厚めの上・下巻、しかも翻訳物という事で最後まで読めるかちょっと不安だったのですが、とてもエキサイティングな作品でテンポよく読み通す事ができました(内容だけでなく翻訳の良さもあると思います)。
この作品の描く27世紀の地球には全く新しいインフラがあり、そこには技術の恩恵だけではなく、新しい形の社会格差や貧困、宗教の引き起こすネガティブな問題も存在します。主人公のコヴァッチは特殊部隊上がりでどんな状況にあっても冷静に頭を働かせるタフな男ですが、しかし無敵の主人公ではありません。社会規模の様々な圧力の中で、一人の人間ができることは限られています。こうした苦みのあるリアリズムが、作品をただの「未来世界」のお伽噺ではなく、確かな手触りのあるものにしていると思います。
「肉体と魂を分離」という本作の肝である設定についても、単純な二元論的なアイディアではなく、肉体と感情はある程度相互関係にあるのだという捉え方がされていて、この辺りの解釈は近年のSFらしいなと思いました。
また本作より2年遅れの『虐殺器官』という日本のSFとの共通点を多く感じ、思わず比較しながら読んでしまいました。近未来のシステマティックな傭兵という経歴を持った主人公、精神やイデオロギーを技術的に制御するという発想。革新的な技術と社会の形態に関するややシニカルな洞察。似通った設定と完成度を備えた作品ながら、どこか浮世離れしたナイーブな自己省察が前面に出る『虐殺器官』と本作の姿勢の違いに、洋邦のフィクションの特徴が端的に現れている感じがして面白いです。
SF、ハードボイルド、エンタテインメント、人間ドラマ、どの要素もとても面白く、満足させてくれる作品でした。
オルタード・カーボン(上) (日本語) 文庫 – 2010/3/27
リチャード・モーガン
(著),
田口 俊樹
(翻訳)
-
本の長さ448ページ
-
言語日本語
-
出版社アスペクト
-
発売日2010/3/27
-
ISBN-104757217633
-
ISBN-13978-4757217638
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
27世紀。人類は銀河系の惑星に散らばり、国連の専制支配下にある。魂はデジタル化され、小さなメモリー・スタックに記録されて肉体に埋め込まれている。外側の肉体を乗り換えていけば、永遠の生命を得られるのだ。フィリップ・K・ディック賞受賞、SFハードボイルド・ミステリの傑作が、ついに文庫化。
レビュー
作家 椎名誠 氏
太平洋のまわりを四角を描いてぐるんとまわるような長距離移動の旅の間にすいぶん沢山の本を読んだ。面白いのもあったしそうでないのもあった。
唸ったのは『オルタード・カーボン』だった。数百年単位の未来の話はいろいろ書かれているがこのSF世界は二十七世紀。「たましい」を破壊されないかぎり実質的な不老不死が可能になっている。そういうもの凄い世界を舞台に繰り広げられる予測のまったくつかないハードボイルドアクションだが、時空を越えた純愛偏愛小説、家族小説と読むこともできる。
話の展開はハイテンポで凄絶で、何よりもディテールがきわだっていてグロテスクにリアルなのだ。SFにしかできない強烈なエンターテイメントとはこういう小説を言うのだろう。
かつてジュディス・メリルという人が『SFに何ができるか』という評論を書いたことがあるが、SFはこのようにして完全に新しい世界を描くことができるのだなあ、と旅先で何度も寝不足になりながら感動していた。 --週刊文春4/28号「風まかせ赤マント」2005/04/21
太平洋のまわりを四角を描いてぐるんとまわるような長距離移動の旅の間にすいぶん沢山の本を読んだ。面白いのもあったしそうでないのもあった。
唸ったのは『オルタード・カーボン』だった。数百年単位の未来の話はいろいろ書かれているがこのSF世界は二十七世紀。「たましい」を破壊されないかぎり実質的な不老不死が可能になっている。そういうもの凄い世界を舞台に繰り広げられる予測のまったくつかないハードボイルドアクションだが、時空を越えた純愛偏愛小説、家族小説と読むこともできる。
話の展開はハイテンポで凄絶で、何よりもディテールがきわだっていてグロテスクにリアルなのだ。SFにしかできない強烈なエンターテイメントとはこういう小説を言うのだろう。
かつてジュディス・メリルという人が『SFに何ができるか』という評論を書いたことがあるが、SFはこのようにして完全に新しい世界を描くことができるのだなあ、と旅先で何度も寝不足になりながら感動していた。 --週刊文春4/28号「風まかせ赤マント」2005/04/21
著者について
【著者プロフィール】
リチャード・モーガン Richard Morgan
1965年ロンドン生まれ。イーストアングリア(イングランド東部地方)で育つ。ケンブリッジ大学卒業後、英語講師を経て、本書『オルタード・カーボン』でデビュー。フィリィプ・K・ディック賞を受賞する。その後、タケシ・コヴァッチを主人公とした『ブロークン・エンジェル』(邦訳、アスペクト刊)、『ウォークン・フュアリーズ』(邦訳、アスペクトより刊行予定)など続けざまにヒットを飛ばし、SF作家として地歩を固める。
<日本の読者の皆さんへ>
『オルタード・カーボン』は「人間ドラマ」なんだ。ミステリーでもあり、ラブストーリーとしても読める。ただ、たまたま未来の出来事を扱っているのでSF作品と呼ばれたりもするけどね。『オルタード・カーボン』から何かを感じ取ってもらえれば嬉しい。 リチャード・モーガン
【訳者プロフィール】
田口俊樹 Toshiki Taguchi
1950年奈良市生まれ。早稲田大学英文科卒。都立高校教員などを経て『ミステリマガジン』から翻訳家デビュー。訳書にローレンス・ブロック『八百万の死にざま』(ハヤカワ・ミステリ文庫)、ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)、ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋』(集英社)、トム・ロブ スミス『チャイルド44』(新潮社)、『ブロークン・エンジェル』(アスペクト)など多数。
リチャード・モーガン Richard Morgan
1965年ロンドン生まれ。イーストアングリア(イングランド東部地方)で育つ。ケンブリッジ大学卒業後、英語講師を経て、本書『オルタード・カーボン』でデビュー。フィリィプ・K・ディック賞を受賞する。その後、タケシ・コヴァッチを主人公とした『ブロークン・エンジェル』(邦訳、アスペクト刊)、『ウォークン・フュアリーズ』(邦訳、アスペクトより刊行予定)など続けざまにヒットを飛ばし、SF作家として地歩を固める。
<日本の読者の皆さんへ>
『オルタード・カーボン』は「人間ドラマ」なんだ。ミステリーでもあり、ラブストーリーとしても読める。ただ、たまたま未来の出来事を扱っているのでSF作品と呼ばれたりもするけどね。『オルタード・カーボン』から何かを感じ取ってもらえれば嬉しい。 リチャード・モーガン
【訳者プロフィール】
田口俊樹 Toshiki Taguchi
1950年奈良市生まれ。早稲田大学英文科卒。都立高校教員などを経て『ミステリマガジン』から翻訳家デビュー。訳書にローレンス・ブロック『八百万の死にざま』(ハヤカワ・ミステリ文庫)、ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)、ジョン・ル・カレ『パナマの仕立屋』(集英社)、トム・ロブ スミス『チャイルド44』(新潮社)、『ブロークン・エンジェル』(アスペクト)など多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
モーガン,リチャード
1965年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学卒業後、英語講師を経て、『オルタード・カーボン』でデビュー。フィリップ・K・ディック賞を受賞する
田口/俊樹
1950年奈良市生まれ。早稲田大学英文科卒。『ミステリマガジン』で翻訳家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1965年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学卒業後、英語講師を経て、『オルタード・カーボン』でデビュー。フィリップ・K・ディック賞を受賞する
田口/俊樹
1950年奈良市生まれ。早稲田大学英文科卒。『ミステリマガジン』で翻訳家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : アスペクト (2010/3/27)
- 発売日 : 2010/3/27
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 448ページ
- ISBN-10 : 4757217633
- ISBN-13 : 978-4757217638
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 399,600位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 3,968位SF・ホラー・ファンタジー (本)
- - 8,294位英米文学
- - 8,521位英米文学研究
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2012年8月29日に日本でレビュー済み
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15人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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VINEメンバー
Amazonで購入
時代設定は遠未来。
独自の世界観もあり、濃いSFテイストが味わえます。
が、同時に本格ハードボイルドでもあります。
上巻の残り200ページくらいになり、下巻を一緒に買わなかった事を後悔しました。
序盤は作品の世界観が頭に入ってこなくてもどかしかったですが、序盤を過ぎるとテンポの良さ、メリハリの良さにページをめくる手が早くなりました。
ただ、訳は少し良くはないようには思います。
銃器やメカの言い回しで、水を差される感じを受けました。
独自の世界観もあり、濃いSFテイストが味わえます。
が、同時に本格ハードボイルドでもあります。
上巻の残り200ページくらいになり、下巻を一緒に買わなかった事を後悔しました。
序盤は作品の世界観が頭に入ってこなくてもどかしかったですが、序盤を過ぎるとテンポの良さ、メリハリの良さにページをめくる手が早くなりました。
ただ、訳は少し良くはないようには思います。
銃器やメカの言い回しで、水を差される感じを受けました。
2013年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
みなさんが既に書いているようように、本当にテンポよく読み進めていけます。
そこはもう鉄板。SF的な舞台装置を設えたハードボイルド小説という惹句を
さらに下世話に喩えるなら、中規模スタジオが制作したB級寄りの映画を週刊誌連載
のためにノベライズしたかのような読み易さと各章次幕の惹きっぷりですよ。
逆に稠密緻密なエスエフ世界を求めている方には、ちょっとガックリくる軽さかも
しれないです。スリーヴィング技術が実現して数世紀であるのに、それを社会家族個々
の魂という対象に落とし込んだ際の諸問題は、まるで四半世紀も経たないかのような
イメージで描かれていますし、カソリック信徒の件ももう少し掘り下げてもおもしろ
かったんじゃないかなーと、やや食い足りない思いです。
まあ、もとより“そういうおはなし”じゃないわけで、モーガン氏は敢えて表層的に
扱ったのでしょうから、エスエフ好っきーな人は事前にそっち方向の期待感を下げて
おくと楽しく読めますよ。27世紀(23〜4じゃなく)の地球(外宇宙の植民世界ではない)
という舞台設定も、技術進度や風俗変遷の交錯っぷりを曖昧にしておくためなのかもしれませんね。
おもしろ小説のデキとしては、主人公の危機ゲージを大きく取り過ぎちゃってて
そこから脱する経緯がちょっと御都合主義に感じられ、リアルデスと肉体のみの損壊
そしてバーチャルでの苦痛というように暴力の結果に段階を設けているぶん、もう幾分なりと
バランスに気を配って欲しかったかなーというのが本当のところ。
僕にとって一番良かったところは、主人公の全周モテっぷりが自然なところですね。
(以下ネタバレ風味)
シリーズが続けばどこかで出てきそうだけど、トレップちゃんが一番好きですね。
セックスしてないのかな。メトセラ夫妻のイメージはきっとアルトマン版のロンググッドバイが
近いのでしょうけど、僕の脳内では木の実ナナ&古谷一行のオレゴン組か南田洋子&長門裕之の
リアル婚組が交替で演じていました。
あー、あと気になるところとしては翻訳ですね。技術的軍事的なタームの選び方が
少しズレてるように感じましたし、わかりやすい例としても“石油ライター”にはビックリでしたね。
そこはオイルライターでよいのでは? 27世紀なのに着火デバイスに化石燃料を使ってる
というアピールなんでしょうかね?バイオ燃料かもしれないのにw
“レヴェル”とか“サーヴィス”とか、ハーネスらしきとこを“装帯”とする等、何か翻訳者独自の
基準がありそうなので、単に僕が汲取れていないのかもしれませんけど。
そこはもう鉄板。SF的な舞台装置を設えたハードボイルド小説という惹句を
さらに下世話に喩えるなら、中規模スタジオが制作したB級寄りの映画を週刊誌連載
のためにノベライズしたかのような読み易さと各章次幕の惹きっぷりですよ。
逆に稠密緻密なエスエフ世界を求めている方には、ちょっとガックリくる軽さかも
しれないです。スリーヴィング技術が実現して数世紀であるのに、それを社会家族個々
の魂という対象に落とし込んだ際の諸問題は、まるで四半世紀も経たないかのような
イメージで描かれていますし、カソリック信徒の件ももう少し掘り下げてもおもしろ
かったんじゃないかなーと、やや食い足りない思いです。
まあ、もとより“そういうおはなし”じゃないわけで、モーガン氏は敢えて表層的に
扱ったのでしょうから、エスエフ好っきーな人は事前にそっち方向の期待感を下げて
おくと楽しく読めますよ。27世紀(23〜4じゃなく)の地球(外宇宙の植民世界ではない)
という舞台設定も、技術進度や風俗変遷の交錯っぷりを曖昧にしておくためなのかもしれませんね。
おもしろ小説のデキとしては、主人公の危機ゲージを大きく取り過ぎちゃってて
そこから脱する経緯がちょっと御都合主義に感じられ、リアルデスと肉体のみの損壊
そしてバーチャルでの苦痛というように暴力の結果に段階を設けているぶん、もう幾分なりと
バランスに気を配って欲しかったかなーというのが本当のところ。
僕にとって一番良かったところは、主人公の全周モテっぷりが自然なところですね。
(以下ネタバレ風味)
シリーズが続けばどこかで出てきそうだけど、トレップちゃんが一番好きですね。
セックスしてないのかな。メトセラ夫妻のイメージはきっとアルトマン版のロンググッドバイが
近いのでしょうけど、僕の脳内では木の実ナナ&古谷一行のオレゴン組か南田洋子&長門裕之の
リアル婚組が交替で演じていました。
あー、あと気になるところとしては翻訳ですね。技術的軍事的なタームの選び方が
少しズレてるように感じましたし、わかりやすい例としても“石油ライター”にはビックリでしたね。
そこはオイルライターでよいのでは? 27世紀なのに着火デバイスに化石燃料を使ってる
というアピールなんでしょうかね?バイオ燃料かもしれないのにw
“レヴェル”とか“サーヴィス”とか、ハーネスらしきとこを“装帯”とする等、何か翻訳者独自の
基準がありそうなので、単に僕が汲取れていないのかもしれませんけど。
2017年1月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読まないと損です。近年のSF作品の中では群を抜いて傑作です。
なんとか賞をやたら受賞しているけれど肝心の中身がさっぱりという
意味不明の作品や過去の作品を出版社側の誇大とも言える売り文句で
飾り立てて必死に再販しようとしてるけれど作品自体が時代錯誤でさっぱり
という、そんな怪しい作品とは別次元です。
わかり易く言うとスキゾマトリックス、ニューロマンサー、ブレードランナーや
マトリックスの世界観なんですが、時間と距離の物差しがケタ違いで、
主人公を含め登場人物達は意識をデータチップに保存されているから、
何度もスリーブと言う肉体を交換して何世紀にもわたって生きている。
本作では、全宇宙が恐れる特殊能力を身に付けた元軍人でドロップアウト
して宇宙を彷徨っている主人公が権力を持った上層階級の人物から仕事を
依頼され、非合法をいとわない探偵として活躍します。
裏切り、戦闘、セックス、ドラック、酒がハードボイルド調で語られていく作風で
訳が達者だからとても読みやすい。観念的で哲学的で理解至難でややこしい
設定はありませんし、長ったらしい状況説明も無い。
日本に関わる物事も多く親近感も湧きます。
主人公が「タケシ・コヴァッチ」と言うくらいですから、作者は日本に関しての
洞察がとても深いんですね。
本作以降、「ブロークンエンジェル」と「ウォークン・フュアリーズ」が出ていますが
出版順に読まなくてもいいと思います。されど世界観を理解するためには本作から
手に取ることをお薦めします。
なんとか賞をやたら受賞しているけれど肝心の中身がさっぱりという
意味不明の作品や過去の作品を出版社側の誇大とも言える売り文句で
飾り立てて必死に再販しようとしてるけれど作品自体が時代錯誤でさっぱり
という、そんな怪しい作品とは別次元です。
わかり易く言うとスキゾマトリックス、ニューロマンサー、ブレードランナーや
マトリックスの世界観なんですが、時間と距離の物差しがケタ違いで、
主人公を含め登場人物達は意識をデータチップに保存されているから、
何度もスリーブと言う肉体を交換して何世紀にもわたって生きている。
本作では、全宇宙が恐れる特殊能力を身に付けた元軍人でドロップアウト
して宇宙を彷徨っている主人公が権力を持った上層階級の人物から仕事を
依頼され、非合法をいとわない探偵として活躍します。
裏切り、戦闘、セックス、ドラック、酒がハードボイルド調で語られていく作風で
訳が達者だからとても読みやすい。観念的で哲学的で理解至難でややこしい
設定はありませんし、長ったらしい状況説明も無い。
日本に関わる物事も多く親近感も湧きます。
主人公が「タケシ・コヴァッチ」と言うくらいですから、作者は日本に関しての
洞察がとても深いんですね。
本作以降、「ブロークンエンジェル」と「ウォークン・フュアリーズ」が出ていますが
出版順に読まなくてもいいと思います。されど世界観を理解するためには本作から
手に取ることをお薦めします。
2018年12月23日に日本でレビュー済み
以前読んだとき、割と面白かったのと敵のラスボス、レイリーン・カワハラがカッコ良かったのが印象に残ってました.今年になってネットフリックスでの実写版を観たのですが、これが傑作!何度も繰り返して楽しんだので、こんな話だったっけ?と思って再読しました.上下巻合わせて900頁近い大作で、最初の300頁ぐらいはかなりまだるっこしいのですが、主人公が自分を拷問にかけた連中に殴り込みをかけるあたりから俄然面白くなり、後は一気読み.楽しめました.実写版では登場人物の基本設定が一部かなり改変されており、正直、実写版の方がドラマチックかつ深みが伝わる仕上がりではないかと思うのですが、それらの源泉が本作にあるのは間違いないですし、実写版での俳優達(小説からイメージされる容貌とはちょっと異なりますがそれも一興)や尖った映像を思い浮かべながら小説版を読むのもなかなか楽しいです.ブレードランナーや攻殻機動隊、ニューロマンサーやR.チャンドラーの小説がお好きな方にはお勧めです(下巻もレビューします).
2010年9月7日に日本でレビュー済み
先日、旅行に出かける前、衝動的にジャケ買い?してしまいました。
とは言っても、書店で見かけて、はじめの3行くらいは読んだのですが…その3行だけで、真夏の熱気でぼーっとした頭の中が、一気に27世紀の地球?に連れて行かれました。旅行中には上巻の1/4くらいしか読めなかったのですが、旅行から帰りに、同じ書店で下巻も購入しました。
ストーリーの奥底にあるものまではまだ見えていませんが、体の移しかえ、魂(ソウル)の移しかえ、という理屈は、日本のアニメ「カイバ」が、真似をしたのかな?また、現代の自分自身(トレーニングをして、カラダを磨いたつもり…そのカラダはあたかも魂が移しかえられたよう…、また、最近、ケガをして、そこから再始動しようとしている自分…)に通じるものがあり、感情移入し易かったです。
既にジョエル・シルバー氏(マトリックスの制作者)が映画化権を取得(100万ドル?)との事。映画も楽しみですが、それ以前に、上下巻でこの文庫本を読んで、自分の頭の中を27世紀の世界に連れて行く、事のほうが有意義ではないかな?とも思います。
とは言っても、書店で見かけて、はじめの3行くらいは読んだのですが…その3行だけで、真夏の熱気でぼーっとした頭の中が、一気に27世紀の地球?に連れて行かれました。旅行中には上巻の1/4くらいしか読めなかったのですが、旅行から帰りに、同じ書店で下巻も購入しました。
ストーリーの奥底にあるものまではまだ見えていませんが、体の移しかえ、魂(ソウル)の移しかえ、という理屈は、日本のアニメ「カイバ」が、真似をしたのかな?また、現代の自分自身(トレーニングをして、カラダを磨いたつもり…そのカラダはあたかも魂が移しかえられたよう…、また、最近、ケガをして、そこから再始動しようとしている自分…)に通じるものがあり、感情移入し易かったです。
既にジョエル・シルバー氏(マトリックスの制作者)が映画化権を取得(100万ドル?)との事。映画も楽しみですが、それ以前に、上下巻でこの文庫本を読んで、自分の頭の中を27世紀の世界に連れて行く、事のほうが有意義ではないかな?とも思います。
ベスト1000レビュアーVINEメンバー
スリーブと呼ばれる体を取り換えて生きることのできる未来。もとエンヴォイと言う特殊部隊に所属していた主人公タケシ・コヴァッチが、ある殺人事件の謎を解いていく。婦人刑事のオルテガと共に、時に派手な銃撃戦を展開しながら、謎に迫っていく過程は飽きない。難解な部分も数多くあるが、SFミステリーの分野では出色の出来ではないだろうか。2010年7月には、第三作目「Woken furies」が刊行される予定(第二作目は刊行済み)。しかし、第三作目の原作は2005年に刊行されており、翻訳に5年もかかるのは我慢ならない。もう少し早く刊行できないのか、と素朴な疑問を抱く。