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われら (岩波文庫) 文庫 – 1992/1/16

ザミャーチン (著), Евгений И. Замятин (原著), 川端香男里 (翻訳)

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商品の説明

内容紹介

ザミャーチン（一八八四―一九三七）の代表作で，一九二○年代初期の作．ロシアの政治体制がこのまま進行し，西欧のテクノロジーがこれに加わったらどうなるかという未来図絵を描いてみせた，アンチ・ユートピア小説である．最も悪質な反ソ宣伝の書とされ，長く文学史から抹殺されてきたが，一九八八年に初めて本国でも公刊された．

内容（「BOOK」データベースより）

20世紀ソヴィエト文学の「異端者」ザミャーチンの代表作。ロシアの政治体制がこのまま進行し、西欧の科学技術がこれに加わったらどうなるか、という未来図絵を描いてみせたアンチ・ユートピア小説。1920年代初期の作だが、最も悪質な反ソ宣伝の書として長く文学史から抹殺され、ペレストロイカ後に初めて本国でも公刊された。

登録情報

文庫: 371ページ
出版社: 岩波書店 (1992/1/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4003264517
ISBN-13: 978-4003264515
発売日： 1992/1/16
梱包サイズ: 14.4 x 11 x 1.8 cm
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きぬやん

本国では長く刊行されなかった

2017年7月20日

形式: 文庫Amazonで購入

　ロシアの作家ザミャーチンによるアンチユートピア小説です。著者の本国であるソ連では長く刊行されることがなかった本書では、政治の秩序化と科学技術の進化が行き過ぎ抑圧される人々が描かれています。
　ディストピア文学としては、オーウェルの『1984』の方がはるかに有名です。『1984』は描写が細かくなされていて物語の設定も本書と比較すればより現実的な設定ではありますが、私は『われら』の方が好きです。『われら』の方が人間のありのままの姿を、人間の精神の機微を描き出し、それに想いを馳せる読者の想像力を喚起させるような内容になっていると思います。
　『1984』よりもSF的なテイストも薄いので、SFよりも純文学が好きだというような人であれば、『1984』よりも本書の方が面白く読めると思います。

コメント 4人のお客様がこれが役に立ったと考えています. このレビューは参考になりましたか？

2013年3月3日

形式: 文庫

ソビエトのSF小説。
登場人物には名前がない。番号で呼ばれている。ちなみに主人公は宇宙ロケット＜インテグラル＞の製作担当官D-503号である。
彼ら”単一国”の住民は、時間律法表により、行動が定められている。子どもは国家の財産で、性行為は予約制（ピンククーポンを使用）になっている。
様々な儀式も行われる。
”恩人”に満場一致で賛成投票を行う、”満場一致デー”。公開処刑。
淡々と書かれているけれども、異様な世界である。そこに住む人は自ら幸せだと感じている。自由は害悪なのだ。

『三人の解放奴隷』の挿話（ｐ.298）は悲劇だ。労働から解放され、自由を与えられた三人が、時間の使い方も分からず、空気を相手に労働をし、耐えきれずに10日目に自殺したという。
想像力は病気とされている。その”治療”のため、全国民が脳神経の手術を受ける日がやってくる・・・。

I-330号との恋愛（←僕らの視点では、明らかに恋愛なのだが、”単一国”では認められていないので、主人公はただ苦悩しているのが憐れである。）や、O-90号の妊娠問題など、所有を禁止された世界の悲惨が書かれている。

究極の共産主義＝ディストピア。
ソビエト時代、発禁になるのも頷ける。

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2002年11月1日

形式: 文庫

SFの古典的名作なので、SF好きな方なら、一読の価値ありです。
SF嫌いでも、社会学辺りに興味のある方なら、
結構、興味深く読めると思います。
個人的には、同じく全体主義的な社会を描いた
ジョージ・オーウェルの「1984年」と比べると、
やや印象が幻想文学的なところが、好きだったりします。
この本を読んで、アンチユートピアものに興味を持たれたら、
前述の「1984年」の他に、ハックスリーの「すばらしい新世界」、
というのもチェックしてみてくださいね。こちらは、
'30年代の作品ですが、作者が英国人なので、大衆文化の行き着く先、
という意味で、より、身につまされる部分が多いと思います。

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2008年7月10日

形式: 文庫

人々は員数で呼ばれ、名は持たず、外にも、野蛮な動物は一匹たりとしていない。
夜に夢を見るものは病気であり、自然も見事制御され、巨大な緑の壁が街全体を覆い、個々の生活はガラス張りとなって世界は、完全に統治されている。
われらと記せば「われ」は意味を成さず、それにしたがい、この書に記された一人称は身震いするほど胸に差し迫ってくる。
……真の文学者とは狂信者、隠遁者、異端者、幻視者、懐疑家、反抗者のみによって生み出されると記したザミャーチンの怪作である。
木を見て森を見ぬリアリズムは一時代で終焉を迎えるだろうが、身の危険を顧みず総合主義という作者特有(併し真の物書きの代名詞的な)リアリズムはおそらく森の中で敢えて木に身を据えることで生きる希望、その絶望的な自覚を勝ち取りたかったのではあるまいか?
個人の報われぬ心の飢餓生活を宇宙規模に見立てれば、狭く深いトンネルの闇に堕ち、そこには一点の灯りもない。
それでも生きねばならぬ理由があるとしたら、この物語に出てくる恐るべき全体主義の統治者・「恩人」のもとに導かれる道(ここでは個人が個人ではなくなり一介の『われら』として吸収される意味合いだ)を選択するのではあるまいか?
この警鐘は仏教的に換言すれば、末法世界を如何にして主眼を根底的に叩き上げながら乗り切るか? との問いに立たされるべき精神修練の意味合いにも似ていると思われる。
それは同じ穴のムジナを捜すからこそ不和を生産する排他的な個人ないし「われら」の向かう一つの到達点の背理、或いは善人こそが待ち望んでいる最高級ユートピアの狭窄な仲間意識的背理かも知れないからだ。
人間が尊厳を奪われることなく個々の営みを持たせてもらう以上、この小説は恒久的に古びることはないであろうし、また、あってはならない。
レーニン政権下から、半世紀以上も文学史から抹殺された悲劇を、ふたたび考えねばならぬ時代が、つよく自分自身を顧みると、
今すでに、そこにあるのである。

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カスタマー

モノフォニーの中の不協和音

2003年2月23日

形式: 文庫

社会主義、全体主義国家ロシア、そこには「わたし」はなく、「われら」があるのみである。「わたし」は「われら」の一部となる。そこでは様々な「わたし」が発するポリフォニーは聞こえてこない、聞こえてくるのは「われら」の発する一つのモノフォニーである。
そのような社会、「われら」の社会の中で「魂」を持ってしまった男、統制されたモノフォニーの中に生まれる不協和音、それはやがて幾万の「わたし」たちの発するポリフォニーへと変わっていくのだろうか。
「私は私であり、独立した存在、一つの世界であった。わたしはいつものように半端な数であることをやめ、一という整数になったのである」ということに気がついた男のたどった結末は・・・。
そして本作でロシアの社会主義体制と西欧の科学技術が融合したアンチユートピアの世界を描いたロシア文学の異端・ザミャーチンもまた反ソ主義者であるとして長くロシア文学史から抹消されることとなったのである。

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2003年3月29日

形式: 文庫

アンチユートピア小説のなかでも、「クリスタル派」と呼ぶべきような作品。
数学用語などを多用しながらも分かりやすく、ザミャーチンの描く近未来の世界が鮮やかに表されている。また、川端氏の訳も非常に美しく、おもわず唸ってしまうような日本語表現が随所に見られ飽きさせない。
主人公の内面の変化が丁寧に描かれる一方、SF小説顔負けのスリルとスピード感があり、
非常に読み応えある作品である。

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カスタマー

人間性とは・・・。

2001年5月18日

形式: 文庫

著者が作品のなかで暗に示している「ソ連体制の未来予想図」に圧倒されました。作品が書かれた１９２１年の時点で、著者がこれだけのことをすでに予想してしまっていたということにショックを受けました。理性、感情、自由、科学、そして人間…。真の人間性について非常に考えさせられる１冊です。

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