が実生活で出会う人々にも見て取れる傾向でもある(詳しくは本書を参照されたい)。つまり、程度の差はあれ、実生活をなんとかこなせるレベルではあるが認知機能が低い人々は、我々の周囲にも多数存在するのだ(本書では「境界知能」と表現されている)。
読了後に思ったのだが、職場にいるあの働かない人はもしかしたら「境界知能」なのかもしれない。あれだけ働かず、周囲を腐らせ、組織に悪影響を与えているにもかかわらず、一切悪びれず、かつ周囲を批判している。確かに認知機能が弱く反省することが出来ないならば、全ては他人のせいとなり、自分は正当化されるのだろう。この認知機能の問題、少年院や刑務所の塀の中だけの問題ではない。我々の実生活の場でも、この問題を検証する必要があるように思う。
多くの事例は、著者が勤務している少年院での体験が語られているのだが、彼らに共通する特徴、つまり認知機能が低いことによる行動の傾向というのは、我々が実生活で出会う人々にも見て取れる傾向でもある(詳しくは本書を参照されたい)。つまり、程度の差はあれ、実生活をなんとかこなせるレベルではあるが認知機能が低い人々は、我々の周囲にも多数存在するのだ(本書では「境界知能」と表現されている)。
読了後に思ったのだが、職場にいるあの働かない人はもしかしたら「境界知能」なのかもしれない。あれだけ働かず、周囲を腐らせ、組織に悪影響を与えているにもかかわらず、一切悪びれず、かつ周囲を批判している。確かに認知機能が弱く反省することが出来ないならば、全ては他人のせいとなり、自分は正当化されるのだろう。この認知機能の問題、少年院や刑務所の塀の中だけの問題ではない。我々の実生活の場でも、この問題を検証する必要があるように思う。
ベスト500レビュアー
児童精神科医から少年院の法務技官になり、そして現在は大学教員として臨床心理系の講義を担当する著者が「コグトレ」の開発者です。「1日5分で日本を変える」方法とは、朝の会で「コグトレ」をやって学習の土台である認知機能のトレーニングをすることです。医療少年院での経験を元に、その必要性を説いたのが本書です。認知行動療法が「認知機能という能力に問題がないこと」を前提に考えられた手法であるとか、学校現場では境界知能の支援まで手が回らないなど、あらためて気づかされることが本書にはたくさんあります。小学校の低学年がチャンスです。朝の時間に無理のない範囲で取り組むのも一案だと思います。なぜなら、学校の「朝の5分」は貴重な時間であり、やることがとても多いからです。