この作品の一押しは、何といっても映像だ。長回しによる風景と人間ドラマの融合、大きめの鏡を使った被写体のコントラスト、この辺りは観ているとドキドキするような感覚が伝わる。詐欺師的な小説家タイヴィアン(スタンリー・ベイカー)が部屋で思案しながらウロウロするのをあざ笑うかのように無関心なエヴァ(ジャンヌ・モロー)が鏡に映し出されていたり、鏡の使い方が面白い。
もう一つの魅力はジャンヌ・モロー演じるエヴァだろう(どこか加賀まり子的な雰囲気もある)。クライマックスで、タイヴィアンの妻フランチェスカと自宅で遭遇するシーンはエヴァに悪魔が降臨したようなオーラが発せられている。でも、ジャンヌ・モローのエヴァは随所に可愛さも見せるところも憎い。ピョンピョン飛び跳ねるように歩き自宅へ向かうシーンは観る者の感性をくすぐる可愛さを表現しているし、気に入らない物を次々捨ててしまうシーンはわがままな女という感覚もあるが、自由奔放な可愛いさが伝わってくる。
そんな、ジャンヌ・モローの魅力を十二分に表現した作品だが、ストーリー展開は説明不足な点も多い。エヴァが人妻なのか、高級娼婦なのか、フランチェスカとの結婚と死別のくだりなどはばっさり切られているような気がする。制作のアキム兄弟との編集や音楽での対立が影響したのかもしれない。
音楽はミッシェル・ルグランのオリジナル曲も良いが何といってもエヴァの悪女ぶりを盛り上げるビリー・ホリデーの「Willow Weep For Me(柳よ泣いておくれ)」は最高の選曲だと思う。映像、音楽、配役は最高なのだが、展開がいま一つなのが残念だった。
とはいえ、ジョセフ・ロージーの秀作であることは間違いない。
スタンリー・ベーカーは「大列車強盗団」や「ナバロンの要塞」に出演していてアクション俳優とばかり思っていたが、イギリスの個性派俳優でこの作品でもどうしようもない男を見事に演じていて最高だった。
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