文学ジャンルのひとつSFには「人間が描かれていない」との批判がつきまとう。ロボットが主役の本作などがそう。が、この批判は今の時代にあって古くなったのではないか。ロボットはこういうものなんだと描く。そうなのかと読む読者は、人間とはちがうなと思う。そこで、そもそも人間ってなんなんだと普段意識しなかった命題を考える。人間以外を描く手法によって人間を描く。気取っていえば「我想う、ゆえにわれは人間を知る」か。
ロボット三原則も同じ。私はあの決まりは「人間社会のカリチュア戯画」だと思っている。
簡潔にしてよくできている三原則。これで問題は起きないはずなのにトラブルは起きる。それも、時代を経てロボットが高性能になればより深刻に。なぜなのか。それはロボットがエゴ=自我を持つようになるからではなかろうか。
もう一度人間をみてみる。人間社会にも決まりはあり、ルールはあり法律がある。守っていれば平穏に収まるはずなのにしばしば決まりは守られない。守るのがみんなのためとわかっていても破るのはエゴの為せるためにほかならない。
人間とは不完全な存在だ。間違うし、気分にムラがあるし、自分勝手。昨日は正解を出せたのに今日は間違う。なぜ間違えたのか誰にも説明はつかないわからない。さっきは機嫌がよくても今は不機嫌で他者への対応がまるで狂ってくる。みんなの幸福よりも自己の利益のほうが量りがおもい。不合理だとわかっていてもそうすることがある。
神が人間を創ったのかどうかはわからないが、たしかなのは、不完全な人間には完璧な神をつくることはできない事実。人間がつくった宗教がいかに不完全であることか。
技術は進歩するだろう。ロボット工学も。ロボットが進化し高度なものになれば「人間のようにものを考え、自律できる」ようになるだろう。そうなれば、自我あるロボットは人間のように「間違えるしムラがあるし自分勝手な」ロボットになるだろう。高性能になり人間に近づくほど、完璧ではありえないエゴ=自我ある存在になる可能性がある。
アシモフはどこまで見通していたか、それはわからない。進歩した完璧なロボットが築く明るい未来を想定していたのかもしれない。だがわたしの読後感は、暗いイメージにつぶされた。アシモフは、ロボットの限界すなわち人間の限界を知っていたからこそこうした物語を構築したのではないかと。
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われはロボット〔決定版〕 Kindle版
アイザック アシモフ
(著)
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言語日本語
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出版社早川書房
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発売日2014/4/25
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ファイルサイズ429 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。
--このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
小尾/芙佐
1955年津田塾大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
1955年津田塾大学英文科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00O1VK072
- 出版社 : 早川書房 (2014/4/25)
- 発売日 : 2014/4/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 429 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 318ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 9,566位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2020年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あまりにも有名な古典。古典は得てして退屈なものであり、本書も敬遠していたのだが、本書はSFだからか、古臭さも感じずに読むことができた。中盤がやや冗長だが、ペット型ロボット無しには生きていけなくなってしまった女の子のエピソードや、人間になりすましたロボットのエピソードが極めて秀逸だった。本書が元祖と言われるロボットSFだが、これ以後のロボットSFのあらゆるパターンが既に本書でカバーされており、本書が古典であるとされる所以がよく分かった。
2021年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品が書かれたのは1950年で、作品は2000年か、2050年の設定です。アシモフは科学全般の科学啓蒙活動も熱心で、科学解説書の方が多いくらいですがその豊富な知見が本作品にも活かされています。
評者が最初に作品に接したのは1980年。すでに作品が書かれて30 年がたって、多くの分野で設定のディテールは一見実際と異なるように見えました。たとえば陽電子頭脳と少しでも似たものは存在しませんが、それは本質的な欠点ではありません。ロボットを実現する科学文明の主な動きをアシモフは的確に捉えて50年にわたる変化を見事に描いています。
その後2000年、2020年と、20年ごとに読み直していますが、この作品に秘められたアシモフの深い洞察には舌を巻きます。
今は、なぜ、物語の大筋においてこれほど見事なプロットを作れたのかということに関心が向いてきました。多分彼の関心が個々の技術ではなく、歴史と社会に向いていたからかもしれません。科学技術の分野で、どのような新しい技術が発見されるかは予測不可能ですが、人間社会が何を求めるか、どう振る舞うかは、歴史から読み取れるからです。
2050年はなんとか見られそう。どんな時代になるか楽しみです。
評者が最初に作品に接したのは1980年。すでに作品が書かれて30 年がたって、多くの分野で設定のディテールは一見実際と異なるように見えました。たとえば陽電子頭脳と少しでも似たものは存在しませんが、それは本質的な欠点ではありません。ロボットを実現する科学文明の主な動きをアシモフは的確に捉えて50年にわたる変化を見事に描いています。
その後2000年、2020年と、20年ごとに読み直していますが、この作品に秘められたアシモフの深い洞察には舌を巻きます。
今は、なぜ、物語の大筋においてこれほど見事なプロットを作れたのかということに関心が向いてきました。多分彼の関心が個々の技術ではなく、歴史と社会に向いていたからかもしれません。科学技術の分野で、どのような新しい技術が発見されるかは予測不可能ですが、人間社会が何を求めるか、どう振る舞うかは、歴史から読み取れるからです。
2050年はなんとか見られそう。どんな時代になるか楽しみです。
2020年7月11日に日本でレビュー済み
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ロボット工学の三原則
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットはにんげんにあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ロボットを語るにあたって、必ずといっていいほど言及されるロボット工学三原則が生まれた連作。
読み進むにつれて、三原則の議論がどんどんと深まっていく過程を見ることができる。
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットはにんげんにあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ロボットを語るにあたって、必ずといっていいほど言及されるロボット工学三原則が生まれた連作。
読み進むにつれて、三原則の議論がどんどんと深まっていく過程を見ることができる。
2014年10月19日に日本でレビュー済み
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小説を読む前、この素っ気ない文言がどれほど大きな意味をもつのか、私には全く想像できませんでした。
--- 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない ---
最終章まで読み終えた今、この「ロボット工学三原則」の第一条が光り輝いて見えます。
それは、いつの日か人類が『技術的特異点』に到達したとき、直面するであろう問題を投げかけているのです。
--- 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない ---
最終章まで読み終えた今、この「ロボット工学三原則」の第一条が光り輝いて見えます。
それは、いつの日か人類が『技術的特異点』に到達したとき、直面するであろう問題を投げかけているのです。