栢木本も確かにわかりやすいが、こちらはもっとわかりやすい。
栢木本が基本情報処理技術者の資格取得のハードルを100倍下げたとすると、
こちらは1000倍ハードルを下げたと言える。
栢木本もキタミ本も、それぞれ
「わかりにくい」「ある程度知識がある前提で書かれている」「用語の羅列で辞書のようだ」(栢木本)
「絵がごちゃごちゃしている」「ITパスポートの資格を持っているなら重複する知識も多い」「これだけでは資格はとれない」(キタミ本)
と批判があるが、確かに両者に目を通したところ、あながち間違った指摘ではないと思う。
しかしながら、この両者が情報処理技術者の門戸をより多くの人に開いた功績は、決して否定されるべきではないと思う。
そういった意味で、栢木本もキタミ本も、まず前提として、製本された方々に多大な感謝の意を評するべきではないか。
さて、上記を踏まえてであるが、キタミ本はその特徴の通り絵が多く、しかも面白い。
実際に手にとって目を通してみると、アニメーションが良くできていて自然に楽しめるため、漫画に近い感覚ですぐ手に取りたくなる本だと言える。普通に笑える展開や、クスッとくる部分がある。そのアニメーションの功績もあって、例えるなら、デスノートの複雑な議論の全貌を完全理解するよりも、この本の各章を理解する方がはるかに簡単だと言える。
疲れたら別のページにパラパラ移動して、目に付いた漫画を読んでいるうちに「この章のこの部分は今興味が湧いてきたから、読み進めちゃうか」という勉強の仕方ができる。また、重複するが、漫画と同じような感覚で、自然に手にとってしまいたくなる時がある。そういう意味で、結構自然に勉強を進められる。
主観的ではあるが、文系理系問わず、4大卒の社会人なら無理なく読み進められるように感じた。
また、高校生程度であれば、全くのIT音痴だと厳しいかもしれないが、ITに興味を示している生徒ならサクサク読み進んでしまうのではないかと思う。ということで保護者的な観点から、漫画と一緒に一冊買い与えておくと将来がより楽しみになると思う。ITリテラシーが個々人の仕事の生産性(ひいては将来性)に大きく関与する時代なので、特にこの点は留意したい。
ここであえて栢木本に触れるとすると、
栢木本は確かに前提知識が少しはないと、挫折しかねない構成になっている。ただ、ITに興味がある方であれば、十分読み進んで知識をつけられるようになっていると思う。前提知識がある程度あれば、栢木本も十分非常に優秀なのだと思われる。
栢木本にも読者に配慮した図解が多分にあることはあるが、キタミ本の方が理解の上で効果的な図解を数倍多く含んでいる。
また栢木本は10年以上に渡って改訂・更新されてきているにもかかわらず、少しだけ誤植が見受けられる。やや話が逸れてビジネス的な話になるが、栢木本は、キタミ本がでるまでは、ブルーオーシャンに投入された鉄板商品の立場をおそらく獲得していたため、あぐらをかいていたのだろうと推測される。
さらに話がそれるが、技術革新を起こすキタミ本の出現(技術革新=わかりやすい図解・漫画)が市場(=情報処理資格の勉強本市場)の競争環境を根本から変えてしまう(=新参者が業界変革を起こす)という様相は、IT技術を活かしたベンチャー企業が古い業界や市場を再定義してしまうという、昨今様々な業界・市場で起きつつあるビジネス環境の変化の縮図であるようにも感じた。この指摘も寄与して、栢木本とキタミ本に始まる、ユーザビリティを意識した本のさらなる健全な競争が展開されることを望む。
話がだいぶそれたので、本題のレビュー内容を最後に簡潔にまとめると、
キタミ本・栢木本 → 知識の効率的修得のハードルを大幅に下げた
キタミ本 → 知識の本質的理解のハードルを下げた
キタミ本 → 勉強に取り掛かる(まず本を手に取る)ハードルを下げた
という感じです。
とここまで書いておいてなんですが、まだ資格は獲得していません。本レビューが参考になったという方が多ければ、資格取得後にレビュー更新をしようと思います。
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