著者はおそらくフェアな人なのでしょう。
自分の言葉に責任を持とうとしています。
それは本書に収録された
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』
に関する評論から窺うことができます。
『王立宇宙軍』
は、ある異世界のお荷物宇宙軍が、
様々な妨害を乗り越えながら、有人ロケットの打ち上げをする話で、
制作したのは、当時まだアマチュア集団だった『ガイナックス』です。
著者は、
『王立』
が公開された1987年にアニメは冬の時代に入った、
という前提に立ち、その年はそれまでの「アニメの歴史」が
切断された地点だった、とします。
そうした状況を踏まえ、誰も望まないロケットの打ち上げという行為と、
ガイナックスの映画製作を同一視し、彼らが「歴史」を志向した行為だ、
と解釈しました。
しかし、後になって著者の解釈は「誤り」だったことが判明します。
一つは、1987年からアニメの放送本数が実際には増えていたこと。
もう一つは、
『王立』
の監督である山賀博之氏が2002年のインタビュー記事で
作中の宇宙軍と自分達を同一視するのは間違いと明言していることです。
ただ、そうであったとしても、一概に「誤り」としていいのでしょうか?
まあ、放送本数はともかく、1987年頃にブームが終焉したという
ファンとしての実感は確かにあったはずです。
そして、監督の発言にしても、たしかに彼らには彼らなりの
現実的な計算があり、作中の人物よりも〈スレて〉いたのかもしれません。
しかし、自分達の実力を存分に発揮し、世間をあっと言わせてやろう
という気持ちがあったのも間違いないはずです。
いわばコミックバンドと言われていたサザンが
『いとしのエリー』
で世間に本格派と認知させたように。
「やろうと思えば、こんなもんさ!!」という意識だったに違いありません。
そして実際、後に
『エヴァ』
を生み出す彼らは「歴史」になったのです。
筆が滑ったとはいえ、著者の評論は本質的には決して誤りではないと思います。
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