著者はJournal of Monetary EconomicsやHandbook of Monetary Economicsを中心に貨幣経済の分野で多くの業績を持つ学者です。この本は、中級レベルと上級レベルの橋渡しをする良書であると思います。私も10年前にマクロ経済学を大学院で勉強をして、中級レベルと上級レベルのギャップに苦労しました。この本の特徴は大きく分けて2つあります。
(1)代表的個人モデルを中心とした、市場均衡アプローチ
マクロ経済学の教科書では、IS-LMや総需要-総供給分析を用いたトピックスは、和書を中心にありますが、この本では、IS-LMモデルは一切出てきません。1期間、2期間、異時点間モデルを中心としたミクロ経済学に基づいた理論展開していて、Obstfeld&RogoffのFoundations of International Macroeconomicsのように分かりやすく記述されています。
(2)自己完結的なテキスト
テキストに出てくる、数式が意味するところの説明も丁寧です。離散形を使って話を進めていているので、基本的なミクロ、マクロ経済学が分かれば対応できる内容になっています。また数学付録が充実していて、比較静学を使った分析から最適成長論のベルマン方程式までマクロ経済に必要な最低限の知識は網羅されています。下巻を含めると、最新のトピックまでを網羅したテキストなのでは、ないでしょうか。
以上のように、中級レベルのマクロ経済学を分かりやすく、丁寧に説明してます。また、あえて短所を挙げるとすれば、上下巻でボリュームあり、価格も高いことが欠点かと思います。
大学院を出て10年。会社員になって、経済学のテキストを買うことはあまりなくなってしまいましたが、久しぶりに衝動買いをしてしまった本です。学部の上級から使えるテキストだと思います。
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