まず2019年5月、福島香織氏が約20年ぶりにカシュガル(新疆ウイグル自治区カシュガル市)を訪れたことが書かれている。20年ぶりに訪れたカシュガルは、完全に中国の町になっていた。中国語が普通に通じ、至る所に共産党の標語、スローガンの垂れ幕があった。
そして警察官がやたらと増えていた。ホテルに到着すると、防刃チョッキを着た女性警官に出迎えられ、荷物と身体チェックを受けた。空港にあるようなX線の透過装置と金属探知機のゲートが入り口に設置され、必ずチェックを受けなければならない。ホテルだけでなく、スーパーも地下道も、ショッピングモールも必ず出入り口でX線による安全検査と金属探知ゲートによるチェックを求められた。
また市内のあちこちに、日本の交番に当たる「便民警務ステーション」があり、その数は、東京の繁華街のコンビニ以上の密度である。更に監視カメラが数十mに数個の割合で設置されていた。
カシュガルはどこもかしこも美しかったが、人々に笑顔はなく、全部作り物のようだった。そこに住んでいるウイグル人たちは異常な緊張感の中で怯えながら暮らしている。ウイグルの町は、ウイグル人にとっては巨大な監獄なのである。
2018年8月にジュネーブで開かれた国連人種差別撤廃委員会では、最大200万人規模のイスラム教徒が中国で強制収容施設に入れられて再教育を受けている、と報告された。「再教育施設」とは、ウイグル人から尊敬と信仰と伝統と文化を奪い、ウイグル人そのものを中国人に改造する非人道的施設である。
その「再教育施設」に収容されたのち、奇跡の生還を果たしたウイグル出身のカザフスタン人の生々しい体験談が報告されている。連日拷問を受け続け、体重は半分に減り、多くの仲間が消えていった。彼が釈放されたのは、カザフスタン国籍を持つ社会的地位のある人間であったことが大きい。しかし、彼の両親、親戚ら13人は強制収容所に送られ、彼の父親は収容所で死亡したという。
この「再教育施設」が登場したのは、2014年4月、習近平が国家主席となって初めて新疆ウイグル自治区を視察した際、ウルムチ南駅近くを訪れた直後に爆破テロ事件が起きたことがきっかけだった。習近平は自分を狙った暗殺未遂だと怖れおののき、この時、ウイグル人への強い恐怖と憎しみを植え付けられたという。この体験が「ウイグル人に対しては徹底的な思想教育が必要」という認識に至り、「イスラム教の中国化」「ウイグル人の思想再教育」を強く推し進めたのである。
2014年7月、まず地域の共産党員、共青団員、公務員に対して、イスラム教の信仰禁止、ラマダンへの参加禁止、モスクでの礼拝禁止の徹底が通達された。その制度のターゲットは間もなく一般ウイグル庶民に広がり、2016年8月に新疆ウイグルの書記に”陳全国”が就任してから、再教育施設は急速に拡大した。彼が習近平に気に入られたのは、チベット弾圧の成果を評価されてのことだという。
陳全国の対ウイグル政策は、対チベット以上の苛烈さだった。イスラム教徒であるウイグル人が普通に信仰の自由を行使して、イスラム教の習慣に則った結婚や葬儀や子供の教育を行ったり、豚肉を食べることを拒否したり、ベールを被ったり髭を蓄えたりすれば、過激化しているとのレッテルを貼られ、再教育施設送りになり、財産を没収されるのである。
陳は更に、地域全体を網羅するようなインターネット監視網を構築し、ウイグル人の私生活にまで踏み込んでいった。住民は皆、身分証番号と住所、使用しているパソコン、携帯電話・スマートフォンなどの登録が義務付けられた。更に所持している携帯電話には監視アプリのダウンロードが義務付けられる。GPSで24時間、居場所が分かるので、スマートフォンの持ち主が普段と違う通勤路を通っただけで、警官からその理由を問われた、という報告もある。
またウイグル人家庭に対する漢族公務員、或いは民間監視委員の突然の訪問は頻繁に行われるが、こんな時、ウイグル人は笑顔を貫かねばならない。嫌な顔、抵抗の様子を見せようものなら、再教育施設に送り込まれる。
ウイグル人の個人情報、つまり職業、宗教信仰、パスポートの有無、人間関係、家族関係、渡航経験、SNS上の発言、ネット上の閲覧、ダウンロード記録、血液・DNA・虹彩・指紋といった生体情報、位置情報までありとあらゆる情報が中国当局のサーバーに集積されている。なぜここまでウイグル人が管理されるのかの理由として、「臓器移植」のドナー候補として狙われているのではないか、との恐怖がある。
中国では、死刑囚の臓器が移植の為に利用され、2015年以降は全面禁止されたはずなのに、移植手術件数は順調に伸びている。とすると、ウイグル人の臓器が使われているということにならないか。
実際、英国に亡命中のウイグル人医師が以下の証言をしている。長期間失踪後に戻ってきた子供の体に手術跡があり、腎臓が1個取られていた。少なからぬウイグルの子供が失踪しているという。また彼は、主任医師に刑場に連れていかれ、処刑された遺体から臓器を摘出するよう命じられ、メスを入れたところ、心臓がまだ動いていたという。
移植希望者が現れてから、DNA登録がしてあるウイグル人のデータを検索して適合する相手を見つけ、その人物を再教育施設に収容し、”個人の希望”でドナー登録し、”不慮の事故か病気で”収容先で死亡したとしたら、臓器を利用しても”違法ではない”と言い張ることはできる。
その医者は英国人ジャーナリストに自分の知っていることを話し、ドキュメンタリーの中で素顔を晒したので、故郷に永遠に帰ることができなくなった。18年後、彼と再会した娘は「恨んだこともあった」と言ったが、ドキュメンタリーを見て、父親が故郷を離れざるを得なかったことを理解したという。
まだ半分ほどしか読んでいないが、恐ろしい話ばかりだった。また福島香織氏の行動力や記者魂(お金をわざと落としてウイグル人がどんな反応をするか見てみたり、テロリストに間違われた時、日本人パスポートを出せば、すぐに解放されたのに、成り行きを見届けたくて最後まで提示しなかったなど)に、感心させられることしきりだった。
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ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 (PHP新書) Kindle版
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収容者数100万人といわれ、米国務省がいま世界的な人権問題として警鐘を鳴らすウイグル人の強制収容。中国はなぜ彼らを恐れるのか? 中国共産党に忠実で、清く正しい人々。ゴミ一つ落ちておらず、スリもいない完璧な町。だが、この地のウイグル人たちをよく観察してみると、何かがおかしい。若い男性は相対的に少なく、老人たちに笑顔が見られない。観光客に接する女性たちの表情は妙に硬い。いまSF小説の世界にも似た暗黒社会が、日本と海を隔てた隣国の果てにあることを誰が想像しただろうか。さらに共産党による弾圧の魔手は、いまや在日ウイグル人にまで及んでいるという。現地ルポとウイグル人へのインタビューから浮かび上がる「21世紀最悪の監獄社会」の異様な全貌。「一帯一路」という大国の欲望に翻弄された弱小民族の悲哀が浮かび上がる。 ●序章 カシュガル探訪――21世紀で最も残酷な監獄社会 ●第一章 「再教育施設」の悪夢――犯罪者にされる人々 ●第二章 民族迫害の起源 ●第三章 世界の大変局時代における鍵――米中そして日本
- 言語日本語
- 出版社PHP研究所
- 発売日2019/6/18
- ファイルサイズ21299 KB
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出版社からのコメント
序章 カシュガル探訪―21世紀で最も残酷な監獄社会(羊の代わりに警官が増えた
ホテルの出入口でX線と金属探知ゲートのチェック ほか)
第1章 「再教育施設」の悪夢―犯罪者にされる人々(テロリストと間違われる
100万人以上のウイグル人が強制収容されている! ほか)
第2章 民族迫害の起源(ウイグルの起源
パミール以東の中央アジアの政治的独立は喪失された ほか)
第3章 世界の大変局時代における鍵―米中そして日本(「テロとの戦い」の標的にされたウイグル組織
文化大革命に対する抵抗 ほか) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
ホテルの出入口でX線と金属探知ゲートのチェック ほか)
第1章 「再教育施設」の悪夢―犯罪者にされる人々(テロリストと間違われる
100万人以上のウイグル人が強制収容されている! ほか)
第2章 民族迫害の起源(ウイグルの起源
パミール以東の中央アジアの政治的独立は喪失された ほか)
第3章 世界の大変局時代における鍵―米中そして日本(「テロとの戦い」の標的にされたウイグル組織
文化大革命に対する抵抗 ほか) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
著者について
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
福島/香織
奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年に上海・復旦大学に1年間、語学留学。2001年に香港支局長、02年春より08年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。09年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年に上海・復旦大学に1年間、語学留学。2001年に香港支局長、02年春より08年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。09年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
中国共産党に忠実で、清く正しい人々。ゴミ一つ落ちておらず、スリもいない完璧な町。だが、この地のウイグル人たちをよく観察してみると、何かがおかしい。若い男性は相対的に少なく、老人たちに笑顔が見られない。観光客に接する女性たちの表情は妙に硬い。いまSF小説の世界にも似た暗黒社会が、日本と海を隔てた隣国の果てにあることを誰が想像しただろうか。さらに共産党による弾圧の魔手は、いまや在日ウイグル人にまで及んでいるという。現地ルポとウイグル人へのインタビューから浮かび上がる「21世紀最悪の監獄社会」の異様な全貌。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07SW2JDNH
- 出版社 : PHP研究所 (2019/6/18)
- 発売日 : 2019/6/18
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 21299 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 203ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 69,044位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 40位社会史
- - 250位PHP新書
- - 2,379位社会学 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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奈良市出身。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年に上海・復旦大学に1年間、語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始。テーマは「中国という国の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて“近くて遠い隣の大国”との付き合い方を考える。
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本当の意味での「人権は国境を越えて」を考えるためには福島香織氏の『ウイグル人に何が起きているのか』を一読すべし。『1984』『真昼の暗黒』の世界がそこにある! オーウェル生誕日(6・25)を前に…。
2019年6月22日に日本でレビュー済み
福島香織氏の『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』 (PHP新書)を読んだ。
(こんな内容)→収容者数100万人といわれ、米国務省がいま世界的な人権問題として警鐘を鳴らすウイグル人の強制収容。中国はなぜ彼らを恐れるのか?中国共産党に忠実で、清く正しい人々。ゴミ一つ落ちておらず、スリもいない完璧な町。だが、この地のウイグル人たちをよく観察してみると、何かがおかしい。
若い男性は相対的に少なく、老人たちに笑顔が見られない。観光客に接する女性たちの表情は妙に硬い。いまSF小説の世界にも似た暗黒社会が、日本と海を隔てた隣国の果てにあることを誰が想像しただろうか。
さらに共産党による弾圧の魔手は、いまや在日ウイグル人にまで及んでいるという。現地ルポとウイグル人へのインタビューから浮かび上がる「21世紀最悪の監獄社会」の異様な全貌。「一帯一路」という大国の欲望に翻弄された弱小民族の悲哀が浮かび上がる。
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著者は20年前に観光旅行として両親と共に訪れた「カシュガル」(新疆ウイグル自治区カシュガル市)に、2019年5月訪れた。
20年前のカシュガルでは、中国語も通じなくて、漢族もほとんど見かけず、女性はスカーフに長いウイグル風のスカートを来ていたそうな。「中国臭さ」のない「異国情緒」漂うところだった。
ところが今回は…。
「完全に中国の町になっていた。観光客は百%漢族」「羊がすっかりいなくなっていた。代わりに、警官がやたら増えていた。20年前は、町中で警官の姿はそんなになかった」……。
いたるところに、「民族団結一家親」等々の中国共産党のスローガンの垂れ幕があったという。
ホテルの入口には金属探知機ゲートがあり、寺院前広場の脇には大型スクリーンがあり、習近平がウイグルの子供たちに囲まれて笑顔を見せている写真が投影されている。
そうした実体験、見聞録をもとに、ウイグル亡命者のさまざまな証言をまとめ、ウイグルの歴史を論じた書なり。民族文化を抹殺し、民族の「血」も薄めようとする中共(中国共産党)の恐るべき施策の数々が、実証的に描かれている。
一読して、21世紀の今日、こんな野蛮が許されていいものかという憤りを覚えずにはいられなかった。
これはまさしくジョージ・オーウェルの『1984』 (ハヤカワ文庫)、アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒』 (筑摩書房ほか)の世界そのものではないか。「収容所」でのウイグル人弾圧の実態は、ナチのアウシュビッツにも匹敵する野蛮というしかないだろう。
福島さんは、ウイグルで活躍していたものの亡命を余儀なくされているラビア・カーディルにノーベル平和賞を授与することによって、中共の野蛮行為にブレーキをかけるべきだと主張しているが同感だ。かつて、ダライ・ラマに授与された時、ぶつぶつと文句を言った朝日新聞(論説委員室)とて、今回は言えまい?(いや言うかな? ネバーセイネバー)。
ともあれ、彼女の自伝『ウイグルの母ラビア・カーディル自伝 中国で一番憎まれている女性』 (ランダムハウス講談社)も併読をお勧めしたい。一読の価値がある。共産主義と闘った人権運動家の自叙伝であり、文字通りの「名著」だ。日本での講演も聞いたことがある。
また、彼女をはじめとするウイグルの海外亡命者たちの足跡を追った水谷尚子氏の『中国を追われたウイグル人 亡命者が語る政治弾圧』 (文春新書)も重要だ。
こういう中共や北朝鮮の人権弾圧をまったく無視して、平然とアジアの人権問題を語る本や人が稀に(いや結構?)いるけど、かなり不可思議な脳構造の持ち主というしかない(例→伊藤和子氏の『人権は国境を越えて』岩波ジュニア新書。これは共産圏の人権抑圧には「沈黙」する奇妙な「迷著」!)。
(こんな内容)→収容者数100万人といわれ、米国務省がいま世界的な人権問題として警鐘を鳴らすウイグル人の強制収容。中国はなぜ彼らを恐れるのか?中国共産党に忠実で、清く正しい人々。ゴミ一つ落ちておらず、スリもいない完璧な町。だが、この地のウイグル人たちをよく観察してみると、何かがおかしい。
若い男性は相対的に少なく、老人たちに笑顔が見られない。観光客に接する女性たちの表情は妙に硬い。いまSF小説の世界にも似た暗黒社会が、日本と海を隔てた隣国の果てにあることを誰が想像しただろうか。
さらに共産党による弾圧の魔手は、いまや在日ウイグル人にまで及んでいるという。現地ルポとウイグル人へのインタビューから浮かび上がる「21世紀最悪の監獄社会」の異様な全貌。「一帯一路」という大国の欲望に翻弄された弱小民族の悲哀が浮かび上がる。
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著者は20年前に観光旅行として両親と共に訪れた「カシュガル」(新疆ウイグル自治区カシュガル市)に、2019年5月訪れた。
20年前のカシュガルでは、中国語も通じなくて、漢族もほとんど見かけず、女性はスカーフに長いウイグル風のスカートを来ていたそうな。「中国臭さ」のない「異国情緒」漂うところだった。
ところが今回は…。
「完全に中国の町になっていた。観光客は百%漢族」「羊がすっかりいなくなっていた。代わりに、警官がやたら増えていた。20年前は、町中で警官の姿はそんなになかった」……。
いたるところに、「民族団結一家親」等々の中国共産党のスローガンの垂れ幕があったという。
ホテルの入口には金属探知機ゲートがあり、寺院前広場の脇には大型スクリーンがあり、習近平がウイグルの子供たちに囲まれて笑顔を見せている写真が投影されている。
そうした実体験、見聞録をもとに、ウイグル亡命者のさまざまな証言をまとめ、ウイグルの歴史を論じた書なり。民族文化を抹殺し、民族の「血」も薄めようとする中共(中国共産党)の恐るべき施策の数々が、実証的に描かれている。
一読して、21世紀の今日、こんな野蛮が許されていいものかという憤りを覚えずにはいられなかった。
これはまさしくジョージ・オーウェルの『1984』 (ハヤカワ文庫)、アーサー・ケストラーの『真昼の暗黒』 (筑摩書房ほか)の世界そのものではないか。「収容所」でのウイグル人弾圧の実態は、ナチのアウシュビッツにも匹敵する野蛮というしかないだろう。
福島さんは、ウイグルで活躍していたものの亡命を余儀なくされているラビア・カーディルにノーベル平和賞を授与することによって、中共の野蛮行為にブレーキをかけるべきだと主張しているが同感だ。かつて、ダライ・ラマに授与された時、ぶつぶつと文句を言った朝日新聞(論説委員室)とて、今回は言えまい?(いや言うかな? ネバーセイネバー)。
ともあれ、彼女の自伝『ウイグルの母ラビア・カーディル自伝 中国で一番憎まれている女性』 (ランダムハウス講談社)も併読をお勧めしたい。一読の価値がある。共産主義と闘った人権運動家の自叙伝であり、文字通りの「名著」だ。日本での講演も聞いたことがある。
また、彼女をはじめとするウイグルの海外亡命者たちの足跡を追った水谷尚子氏の『中国を追われたウイグル人 亡命者が語る政治弾圧』 (文春新書)も重要だ。
こういう中共や北朝鮮の人権弾圧をまったく無視して、平然とアジアの人権問題を語る本や人が稀に(いや結構?)いるけど、かなり不可思議な脳構造の持ち主というしかない(例→伊藤和子氏の『人権は国境を越えて』岩波ジュニア新書。これは共産圏の人権抑圧には「沈黙」する奇妙な「迷著」!)。
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嘗てシルクロードの通り道であった中央亜細亜は日本の歴史にも縁があるにも関わらず、私たちは多くを知りません。その東側地域である回鶻(ウィグル)で起きて居る極めて深刻な事態とその歴史的経緯を纏めた一冊です。
第一章:本書の半分を占める百六十頁を割いて亡命回鶻人の証言、著者の現地取材で判明した事項に各種レポートの情報を加えてその現状を纏めています。俄かには信じ難い様な実情が具に語られて居ますが、此の恐るべき監視システムが世界中に張り巡らされたら何の様な事態になるかを考えさせられます。また、第三章で紹介される國際社會の反応との關聯で重要な指摘も為されて居ます。
第二章:背景を理解する為の歴史的事項の纏めです。清朝に至るまでの中央亜細亜史、清朝時代の経緯、中華民國成立以降、現政権成立以降の現代史の順に解説していますが、大半の紙面を現代史に割き、主要な出来事を紹介して行きます。中央亜細亜には元々國境という概念が無く色々な民族の勢力地図が入れ替わって行きますので、古来より独立國家を形成して来た日本人には感覚的に分かり難い部分があります。全く図譜が無く文章だけで書かれて居ますので、特に清朝以前の部分が分かりにくい様に思います。現代史では周辺諸國の思惑による干渉や中東情勢の影響を受けながら独立運動の頓挫を繰り返し、多くの犠牲者を出してきた歴史が解説されています。
第三章:地政学的な見地から米国を始めとする大国の思惑やイスラム諸国の対応を分析していますが、土耳古とそれ以外の諸国では異なった対応をしている點が注目されます。トランプ大統領になってから米国は本腰を入れ始めますが、人権を声高に叫ぶ人々の反応が此の問題に関しては鈍いのは何故かもう少し斬り込んだ解説を期待したいところでした。
真に衝撃の一冊でした。各節の見出しにもう少しキーワードを入れるか別途索引(特に人名)をつければ資料として使い易くなるでしょう。徹底的な社會監視システムが何を齎すか、本書が発する警告を深刻に受け止めねばなりません。
第一章:本書の半分を占める百六十頁を割いて亡命回鶻人の証言、著者の現地取材で判明した事項に各種レポートの情報を加えてその現状を纏めています。俄かには信じ難い様な実情が具に語られて居ますが、此の恐るべき監視システムが世界中に張り巡らされたら何の様な事態になるかを考えさせられます。また、第三章で紹介される國際社會の反応との關聯で重要な指摘も為されて居ます。
第二章:背景を理解する為の歴史的事項の纏めです。清朝に至るまでの中央亜細亜史、清朝時代の経緯、中華民國成立以降、現政権成立以降の現代史の順に解説していますが、大半の紙面を現代史に割き、主要な出来事を紹介して行きます。中央亜細亜には元々國境という概念が無く色々な民族の勢力地図が入れ替わって行きますので、古来より独立國家を形成して来た日本人には感覚的に分かり難い部分があります。全く図譜が無く文章だけで書かれて居ますので、特に清朝以前の部分が分かりにくい様に思います。現代史では周辺諸國の思惑による干渉や中東情勢の影響を受けながら独立運動の頓挫を繰り返し、多くの犠牲者を出してきた歴史が解説されています。
第三章:地政学的な見地から米国を始めとする大国の思惑やイスラム諸国の対応を分析していますが、土耳古とそれ以外の諸国では異なった対応をしている點が注目されます。トランプ大統領になってから米国は本腰を入れ始めますが、人権を声高に叫ぶ人々の反応が此の問題に関しては鈍いのは何故かもう少し斬り込んだ解説を期待したいところでした。
真に衝撃の一冊でした。各節の見出しにもう少しキーワードを入れるか別途索引(特に人名)をつければ資料として使い易くなるでしょう。徹底的な社會監視システムが何を齎すか、本書が発する警告を深刻に受け止めねばなりません。




![ニューズウィーク日本版 Special Report 日本人がまだ知らないウイグル弾圧〈2018年 10/23日号〉[雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/81DEsqv4CdL._AC_UL140_SR140,140_.jpg)
