女性ヴォーカルは好きなジャンルだったが、ここしばらく新しいCDを買っていなかった。
シャーデーなどを聴き倒していたが、彼女も「Lovers Rock」あたりから変わってしまったし。
最近は女性ジャズピアニストのイリアーヌや、坂本龍一『CASA』あたりをよく聴いていた。
このG・アンダースのアルバムには、アマゾンのリコメンドで出会ったので、予備知識ゼロ。
他のレビュアーの方も書いているように、ジャケットから漂ってくるただならぬ気配と、
試聴したときのサウンドの感触で購入。到着したCDをかけて、それが正しい選択であったことを知る。
1曲目は、『Love Deluxe』の頃のシャーデーを思わせるサウンドで、何度聴いても気持ちよい。
自分的にはストライクゾーンのど真ん中。2曲目になると、ブラジリアン・テイストの歌唱が
絶妙なアレンジに乗って届けられる。この1曲目との落差が、セクシーなほどここち良い。
5曲目はロバータ・フラックのカヴァー、6曲目はレゲエ、7曲目は揺れ動くメロディーが印象的な曲、
8曲目はスペイン語曲。アコースティック・ギターの間奏、”ああ、本当に最高だ”と胸の中で声がする。
これらのまったく異なる曲調を、見事に歌いこなしていく彼女の声質と歌唱。
しかもこれらの曲の多くを彼女は自作している。
こんな調子で、曲はどんどん進んでいく。曲ごとに最適なソロ楽器(トランペット、ソプラノ・サックスなど)
が選ばれ、アレンジもプロデュースもほぼ完璧。アルバム全体にまぶされたスキャットもいい味。
久しぶりに出会った、女性ヴォーカルアルバムの名作。ホントにうれしい掘り出しもの。