連作短編の読み易い形式、2巻完結の手頃な長さ、見事に立った各キャラクター等個人的には伊藤伸平さんの最高傑作だと思っています。
特に見せ掛けの誠意でしか他人と接し得ない、心の中の闇には本人も無自覚で(明らかに惑星の存亡規模の危険な密命を帯びている)はっきり言って馬鹿で性格の悪いヒロイン「ユリエル」が実に良く、これは作者も会心だったらしく、単行本1巻のあとがきで誕生の経緯を述べておられます。ここまで愚かで狡猾な人物像は漫画界でも珍しいのではないでしょうか。
おなじく成り行きでユリエルと「出来てしまう」主役の刑事早田が自分の利益の為には他人をどんな目に合わしてもまったく反省心をもたずに居られるサイコパス(でも結構色男)として描かれているのが酷くも面白く、女性の尻を見詰める彼の内部からは危険なモーター音が聴こえるようです。
後どんなにひどい目に会い、入退院を繰り返しても、必ず職場(警察)に戻ってくる早田の後輩「東刑事」にはハリー・キャラハンでさえも最後は首を捻ってしまうでしょう。
過去の映画、アニメ、漫画、小説、ゲームを作者のひねくれた視点で処理し、主人公の堕天使の破壊的行動一点に結びつけている作話力も外れなしです。
ともかく笑いながら読んでいくうちに、ユリエルの抱く秘密の怖さが強まり、いつしかゾっとしてくる終わりの始まりを描いた見事な漫画です。最終エピソードを読み、なるほどと思える人は全員では無いにしてもです。
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