イノベーションに伴う製品の性能向上と、企業の栄光盛衰をまとめた一冊。
どんなに時代が流れようとも変わることのないモノづくりに関するルールが書いてあるため、モノづくりをやっている人には必ず読んでほしい。
本書の初めで述べられている技術には、製品の性能を向上させていく持続的技術と破壊的技術がある。
ある製品の性能が持続的に上昇していた場合、それは持続的技術であり今までの指標で評価することができる。
持続的技術によってある程度の性能になった製品は、大手企業などが製品を入念なマーケティングをして市場規模、顧客調査などからどれぐらいの売り上げを得ることができるかある程度わかるため市場参入が比較的容易である。
一方、全く新しい技術を導入することで従来存在していた製品を一新してしまう技術を破壊的技術と呼び、こちらは入念なマーケティングや聞き取り調査を行うことがむしろ害となる。
これは破壊的技術によって生み出される製品が投入される市場はまだ出来上がったばかりであるため、マーケティングなどの調査で見積もることが困難で、企業内で話をしても社内の承認をうまくとることができないことに依存している。
更に破壊的技術はその特性上、最初は持続的技術の恩恵を受けている製品よりも明らかに性能が劣っているため、将来性を正しく評価することが困難であることも一因となる。
この本の中では持続的技術と破壊的技術をHDDのインチの変化、レーザプリンタとインクジェットプリンタなどを用いて説明しているが、近年ではもっとわかりやすい例がいくらでもある。
例えばHDDとフラッシュメモリ(SSD)の関係である。
フラッシュメモリは誕生した当初、デジタルカメラに搭載される程度(数MB)の容量しかもっておらず、ビット当たりの値段も格段に高かった。※その当時でHDDは80MB程度
当然PC市場に必要とされる性能を満たしていない。
しかし、フラッシュメモリはHDDにはない「衝撃耐性」「読み書き速度」などの特徴を有しており、iPod nanoに搭載されるようになったことで爆発的に普及が進む。
そして持続的技術によってフラッシュメモリの性能を大幅に向上させたことで、近年ではPC市場でも搭載できるまでに成長した。
破壊的技術による市場変化に対応できなかった企業は非常に多く、私の知る限りでもHDD製造からフラッシュメモリ製造に切り替えることができたのはサムスン、東芝、ウェスティンデジタルくらいだろうか。
他のHDDメーカだったIBM、富士通、NECなどの多くの会社はフラッシュメモリという破壊的技術によって一掃されてしまっている。
この持続的技術と破壊的技術はありとあらゆるモノづくりの業界でおきることであり、不変のルールである。
今大手企業に在籍している人は、大企業に在籍しているからといって胡坐をかいて一生同じ企業にいようとすると、破壊的技術によって自分の会社がなくなったり、部署ごとリストラされたりする可能性があることを肝に銘じておかなければならない。
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