本書はインドネシアの高校で使用されている教科書。インドネシアの政治的事情により「1994年カリキュラム・1999年教育指導要領補遺」に準拠した教科書の翻訳である為、情報としてはやや古い。しかし、手頃なインドネシア通史がなかなか無い中、本書は先史時代からワヒド大統領就任までの流れを一通り知ることができる点で非常に有用である。例えば、インドネシアの王朝については我が国の世界史では断片的な記述の為、いま一つ分かりづらかったのだが、本書でようやくその変遷が理解できた。
我が国の教科書が事実を客観的に淡々と記述するスタイルなのに対し、インドネシアのこの教科書は、独立の達成過程と建国の理念が諸所で熱く語られている点が特徴である。全8章のうち、半分が独立運動と現代史に割かれている。このスタイルには賛否両論あるだろうが、自国の歴史が現代にいかに繋がっているかを示すことにより、インドネシア憲法に定める理念を高校生に理解させることに重きを置いていることが分かる。
なお、第6章「日本占領とインドネシア独立準備」はインドネシアが日本をどのように見ているかが伺いしれて興味深い一章だが、悪名高い「田中上奏文」を下敷きにしていると思われる記述があり、この点は今後両国の歴史学会の交流で改善が待たれるところ。また、「インドネシアは日本のおかげで独立できて感謝している!」と主張される向きには、インドネシアの教科書が日本占領時代をどう教えているかを、とりあえず本書で確認されることをお勧めしたい。
本書への最大の不満は、地図が無いこと。世界史資料集等で補いながら読むしかない。この点、我が国の教科書は本文以外の資料が非常に充実していることに有難味を感じるであろう。
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