1800年代半ば。産業革命によって強大な牙を持つ猛犬の群れとなった欧米は、植民地化の脅威を日本にもたらした。幕末・明治維新とは、その脅威に対抗すべく、日本を近代化しようと走り回った日本の犬たちの、闘争と挫折の物語だワン、というのがこの漫画の概略。
ウェブ連載されたものに、あとがきと各回を振り返る対談を加え単行本化。
幕末の重要人物を各回一人ずつ取り上げ、彼らが何を行ったか、その評価はいかなるものかを、押井氏が語っていく。
全ての登場人物(西尾氏以外)がかわいい犬になっているし、随所に西尾氏のツッコミが入るので、これまでの押井氏の著作とまったく雰囲気が違って、とても読みやすい。
「漫画で歴史を語る」のは『風雲児たち』や『ゴーマニズム宣言』と共通する。ただ、本書は二人の作者の漫才をはさむことで、「あくまで押井氏の見解ですよ。正誤は自分で判断してね」という感じが伝わり、その分、良心的な気がした。
「ペリーって黒船の人だよね」くらいの認識の私には、この時期の歴史と人物について、楽しく学べた。
先の概略に書いた、「明治維新とは、植民地主義に対抗するための近代化」とか「幕末とは、その際の幕府をめぐる動乱」という考えは、学校で習った歴史の出来事をうまく整理することができ、頭の中がとてもすっきりした。各回登場するペリーや竜馬、西郷などの人物についても同様で、彼らの行為とその歴史上の意義がなんだったのか、とてもわかりやすく読めた。
充実の内容と、版型がA5版と大きいわりに価格が840円(税込)と比較的手頃なので、評価は★★★★★。
本書の売れ行きしだいでは、『わんわん新撰組』や『わんわん日露戦争』が出るらしいが、ぜひ読みたい。
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