アヘンの一大産地だった「中国との国境地帯にあるビルマの反政府ゲリラ・ワ州連合軍の支配区に滞在した(p.368)」著者の記録。原著は1998年刊。
著者が自ら「『背骨』と呼ぶべき(p.371)」作品であると言うだけあり、他の著作に比べるとハチャメチャさが小さめで(それでも著者はアヘン中毒になったりするのだが)、骨太なゴツゴツした感触の作品になっている。しかも「いくら冗談めかしても、笑い飛ばしても、常に心の奥底にはなんともいえない苦味が(p.375)」ある。それはやはり「いかなる国や地域もアヘンを基幹産業にしてはいけない(p.362)」からだろう。
著者は、「森を見て木を見ず」になりかねない「上空から見下ろした俯瞰図」を描くジャーナリズムの手法をとらず「一本一本の木を触って樹皮の手触りを感じ(p.20)」たいと書く。私の印象では、本書は民族学者のフィールドノーツにとても近い。
記憶に留めておきたい箇所3点。
1 著者が7ヶ月滞在したワ州の村では「人びとにとって、ケシ栽培は純粋に農業なのである(p.158)」。なるほど麻薬の生産・流通のすべてを、何か「邪悪な」人びとが「秘儀」のように行っているわけではないのだ。
2 「少数民族の独立や自治については、アウン・サン・スー・チーらビルマ民主化勢力も、軍事政権と同じくらい否定的である(p.238)」。ロヒンギャ問題について沈黙を守っているアウン・サン・スー・チーも、軍の勢力に取り込まれたり、彼らを慮って急に「変節」した訳ではないのだろう。
3 「民主化支持者はビルマといい軍事政権を認める者はミャンマーといいはっている、という印象を持つ人も多いと思うが……ビルマ(バーマ)とミャンマーは同じ言葉の文語と口語というちがいしかない(p.377)」。私もてっきり上の図式で考えていたのでショックである。
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アヘン王国潜入記 (集英社文庫) 文庫 – 2007/3/20
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ゲリラとアヘン栽培! 7か月の仰天本格ルポ。
ゴールデン・トライアングルの村に住み反政府ゲリラと共に播種から収穫まで7か月間アヘン栽培。それは農業か犯罪か。タイム誌も仰天の世界初ルポ。東南アジア民族抗争の発火点が明らかに!(解説/船戸与一)
ゴールデン・トライアングルの村に住み反政府ゲリラと共に播種から収穫まで7か月間アヘン栽培。それは農業か犯罪か。タイム誌も仰天の世界初ルポ。東南アジア民族抗争の発火点が明らかに!(解説/船戸与一)
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2007/3/20
- ISBN-104087461386
- ISBN-13978-4087461381
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ミャンマー北部、反政府ゲリラの支配区・ワ州。1995年、アヘンを持つ者が力を握る無法地帯ともいわれるその地に単身7カ月、播種から収穫までケシ栽培に従事した著者が見た麻薬生産。それは農業なのか犯罪なのか。小さな村の暖かい人間模様、経済、教育。実際のアヘン中毒とはどういうことか。「そこまでやるか」と常に読者を驚かせてきた著者の伝説のルポルタージュ、待望の文庫化。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
高野/秀行
1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。2006年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2007/3/20)
- 発売日 : 2007/3/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 392ページ
- ISBN-10 : 4087461386
- ISBN-13 : 978-4087461381
- Amazon 売れ筋ランキング: - 153,541位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 229位ジャーナリズム (本)
- - 1,279位集英社文庫
- - 15,679位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションや旅行記のほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。
1992-93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、2008-09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。
主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』『異国トーキョー漂流記』『アジア新聞屋台村』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。
『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。
『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。
カスタマーレビュー
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著者は世界最大の「麻薬地帯」といわれるビルマと中国の国境、ワ州に1995年から1996年にかけて7カ月滞在した。反政府ゲリラの支配区であり、ビルマ政府のみならず、「有史以来いかなる国家の管轄化にもあったことがない」とされるその土地は近代まで「首狩り」の風習があったとされる、普通の人間だったらまず近づきたいとさえ思わない場所だった。しかしそういう土地にこそ秘境マニア、高野秀行は萌える。タイ北部チェンマイで日本語教師などしながら、潜入機会を待った。そしてついに「日本で有名な作家」の長期留学をワ軍に認められ、この「善悪の彼岸」に旅立つのである。その仲介者となったワ軍幹部で一時期米CIAの仕事もしていたというサイ・パオは、著者が帰国してほどなく、本書を執筆している途中にチェンマイ市内で暗殺された。「辺境」はたんなる酔狂で訪れられるような場所ではない。しかも今回の辺境はヤバすぎてテレビ番組の企画になど到底ならない。実際、原稿を書き上げても出版したいという版元がなかなかあらわれなかったとあとがきに記されている。
著者の滞在していたムイレ村での日々は、強烈な異文化体験ではあるが、1週間もたてばそれも単調な日常であり、アヘンの栽培というのはつまるところたの農作物栽培と変わるところもないのだが、その辺境の農村が「世界の秘境」となっている背景には、麻薬利権と、ビルマ政府、反政府ゲリラ(複数)、中国、アメリカなどの勢力争いが複雑に絡まっているという背景がある。牧歌的な懐かしさと息苦しいほどの閉そく感が同居する農村の生活のすぐ外側には「アヘン、銃、札束」の映画さながらの光景が現実として存在する。著者は「現在、世界に残されている『秘境』とは、「政治的秘境」か、人間の精神の暗部に巣くう比喩的な意味での秘境しかない」と言うが、ワ州はまさにその両方を満たす場所だった。
政治的秘境という意味でいえば、2020年現在、ミャンマー政府は少数民族ロヒンギャの迫害を世界から糾弾されている状況だが、そもそもビルマには135(政府発表)もの少数民族がおり、民族ゲリラの数も1996年段階で15もあった。著者のいうとおり、まさに「東南アジアのユーゴスラビア」である。「軍事政権が居直っているのは、少数民族を抑えられるのは軍事力しかないと確信しているからではないか」というのが著者の見立てだ。その少数民族の武装勢力の資金源となっているのがアヘンだったが、最大の生産地であるワ州でいったいどのくらいの収穫量があるのか、外部には知られていなかった。著者のワ州滞在の仲介をしたシャン州の独立運動家から、著者はその情報を入手することを頼まれていた。著者が掴んだ数字はワ州での収穫量は15万ジョイ。ビルマ全体で23万ジョイ。しかし不思議なのはアメリカ政府が出した数字はその5倍にもなるということである。理由は定かではないが、これはおそらく水増し報告ではないかと著者は本書の最後で指摘している。
「人間の精神の暗部に巣くう比喩的な意味での秘境」ということでは、著者はアヘンを吸うことにより「板のような夢」を体験する。体調不良で薬として服用したのがきっかけだったが、のっぺりとした心地よさにはまっていった。その心地よさを著者は「『欲望の器』が小さくなる」という言葉で表現している。「器が小さくなれば、中身の不足はたやすく補える。ネガティブな『満足』だ。反人生的であるが、釈迦の教えそのままといえなくもない。・・・ただただ現状に甘んずる。それが『板夢』による心地よさの正体ではなかろうか」。しだいに中毒症状も出てくるが、どう断ち切ったのか詳しいことは書いていない。体調の回復とともにアヘンが必要なくなったのか、村を出て入手できないとなればなくてもやりすごせるようになったのか。
人類は新石器時代からケシを栽培していたといわれ、アヘンに関して最も古い記録は紀元前1550年にさかのぼるという。長らく医薬品として使われてきた。著者はアヘンの用途を麻薬を本来の医薬品として戻せば、世界最大の麻薬地帯が世界最大の衣料品供給地帯になって「歴史が変わる」と考える。具体的にはワ州の完全自治の秘策として「アヘンを(ヘロインではなく)モルヒネに精製して医薬品として輸出する」ことを提案するが、がんという病気もしらないワ州の人にはモルヒネの用途や価値がわからず、また、それによってヘロインを牛耳っているのが軍の幹部と中国系商人ということもあって幻に終わった。
こうした麻薬地帯の実態は、往々にしてジャーナリズムのテーマとなるが、著者はジャーナリスティックなアプローチは性に合わないとして、「取材」ではなく村人と共に生活することによってその深層に迫ろうと試みる。文化人類学者的アプローチともいえるが、文化人類学者のように研究課題やフレームをあらかじめもっているわけでもない。高野式としか言いようのない、徹底的な同化の試みと、その限界点において得られる考察。それはときにジャーナリストよりも鋭く、文化人類学者よりも深く、ことの本質をとらえる。
著者がアヘン王国に潜入してから四半世紀がたった。ワ軍はミャンマー政府と和平を結ぶと中国からの投資が急増したらしい。中国からの技術者指導で兵器を生産し、他の武装勢力に売却したりもしているという。国際的な批判を受けていたケシ栽培は激減したが、アヘンに代わって、中国からの化学原料による覚醒剤製造が活発化しているという情報もある。(参考:東京新聞〈独立国「ワ」ミャンマーの矛盾 2019年8日~10日〉
著者の滞在していたムイレ村での日々は、強烈な異文化体験ではあるが、1週間もたてばそれも単調な日常であり、アヘンの栽培というのはつまるところたの農作物栽培と変わるところもないのだが、その辺境の農村が「世界の秘境」となっている背景には、麻薬利権と、ビルマ政府、反政府ゲリラ(複数)、中国、アメリカなどの勢力争いが複雑に絡まっているという背景がある。牧歌的な懐かしさと息苦しいほどの閉そく感が同居する農村の生活のすぐ外側には「アヘン、銃、札束」の映画さながらの光景が現実として存在する。著者は「現在、世界に残されている『秘境』とは、「政治的秘境」か、人間の精神の暗部に巣くう比喩的な意味での秘境しかない」と言うが、ワ州はまさにその両方を満たす場所だった。
政治的秘境という意味でいえば、2020年現在、ミャンマー政府は少数民族ロヒンギャの迫害を世界から糾弾されている状況だが、そもそもビルマには135(政府発表)もの少数民族がおり、民族ゲリラの数も1996年段階で15もあった。著者のいうとおり、まさに「東南アジアのユーゴスラビア」である。「軍事政権が居直っているのは、少数民族を抑えられるのは軍事力しかないと確信しているからではないか」というのが著者の見立てだ。その少数民族の武装勢力の資金源となっているのがアヘンだったが、最大の生産地であるワ州でいったいどのくらいの収穫量があるのか、外部には知られていなかった。著者のワ州滞在の仲介をしたシャン州の独立運動家から、著者はその情報を入手することを頼まれていた。著者が掴んだ数字はワ州での収穫量は15万ジョイ。ビルマ全体で23万ジョイ。しかし不思議なのはアメリカ政府が出した数字はその5倍にもなるということである。理由は定かではないが、これはおそらく水増し報告ではないかと著者は本書の最後で指摘している。
「人間の精神の暗部に巣くう比喩的な意味での秘境」ということでは、著者はアヘンを吸うことにより「板のような夢」を体験する。体調不良で薬として服用したのがきっかけだったが、のっぺりとした心地よさにはまっていった。その心地よさを著者は「『欲望の器』が小さくなる」という言葉で表現している。「器が小さくなれば、中身の不足はたやすく補える。ネガティブな『満足』だ。反人生的であるが、釈迦の教えそのままといえなくもない。・・・ただただ現状に甘んずる。それが『板夢』による心地よさの正体ではなかろうか」。しだいに中毒症状も出てくるが、どう断ち切ったのか詳しいことは書いていない。体調の回復とともにアヘンが必要なくなったのか、村を出て入手できないとなればなくてもやりすごせるようになったのか。
人類は新石器時代からケシを栽培していたといわれ、アヘンに関して最も古い記録は紀元前1550年にさかのぼるという。長らく医薬品として使われてきた。著者はアヘンの用途を麻薬を本来の医薬品として戻せば、世界最大の麻薬地帯が世界最大の衣料品供給地帯になって「歴史が変わる」と考える。具体的にはワ州の完全自治の秘策として「アヘンを(ヘロインではなく)モルヒネに精製して医薬品として輸出する」ことを提案するが、がんという病気もしらないワ州の人にはモルヒネの用途や価値がわからず、また、それによってヘロインを牛耳っているのが軍の幹部と中国系商人ということもあって幻に終わった。
こうした麻薬地帯の実態は、往々にしてジャーナリズムのテーマとなるが、著者はジャーナリスティックなアプローチは性に合わないとして、「取材」ではなく村人と共に生活することによってその深層に迫ろうと試みる。文化人類学者的アプローチともいえるが、文化人類学者のように研究課題やフレームをあらかじめもっているわけでもない。高野式としか言いようのない、徹底的な同化の試みと、その限界点において得られる考察。それはときにジャーナリストよりも鋭く、文化人類学者よりも深く、ことの本質をとらえる。
著者がアヘン王国に潜入してから四半世紀がたった。ワ軍はミャンマー政府と和平を結ぶと中国からの投資が急増したらしい。中国からの技術者指導で兵器を生産し、他の武装勢力に売却したりもしているという。国際的な批判を受けていたケシ栽培は激減したが、アヘンに代わって、中国からの化学原料による覚醒剤製造が活発化しているという情報もある。(参考:東京新聞〈独立国「ワ」ミャンマーの矛盾 2019年8日~10日〉
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アヘン戦争を知る人は多い中、栽培から収穫に携わった日本人はもはや数える程度でしょう。
そんな生産者から見たアヘンを通じてミャンマーの一部分の背景を知ることが出来る作品です。
今でこそテレビ番組にも出演し、数々の賞を取っている高野秀行氏。
しかし無名時代も長く本作を書くのに約7年費やしたのかと思うと頭が下がる思いです。
何でもそうですが、いきなり結果が出て評価され社会的にも認められるのはあり得ないです。
大体の方が馬鹿にされ辛酸を舐めながらも自分の信じた道を貫く。
諦めてしまう方や、とうとう日の目を見ることが無い人もいる中で常に自身のスタイルを貫き通し
当時なら思いつかないような外国語翻訳で突破口を見出した高野氏のセンスが光る作品です。
アヘンに興味がある方もそうですが、目標や夢で行き詰った方には是非読んで頂きたい作品であります。
一歩退く事で見えない物が見えることがあるからです。
そんな生産者から見たアヘンを通じてミャンマーの一部分の背景を知ることが出来る作品です。
今でこそテレビ番組にも出演し、数々の賞を取っている高野秀行氏。
しかし無名時代も長く本作を書くのに約7年費やしたのかと思うと頭が下がる思いです。
何でもそうですが、いきなり結果が出て評価され社会的にも認められるのはあり得ないです。
大体の方が馬鹿にされ辛酸を舐めながらも自分の信じた道を貫く。
諦めてしまう方や、とうとう日の目を見ることが無い人もいる中で常に自身のスタイルを貫き通し
当時なら思いつかないような外国語翻訳で突破口を見出した高野氏のセンスが光る作品です。
アヘンに興味がある方もそうですが、目標や夢で行き詰った方には是非読んで頂きたい作品であります。
一歩退く事で見えない物が見えることがあるからです。
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高野さんの本が私にとって面白いところ、それは一個人のあり方がとても克明な点です。本書の最初の方に記述があるのですが、ジャーナリストは木を見て森を見ずの教訓通りで俯瞰している…中略…だから木は見ないのかも知れない、という様な文があります。
それはかねがね私が報道に感じていたところです。一個人が見えて来なくて。高野さんはその逆を行くのだという彼自身の言葉の通り、木をしっかり見て書く。それがたった一本の木なら「そんな人もいるかも知れない」となるけれど、一本どころか沢山の木(人です)に合って話を聞き、行動を共にし。個人の総体が地域だし、国だし、民族な事を考えると寧ろ高野さんのアプローチの方が報道らしくありそうです。
私には阪神大震災の経験がありますが、一見(いちげん)さんみたいに来る報道の人にペラペラと胸の内なんて喋りませんよ。言えて「服が欲しい」くらいです。そして山ほど上着が届きました。でも長い間自分も避難所にいると「お兄ちゃん、パンツない?」と決死の覚悟でおばあちゃんが泣き付いて来ます。何日も風呂もなく、洗濯は出来ず、汗も普段よりかく。そんな状況で一番「欲しい服」とは下着の替えの事でしたよ。3日もすると匂いが立って来る、男も女も。そんな事、一見さんにどうして言えるでしょう?一見さんでもせめてずっと一緒にいてくれる人にしか喋れません。同舟してると思えないと人は話せないのは東西問わず同じでしょう。そんな事を報道者は分かってなさそうです。そして高野さんはそれをどんな場面でも実地でやっている。(議員さんは更に酷くてメモも取らずに次から次へと聞くだけ聞いて移動して行きました)
証言者の積み重ねが報道。高野作品はそこが秀でていると感じます。しかも自分とのやり取りまで載せるから、どうしてそういう言葉を目の前の人が言うのかまで分かる。その丁寧さ。このアヘンとワ軍の話もまさにそれをやっています。信用されるまで、どれ位掛かっているんでしょうね。そこも編集せずに追ってみると…物凄い時間になるかな笑。なぜこんなに楽しいのでしょう。そこは解明などしないで読み続けたいのが高野さんの作品です。
Ps.今迄5冊くらいの高野作品を読みましたが、この本が格段に苦労している旅の感じがします。それ故少々息苦しくなったり。それが寧ろ当たり前な文化の違いある地域に踏み込んでいるからだけれど、今迄も。マラリアは沢山刺されないとならない、という高野さんの思い違いもあるかも知れない。誰も経験と知識からしか計れないから衝突もするし、曲げられないのでもあるし。普段の暮らしにも重なる部分もあっての感慨にもなりました。
それはかねがね私が報道に感じていたところです。一個人が見えて来なくて。高野さんはその逆を行くのだという彼自身の言葉の通り、木をしっかり見て書く。それがたった一本の木なら「そんな人もいるかも知れない」となるけれど、一本どころか沢山の木(人です)に合って話を聞き、行動を共にし。個人の総体が地域だし、国だし、民族な事を考えると寧ろ高野さんのアプローチの方が報道らしくありそうです。
私には阪神大震災の経験がありますが、一見(いちげん)さんみたいに来る報道の人にペラペラと胸の内なんて喋りませんよ。言えて「服が欲しい」くらいです。そして山ほど上着が届きました。でも長い間自分も避難所にいると「お兄ちゃん、パンツない?」と決死の覚悟でおばあちゃんが泣き付いて来ます。何日も風呂もなく、洗濯は出来ず、汗も普段よりかく。そんな状況で一番「欲しい服」とは下着の替えの事でしたよ。3日もすると匂いが立って来る、男も女も。そんな事、一見さんにどうして言えるでしょう?一見さんでもせめてずっと一緒にいてくれる人にしか喋れません。同舟してると思えないと人は話せないのは東西問わず同じでしょう。そんな事を報道者は分かってなさそうです。そして高野さんはそれをどんな場面でも実地でやっている。(議員さんは更に酷くてメモも取らずに次から次へと聞くだけ聞いて移動して行きました)
証言者の積み重ねが報道。高野作品はそこが秀でていると感じます。しかも自分とのやり取りまで載せるから、どうしてそういう言葉を目の前の人が言うのかまで分かる。その丁寧さ。このアヘンとワ軍の話もまさにそれをやっています。信用されるまで、どれ位掛かっているんでしょうね。そこも編集せずに追ってみると…物凄い時間になるかな笑。なぜこんなに楽しいのでしょう。そこは解明などしないで読み続けたいのが高野さんの作品です。
Ps.今迄5冊くらいの高野作品を読みましたが、この本が格段に苦労している旅の感じがします。それ故少々息苦しくなったり。それが寧ろ当たり前な文化の違いある地域に踏み込んでいるからだけれど、今迄も。マラリアは沢山刺されないとならない、という高野さんの思い違いもあるかも知れない。誰も経験と知識からしか計れないから衝突もするし、曲げられないのでもあるし。普段の暮らしにも重なる部分もあっての感慨にもなりました。
2017年4月15日に日本でレビュー済み
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高野氏の作品が気に入って,これで3作目となります
(これまでは,アマゾンとトーキョウを読みました)
文体自体はいつもの高野氏と変わらないのですが
内容はこれまでの作品と違って,おもいっきり渾身のルポタージュです
もちろん,政治的なことに終始しているわけではないのですが,
何よりも人が好きな 高野氏だからこその(この人好きこそ 高野氏の最大の魅力であり 原動力だと思っています)
そこに暮らす 人々の目線から しっかりとその国の内情を浮き彫りにした 大作です!
高野氏自身があとがきで自身の「背骨」にあたる作品と書いているように
この作品はもっと,もっと(国際的にも)評価されてよい物だと感じました。
高野氏の作品が好きな人はもちろんのこと
これまで,きわもの感があって高野氏の作品に手を出さなかった人にも読んでもらいたい本で。個人的には☆7つの作品です!!
(これまでは,アマゾンとトーキョウを読みました)
文体自体はいつもの高野氏と変わらないのですが
内容はこれまでの作品と違って,おもいっきり渾身のルポタージュです
もちろん,政治的なことに終始しているわけではないのですが,
何よりも人が好きな 高野氏だからこその(この人好きこそ 高野氏の最大の魅力であり 原動力だと思っています)
そこに暮らす 人々の目線から しっかりとその国の内情を浮き彫りにした 大作です!
高野氏自身があとがきで自身の「背骨」にあたる作品と書いているように
この作品はもっと,もっと(国際的にも)評価されてよい物だと感じました。
高野氏の作品が好きな人はもちろんのこと
これまで,きわもの感があって高野氏の作品に手を出さなかった人にも読んでもらいたい本で。個人的には☆7つの作品です!!