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エイズの起源 単行本 – 2013/7/6
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1981年6月。米国疾病管理予防センター発行『疫病週報』の短信が特異な肺炎5例を報じた。
のちに数千万人の死者を出すことになる後天性免疫不全症候群(エイズ)認知の第一歩である。
以降、現代最悪のパンデミックをもたらしたこの感染症については夥しい文献が書かれたが、
1981年以前の出来事を扱った本はほとんどない。一体何があったのか? ウイルスはどこ
から来たのか? 感染はなぜ拡大したのか? 本書は謎の最も核心に迫った決定版である。
それは1921年頃の中部アフリカで始まった。一握りの人に感染したチンパンジーのサル免疫
不全ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)となる。当時アフリカ大陸を植民地化していた
ヨーロッパ列強は熱帯病に苦慮しており、皮肉なことにその対策としての医療が感染を広げる
結果となった。貧困による異常な売春がこれに拍車をかける。その後ウイルスはカリブ海へ。
運んだのはおそらく「たった一人」のハイチ人だった。そこで爆発的流行を可能にした拡大装置とは
何だったか。米国は目と鼻の先である。汎世界的流行はここから始まった。
植民地政府の公文書、凍結血液サンプル、疫学、ウイルス学、分子生物学、人口統計。
あらゆる証拠から謎ときパズルのピースが次々はまってゆく。ヒト社会と感染症の関係を考察する
上で欠かせない一冊。CHOICE Outstanding Academic Title賞、2011年ラジオカナダ科学賞受賞作。
のちに数千万人の死者を出すことになる後天性免疫不全症候群(エイズ)認知の第一歩である。
以降、現代最悪のパンデミックをもたらしたこの感染症については夥しい文献が書かれたが、
1981年以前の出来事を扱った本はほとんどない。一体何があったのか? ウイルスはどこ
から来たのか? 感染はなぜ拡大したのか? 本書は謎の最も核心に迫った決定版である。
それは1921年頃の中部アフリカで始まった。一握りの人に感染したチンパンジーのサル免疫
不全ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)となる。当時アフリカ大陸を植民地化していた
ヨーロッパ列強は熱帯病に苦慮しており、皮肉なことにその対策としての医療が感染を広げる
結果となった。貧困による異常な売春がこれに拍車をかける。その後ウイルスはカリブ海へ。
運んだのはおそらく「たった一人」のハイチ人だった。そこで爆発的流行を可能にした拡大装置とは
何だったか。米国は目と鼻の先である。汎世界的流行はここから始まった。
植民地政府の公文書、凍結血液サンプル、疫学、ウイルス学、分子生物学、人口統計。
あらゆる証拠から謎ときパズルのピースが次々はまってゆく。ヒト社会と感染症の関係を考察する
上で欠かせない一冊。CHOICE Outstanding Academic Title賞、2011年ラジオカナダ科学賞受賞作。
- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2013/7/6
- ISBN-104622077787
- ISBN-13978-4622077787
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商品の説明
出版社からのコメント
内容(「BOOK」データベースより)
アフリカの植民地化、未開地医療、貧困、売血と売春。文明の裏面史を追うようにウイルスは誕生し蔓延した。最新の科学的知見と歴史学が解くパンデミックの謎。CHOICE Outstanding Academic Title賞、2011年ラジオカナダ科学賞受賞作。
著者について
ジャック・ペパン
Jacques Pepin
カナダ・ケベック州のシャーブルック大学医学部教授。微生物学感染症学科長。同大学国際保健センター所長。1984年よりアフリカで感染症の研究に取り組み、3年にわたって世界保健機関の熱帯病調査団を率いた。その後1988年よりエイズの研究に転じる。2002に開始したクロストリジウム・デフィシレに関する共同研究は米国感染症学会最優秀論文賞を受賞。
訳者略歴
山本太郎
〈やまもと・たろう〉
1990年長崎大学医学部卒業。東京大学大学院医研究科博士課程国際保健学修了。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、及び外務省勤務等を経て現在長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授。
著書に『ハイチ――いのちとの闘い』(昭和堂)『感染症と文明』(岩波新書)『新型インフルエンザ』(岩波新書)他。
Jacques Pepin
カナダ・ケベック州のシャーブルック大学医学部教授。微生物学感染症学科長。同大学国際保健センター所長。1984年よりアフリカで感染症の研究に取り組み、3年にわたって世界保健機関の熱帯病調査団を率いた。その後1988年よりエイズの研究に転じる。2002に開始したクロストリジウム・デフィシレに関する共同研究は米国感染症学会最優秀論文賞を受賞。
訳者略歴
山本太郎
〈やまもと・たろう〉
1990年長崎大学医学部卒業。東京大学大学院医研究科博士課程国際保健学修了。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、及び外務省勤務等を経て現在長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授。
著書に『ハイチ――いのちとの闘い』(昭和堂)『感染症と文明』(岩波新書)『新型インフルエンザ』(岩波新書)他。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ペパン,ジャック
カナダ・ケベック州のシャーブルック大学医学部教授。微生物学感染症学科長。同大学国際保健センター所長。1984年よりアフリカで感染症の研究に取り組み、3年にわたって世界保健機関の熱帯病調査団を率いた。その後1988年よりエイズの研究に転じる。2002に開始したクロストリジウム・ディフィシルに関する共同研究では、米国感染症学会最優秀論文賞を受賞
山本/太郎
1990年長崎大学医学部卒業。東京大学大学院医研究科博士課程国際保健学修了。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、および外務省勤務等を経て現在長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カナダ・ケベック州のシャーブルック大学医学部教授。微生物学感染症学科長。同大学国際保健センター所長。1984年よりアフリカで感染症の研究に取り組み、3年にわたって世界保健機関の熱帯病調査団を率いた。その後1988年よりエイズの研究に転じる。2002に開始したクロストリジウム・ディフィシルに関する共同研究では、米国感染症学会最優秀論文賞を受賞
山本/太郎
1990年長崎大学医学部卒業。東京大学大学院医研究科博士課程国際保健学修了。京都大学、ハーヴァード大学、コーネル大学、および外務省勤務等を経て現在長崎大学熱帯医学研究所・国際保健分野主任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2013/7/6)
- 発売日 : 2013/7/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 400ページ
- ISBN-10 : 4622077787
- ISBN-13 : 978-4622077787
- Amazon 売れ筋ランキング: - 237,314位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 544位医学
- - 34,754位暮らし・健康・子育て (本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.9
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年5月30日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
コロナ感染症拡大の時期であり、人類とウイルスの戦いの歴史を大変興味深く読むことができました。結局、ウイルスは人類自らが森林の奥地や未開の地から文明の地に持ち込んだことが原因であり、人類自身の身から出た錆、自業自得とも言えますね。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2013年7月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本には、現在人類最大の感染症であるHIVがいかに発生し、世界各地に伝播したかを綴っている。筆者の個人的思い込みを極力排除し、古い文献を根拠としている点が秀逸である。不明であやふやな面は、正直に謎、もしくははっきりしていないと記載している。丁寧に注意深く歴史を綴っているため、信頼の置けるものであった。専門的内容が包括しているにもかかわらず、翻訳がスムーズで、私にとっては大変読みやすいものであった。
病原体に関して詳しく書いているに加えてアフリカの歴史を背景として記載するなど、アフリカがどのような歴史をたどってきたかを知る貴重な資料であると感じた。
病原体に関して詳しく書いているに加えてアフリカの歴史を背景として記載するなど、アフリカがどのような歴史をたどってきたかを知る貴重な資料であると感じた。
2018年8月29日に日本でレビュー済み
中央アフリカの地方病的な類人猿由来のウイルス感染症がいかにして世界中に拡大し2500万人の命を奪うまで流行したのか。そのプロセスがくっきりとわかる名著です。
アフリカが近代化し都市化が始まると労働者男性の都市集中がおこり、それが売春の隆盛を引き起こし辺境の感染症が一気に拡大します。時期を同じくして、アフリカ諸国の独立をめぐる政治的混乱のなかでハイチやアンゴラからの人材支援の人々が中央アフリカと母国を往復したことが、地域から世界への拡散につながりました。さらにハイチがアメリカの性的リゾートであったこと、中米の血液製剤産業が増幅装置となったこと、などなど。
医療用血液製剤がからんだところはC型肝炎の拡大とも似た構図です。中国などに比べて、日本でエイズ感染が小規模にとどまったのは肝炎問題が先行したことで売血が禁止されていたからだとも言えるでしょう。
世界史的な政治・経済がからむ感染症エイズ!「エイズを弄ぶ人々」も関連して面白い。
アフリカが近代化し都市化が始まると労働者男性の都市集中がおこり、それが売春の隆盛を引き起こし辺境の感染症が一気に拡大します。時期を同じくして、アフリカ諸国の独立をめぐる政治的混乱のなかでハイチやアンゴラからの人材支援の人々が中央アフリカと母国を往復したことが、地域から世界への拡散につながりました。さらにハイチがアメリカの性的リゾートであったこと、中米の血液製剤産業が増幅装置となったこと、などなど。
医療用血液製剤がからんだところはC型肝炎の拡大とも似た構図です。中国などに比べて、日本でエイズ感染が小規模にとどまったのは肝炎問題が先行したことで売血が禁止されていたからだとも言えるでしょう。
世界史的な政治・経済がからむ感染症エイズ!「エイズを弄ぶ人々」も関連して面白い。
2014年3月13日に日本でレビュー済み
HIVウィルス伝搬に寄与したと思われる出来事が一つ一つ精査され、世界的流行の真相が明らかにされていく。その過程は医学的知識や世界史に疎い人でも分かり易く、歴史ミステリーのように読み進められます。
本書の大まかな流れを言うと、現代から遡ってエイズの起源を探るのではなく、起源から現代にいたるまでの過程が一つの物語のように書かれています。そのような進行なので、解き明かすべき謎の核と思われた「エイズの起源」に関しては早々に明らかになります。
それではなぜ題名が「エイズの起源」なのか。
その理由は約100年にわたるHIVウィルス伝搬の全てが明らかになった時に帰結します。
ところで、HIVウィルスはその構造から10種類以上のサブタイプというものに分類され、それぞれにサブタイプA、サブタイプBなどと名付けられているそうです。ある地域でHIVの感染がはじまった時、流行するのは最初にその地域に持ち込まれたサブタイプになるので、サブタイプを調べることで何処からその地域にウィルスが持ち込まれたのかが推測できます。
本書ではそういった手法を併用してエイズの起源を明らかにしていきます。アフリカを中心に1960年代にまでさかのぼって血液標本のデータ洗い出す試みもみられます。ところが、日本の流行に関しては一言も触れられていません。起源を探るうえでその必要がなかったということもあるのでしょうが、それ以前に私が調べてみたところ日本のサブタイプのデータは2003年以降しか公開されていないようです。
これが日本と海外のHIVに対する認識の違いなのでしょう。日本人にとって本書は日本がエイズ後進国であることを再認識させられる本でもあります。
本書の大まかな流れを言うと、現代から遡ってエイズの起源を探るのではなく、起源から現代にいたるまでの過程が一つの物語のように書かれています。そのような進行なので、解き明かすべき謎の核と思われた「エイズの起源」に関しては早々に明らかになります。
それではなぜ題名が「エイズの起源」なのか。
その理由は約100年にわたるHIVウィルス伝搬の全てが明らかになった時に帰結します。
ところで、HIVウィルスはその構造から10種類以上のサブタイプというものに分類され、それぞれにサブタイプA、サブタイプBなどと名付けられているそうです。ある地域でHIVの感染がはじまった時、流行するのは最初にその地域に持ち込まれたサブタイプになるので、サブタイプを調べることで何処からその地域にウィルスが持ち込まれたのかが推測できます。
本書ではそういった手法を併用してエイズの起源を明らかにしていきます。アフリカを中心に1960年代にまでさかのぼって血液標本のデータ洗い出す試みもみられます。ところが、日本の流行に関しては一言も触れられていません。起源を探るうえでその必要がなかったということもあるのでしょうが、それ以前に私が調べてみたところ日本のサブタイプのデータは2003年以降しか公開されていないようです。
これが日本と海外のHIVに対する認識の違いなのでしょう。日本人にとって本書は日本がエイズ後進国であることを再認識させられる本でもあります。
2013年11月8日に日本でレビュー済み
ベルギー領コンゴーの植民政策、男女の割礼、ずさんな医療行為、独立直後のハイチからの支援組織と感染者の帰国、ハイチの米国向けの売血事業などがエイズ拡散の経路と推定している。
バブル期の日本政府の強い推薦でWHO事務局長になった中島宏は組織の活動阻害の張本人として評価は低い(p.310)、しょせん日本政府の途上国援助を前提とした政策が原因であろう。
非常に広範囲に熱帯医療の実態を詳細に記述しているが、もう少しコンパクトに纏めるべきであった。
バブル期の日本政府の強い推薦でWHO事務局長になった中島宏は組織の活動阻害の張本人として評価は低い(p.310)、しょせん日本政府の途上国援助を前提とした政策が原因であろう。
非常に広範囲に熱帯医療の実態を詳細に記述しているが、もう少しコンパクトに纏めるべきであった。
ベスト1000レビュアー
著者は熱帯医学を専門とする医師であるが、本書は、医学的な視点だけでなく、社会学的視点も包含した、エイズ(後天性免疫不全症候群)という極めて厄介な感染症の歴史である。エイズが広く世界で認識されたのは、1981年6月に、米国疾病管理予防センター(CDC)発行の週報で、男性同性愛者に見られる免疫不全に伴う肺炎症例を5例報告した時だった。その後30年間で2900万人以上がエイズで死亡し、1600万人以上の遺児が残され、さらに3300万人以上がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染しているとのことである(2009年時点)。本書は、このように歴史上も稀なパンデミックをもたらしたエイズの起源を辿る旅の物語である。
HIVの先祖は、もともと中部アフリカのチンパンジーに生息していたウイルスであった。本書によれば、様々な傍証を積み重ねると、20世紀初めに狩猟者を通じて、HIVはヒトへと種を越えて感染したと推定される。その後、植民地された中部アフリカにおける激しい社会変化とそれに伴う人の移動や売春の横行により、アフリカ人を中心としてエイズは広がっていった。その際に、植民地の宗主国が行っていた医療活動(特に減菌しない注射器の使い回し)でエイズ拡大が加速されたらしいのは、何とも皮肉なことである。
アフリカ外へのエイズ拡大は、1960年代に中部アフリカに出稼ぎに行った多くのハイチ人うちの1人が感染し、1966年頃帰国した後、売春や同性愛を通じてハイチ国内やアメリカ人旅行者に瞬く間に広がっていったことによる。この後はアメリカでの爆発的な流行が始まり、1981年のエイズ「正式認知」につながっていく。本書を読んで痛感するのは、エイズの裏側に常にあるのは、植民地とその野放図な開発、それにともなう貧困化した農民や狩猟民の都市流入、売春や薬物濫用、貧困な医療、人種差別などであり、言い換えるとグローバリズムそのものである、という事実である。この流れは、いまだ歯止めが掛かっているようには見えず、むしろ悪化しているようにさえ思われる。
本書は、エイズという悪疫の背後にある文明的側面を鋭く描き出しており、その筆致は推理小説をも思わせるほどである。また、その視点は広く、医学的視点を越えている。日本のエイズ薬害事件も、利益至上主義の製薬企業が、グローバルに利益確保の機会を捉えた結果と理解することができる。
HIVの先祖は、もともと中部アフリカのチンパンジーに生息していたウイルスであった。本書によれば、様々な傍証を積み重ねると、20世紀初めに狩猟者を通じて、HIVはヒトへと種を越えて感染したと推定される。その後、植民地された中部アフリカにおける激しい社会変化とそれに伴う人の移動や売春の横行により、アフリカ人を中心としてエイズは広がっていった。その際に、植民地の宗主国が行っていた医療活動(特に減菌しない注射器の使い回し)でエイズ拡大が加速されたらしいのは、何とも皮肉なことである。
アフリカ外へのエイズ拡大は、1960年代に中部アフリカに出稼ぎに行った多くのハイチ人うちの1人が感染し、1966年頃帰国した後、売春や同性愛を通じてハイチ国内やアメリカ人旅行者に瞬く間に広がっていったことによる。この後はアメリカでの爆発的な流行が始まり、1981年のエイズ「正式認知」につながっていく。本書を読んで痛感するのは、エイズの裏側に常にあるのは、植民地とその野放図な開発、それにともなう貧困化した農民や狩猟民の都市流入、売春や薬物濫用、貧困な医療、人種差別などであり、言い換えるとグローバリズムそのものである、という事実である。この流れは、いまだ歯止めが掛かっているようには見えず、むしろ悪化しているようにさえ思われる。
本書は、エイズという悪疫の背後にある文明的側面を鋭く描き出しており、その筆致は推理小説をも思わせるほどである。また、その視点は広く、医学的視点を越えている。日本のエイズ薬害事件も、利益至上主義の製薬企業が、グローバルに利益確保の機会を捉えた結果と理解することができる。