何よりも印象に残ったのが冒頭を飾るタイトル曲「Awakening(覚醒)」での透明感のあるピアノ・ソロ。美しくも切ないクリスタルな響きは松居慶子のピアノにも似て胸に染みる。2曲目以後は真夏のビーチでまどろんでいるかのようにゆったりとしたグルーヴが続き,「もう少しアップテンポでも・・・」と思うところもあるが,Wendy Matthewsをヴォーカルに起用したことが功を奏しており,キュートで適度にソウルフルな彼女の歌声が爽やかな躍動感を与え,バランスが取れている。ブラコン感覚のメロウな「Only Love Affair」,オリエンタル調の「It Isn’t Easy」などがその好例だが,秀逸は「Blue And Moody Music(Wendy’s Version)」だろう。爽やかな躍動感にあふれたメロウでスムースなアップテンポ。佐藤博自身が歌うオリジナル・バージョンよりも数段良い。本場のAOR/ブラコンでもこんな良い曲にはそうそうお目にかかれない。