本書には、短編「タマンゴ」と中編「カルメン」の2作が収録されている。「カルメン」の方は、言うまでもなくビゼーのオペラ「カルメン」の原作である。原作の方を読んでみると、オペラとは相当ストーリーが異なることが分かる。ミカエラは出てこないし、闘牛士もほとんど役回りがない。
本書に収録された「カルメン」と「タマンゴ」は、物語の設定も登場人物の造型もかなり異なる。しかし重要な点が一致している。第一に「カルメン」はジプシーとバスク民族、「タマンゴ」は黒人という、ともにマイノリティーの物語であること、第二に「カルメン」も「タマンゴ」も主人公の愛の物語だということである。おそらく翻訳者である工藤氏と出版社の何らかのメッセージであろう。
工藤氏の翻訳は現代的でたいへん読みやすく、すぐれている。
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