ある高校で実践された,取材と議論を通して長文を書くクラスの半年にわたる観察記。
このクラスは尋常ではない。教師は学生の質問に「僕に聞かないでください」とのたまい,点数は公開授業中に生徒同士がつけあう。
しかし,そこには真の知を獲得する過程のすべてがある。取材対象から得たデータは,クラスの議論の中でインタビュアー自身にしか描けない内容へと昇華され,同時にその内容は,クラスという共同体が承認するだけの合理を備えていき,遂には文章に表現される。調べるだけ,覚えるだけ,やってみるだけ,思いつくだけ,の教室とはまったく異なる,まさに,あふれる情報を価値ある知として獲得する道のりを具現したクラスだと,私は感じた。
ただしその実現には,一見テキトーな,実際繊細な,秘訣が山とあるようだ。本書はそのエッセンスを,若い教室を満たす清涼感をそのままに,簡潔丁寧に語りきっている。とは言え,この本を読めば同じような教室や会議を運営できることは決してなかろう。あくまでも「こんなことも可能だよ」との紹介にとどまるものであり,冒頭と付録の解説論文を含めてもその印象は変わらない。
自分のところの会議でも,つい本書のような運営をしてみたくなって,軽い興奮のなか読了した一冊であった。
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わたしを語ることばを求めて―表現することへの希望 単行本 – 2004/3/1
本書は、早稲田大学本庄高等学院三年生の「日本語総合」の授業実践と観察の記録である。日本語教育研究者・細川英雄と牲川波都季と14名の生徒が、他者との真摯な関わりを通じて「わたしのことば」を獲得していくドキュメントである。
- ISBN-104385361983
- ISBN-13978-4385361987
- 出版社三省堂
- 発売日2004/3/1
- 言語日本語
- 本の長さ300ページ
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商品の説明
著者からのコメント
高校生への「日本語表現総合」は、外国人のための日本語教育の手法を国語教育の教室へ導入し、思考と表現の往還プロセスを生きた形で実現した試みです。今、国語教育はこれでいいのか、と考える、すべての教師に贈る熱いメッセージを受け止めてほしいと思います。皆さんからのご意見・ご感想お待ちしています。
内容(「BOOK」データベースより)
子どもに関わるすべての人へ。14名の高校生が挑んだ、「わたしのことば」獲得へのドキュメント。
内容(「MARC」データベースより)
表現することの困難と希望の中で、ある時はしたたかに、ある時は他者の表現に揺るがされながら、「わたし」を表現することとはどういうことか? 14名の高校生が挑んだ、「わたしのことば」獲得へのドキュメント。
著者について
1949年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得信州大学,金沢大学を経て,現在早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。博士(教育学)
主要著書として、『パリの日本語教室から』(三省堂1986)、『日本語教育と日本事情―異文化を超えて』(明石書店1999)、『日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践―』(明石書店2001)、共編に『「総合」の考え方と方法』(早稲田大学日本語研究教育センター2003)『国語表現I・II』(三省堂2003・2004)などがある。
早稲田大学第一文学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得信州大学,金沢大学を経て,現在早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。博士(教育学)
主要著書として、『パリの日本語教室から』(三省堂1986)、『日本語教育と日本事情―異文化を超えて』(明石書店1999)、『日本語教育は何をめざすか―言語文化活動の理論と実践―』(明石書店2001)、共編に『「総合」の考え方と方法』(早稲田大学日本語研究教育センター2003)『国語表現I・II』(三省堂2003・2004)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
牲川/波都季
1974年富山県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、早稲田大学日本語研究教育センター助手、早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程在学
細川/英雄
1949年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。現在、早稲田大学大学院日本語教育研究科教授(言語文化教育論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1974年富山県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、早稲田大学日本語研究教育センター助手、早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程在学
細川/英雄
1949年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。現在、早稲田大学大学院日本語教育研究科教授(言語文化教育論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 三省堂 (2004/3/1)
- 発売日 : 2004/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 300ページ
- ISBN-10 : 4385361983
- ISBN-13 : 978-4385361987
- Amazon 売れ筋ランキング: - 875,848位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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著者について
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1949年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得、博士(教育学)。信州大学、金沢大学、早稲田大学日本語研究教育センターを経て、2001年より早稲田大学大学院日本語教育研究科教授、2013年3月選択定年制により早期退職、現在、早稲田大学名誉教授、言語文化教育研究所八ヶ岳アカデメイア主宰。
1990年代後半より日本語教育と国語教育を結び第三の言語文化教育をめざす学習者主体の言語教育理論を展開するとともに、その実践活動の場としての言語学習環境およびその設計について検討を加え近年では言語活動主体としての言語話者のあり方について、「ことばの市民」という概念を提案している。
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2005年2月6日に日本でレビュー済み
上級レベルの日本語教育と国語教育のちょうど境界上にいる学校教育段階の生徒にとって本当に必要なことは、何なのだろうか? いったい何から手をつければ、いいのだろう? 高校で働くことばの教師として、そんな悶々とした悩みを抱えていた私にとって、本書との出会いは衝撃的なものでした。日本語教育にしろ国語教育にしろ、教師の役割とは、生徒ひとりひとりが自分自身のことばを見つけ獲得していくきっかけを学習活動の中に作り出す事ではないか。それがやがては他者や社会と関わっていく大事なきっかけにもなるのではないか。『わたしを語ることばを求めて』との出会いによって、そのことを教えられたように思います。本書は、W高等学院の高校生に対する「日本語総合」の授業実践をもとに書かれたものですが、授業を担当する実践者とそれを記録する観察者、そして生徒たちへの真摯なことばと態度が読む者の心を打ちます。日本語教育や国語教育に携わる先生方はもちろん、ことばの教育に関わる全ての人に読んで欲しい一冊です。