ベストセラー『ザ・ゴール』に続くゴールドラット博士によるシリーズ待望の4作目。テーマはTOCによるプロジェクトマネジメントである。
本書でも一連の作品と同様に、既存の手法が通じない経営問題に直面する主人公がTOCに出あい劇的な成果をあげるという、「コストワールド」から「スループットワールド」への転換を興味深く描き出している。その「世界」を体験させてくれる大きな役割を果たすのが、定番の小説スタイルといえよう。
ストーリーは、大学のエグゼクティブMBAのクラスを舞台に繰り広げられる。主人公の教授と、各業界から現行のプロジェクトの納期短縮といった使命を帯びて集まったプロジェクト・リーダーらが、議論を戦わせながら現実的なソリューションを求めていく。
プロジェクトの問題点はここで総ざらいされる。納期直前まで作業を始めない「学生症候群」、結局は無駄になる「セーフティー(時間的余裕)」、あるいはクリティカルパス以外の作業の開始時期、プロジェクトの評価基準などだ。TOCはそれらを見事に解決するが、同時に、クリティカルパスの変化やマルチタスク(掛け持ち作業)による人的リソース不足といった実行段階の問題を解く新たな視点も要請する。それが「クリティカルチェーン」である。
謎解きのような展開にはやや焦らされるが、具体的な事例をもとにプロジェクトマネジメントの基本を順に追うことができるのはよいトレーニングになる。エッセンスがつまった部分としては、取引先との納期の交渉シーンなどが見ものである。読者を限定しない1冊で、これでTOCはさらに浸透するだろう。(棚上 勉)
クリティカルチェーン TOC(制約条件の理論)を平易に解説した『ザ・ゴール』のエリヤフ・ゴールドラット氏によるビジネス小説の邦訳第4弾。著者はプロジェクトマネジメントを題材に選び、TOCの適用を試みる。
小説の舞台は、ある大学の社会人向けMBAコース。所属会社から「製品開発プロジェクトの期間を短縮する方策を探れ」との指令を受けた3人が、プロジェクトマネジメントの講義を通して、課題解決のヒントを見つけるまでを描く。前3作と同じく、純粋な小説としては描写が平板だが、登場する失敗プロジェクトのエピソードが巧妙なので、ついページをめくってしまう。
主人公である教官と学生のやり取りを通じて、著者は「ボトルネックとなるリソースの都合を優先して全体スケジュールを立案すべき」と提唱する。結論を急ぎすぎるきらいもあるが、それなりに納得できる。システム開発プロジェクトに携わるエンジニアは、一読して仕事の進め方を見直すとよいだろう。
(日経コンピュータ 2003/12/15 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
-- 日経BP企画
内容(「BOOK」データベースより)
これまで考慮されてこなかった人間行動の特性をふまえ、プロジェクト・マネジメントにTOC(制約条件の理論)を応用したクリティカルチェーン。我々の常識を覆し、パフォーマンスを飛躍的に改善するツールとソリューションを提示する。『ザ・ゴール』のゴールドラット博士のビジネス小説・邦訳第4弾。
内容(「MARC」データベースより)
なぜプロジェクトはいつも遅れるのか? 人間の心理特性を考慮し、TOC(制約条件の理論)をプロジェクト・マネジメントに応用することでパフォーマンスを飛躍的に改善させるツールとソリューションを提示するビジネス小説。
著者について
【著者略歴】
エリヤフ・ゴールドラット(Eliyahu M. Goldratt)
イスラエルの物理学者。1948年生まれ。本書『ザ・ゴール』で説明した生産管理の手法をTOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)と名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立した。その後、博士はTOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与えた。著書に『ザ・ゴール』『ザ・ゴール2』『チェンジ・ザ・ルール!』(いずれも小社刊)などがある。
【訳者略歴】
三本木 亮(さんぼんぎ・りょう)
1960年、福島県出身。早稲田大学商学部卒。米ブリガムヤング大学ビジネススクール卒、MBA取得。在日南アフリカ総領事館(現大使館)領事部、大和證券国際営業部、国際企画部、国際引受部を経て、1992年に渡米。現在、ブリガムヤング大学ビジネススクール国際ビジネス教育研究センター準助教授として教鞭を執るかたわら、日米間の投資事業、提携事業に数多く携わる。翻訳書に、『ザ・ゴール』『ザ・ゴール2』『チェンジ・ザ・ルール!』『実践TOCワークブック』(いずれも小社刊)がある。
【解説者略歴】
津曲公二(つまがり・こうじ)
1948年、鹿児島県出身。東京大学工学部卒。日産自動車㈱で生産技術、利益・原価管理、商品企画などの領域で多くのプロジェクトに参画。現在、㈱ロゴwww.logokk.comにて、クリティカルチェーンによるプロジェクト・マネジメントのセミナー・コンサルティングに従事、同社代表取締役社長。著書(共著)に『PMプロジェクト・マネジメント クリティカル・チェーン』(日本能率協会マネジメントセンター刊)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ゴールドラット,エリヤフ
イスラエルの物理学者。1948年生まれ。彼、独自の生産管理の手法をTOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)と名づけ、その研究や教育を推進する研究所を設立した。その後、TOCを単なる生産管理の理論から、新しい会計方法(スループット会計)や一般的な問題解決の手法(思考プロセス)へと発展させ、アメリカの生産管理やサプライチェーン・マネジメントに大きな影響を与えた
三本木/亮
1960年生まれ。早稲田大学商学部卒。米ブリガムヤング大学ビジネススクール卒、MBA取得。在日南アフリカ総領事館(現大使館)、大和証券を経て、1992年に渡米。現在、ブリガムヤング大学ビジネススクール国際ビジネス教育研究センター準助教授として教鞭を執るかたわら、日米間の投資事業、提携事業に数多く携わる
津曲/公二
1948年生まれ。東京大学工学部卒。日産自動車(株)で、数多くのプロジェクトに参画。現在、(株)ロゴにて、クリティカルチェーンのコンサルティングに従事、同社代表取締役社長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)