私は、レビューのなかで「わかりやすい」を肯定として使うことがあるので、書名を見た時にドキッとした。ただ、実際には「わかりやすい」ことが必要なものも多い。例えば、電化製品などのマニュアルが典型だ。わかりやすくないと不便で仕方がない。しかし、何でも「わかりやすい」方がいいのだろうか。
本書は、そういった溢れる「わかりやすさ」に著者が様々な角度から疑問を投げかけている。
選択肢を限られること、とにかく簡単に要約で済ませようということなどに対する批判に加え、わからないことをそのままにしておくことなどの主張にも共感した。例えば、三谷幸喜氏の作品中によく出てくる「赤い洗面器の男」の話など、オチがわからないからこその魅力と言える。
二択で選べないことは山のようにあるし、フィクションを要約すれば、そこからこぼれ落ちていくものが多い。
現実の人生であれば、謎を、「なぜ」を抱えたまま生きていくしかない。一生涯解決しないこともあれば、ある日、解答(回答)に辿り着くこともある。その場合の喜びは大きい。「わかりやすい」だけであれば、その喜びを味わうこともない。
だいたい、簡単にわかったことは、あまり記憶にも残らない。少なくとも私はそうだ。思考力も下がってしまう気がしてならない。
本書の真髄は、このレビューでは要約できない。だからこそ、本書を手に取って考えて欲しい。
わかりやすさの罪 (日本語) 単行本 – 2020/7/7
武田 砂鉄
(著)
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本の長さ278ページ
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言語日本語
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出版社朝日新聞出版
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発売日2020/7/7
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寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
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ISBN-104023318760
-
ISBN-13978-4023318762
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商品の説明
出版社からのコメント
“わかりやすさ"の妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。
「すぐにわかる! 」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。
「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ! 」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。
私たちはいつだって、どっちでもないはず。
納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。
【目次】
はじめに
1 「どっちですか?」の危うさ
2 「言葉にできない」
3 要約という行為
4 「2+3=○」「○+○=5」
5 勝手に理解しないで
6 理解が混雑する
7 「一気にわかる! 」必要性
8 人心を1分で話すな
9 なぜそこで笑ったのか
10 なぜ笑うのか、なぜ笑えないのか
11 全てを人に届ける
12 説明不足
13 「コード」にすがる
14 ノイズを増やす
15 4回泣けます
16 コーヒーを吹くかもしれない
17 深いって何だろう
18 見せかけの優位
19 偶然は自分のもの
20 わざと雑にする
21 そんなこと言ってないのに
22 自分に迷わない人たち
23 みんなで考えすぎ
24 人はいつもぐちゃぐちゃ
おわりに コロナ禍の「わかりやすさ」の中で
「すぐにわかる! 」に頼り続けるメディア、ノウハウを一瞬で伝えたがるビジネス書、「4回泣ける映画」で4回泣く人たち……。
「どっち?」との問いに「どっちでもねーよ! 」と答えたくなる機会があまりにも多い日々。
私たちはいつだって、どっちでもないはず。
納得と共感に溺れる社会で、与えられた選択肢を疑うための一冊。
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はじめに
1 「どっちですか?」の危うさ
2 「言葉にできない」
3 要約という行為
4 「2+3=○」「○+○=5」
5 勝手に理解しないで
6 理解が混雑する
7 「一気にわかる! 」必要性
8 人心を1分で話すな
9 なぜそこで笑ったのか
10 なぜ笑うのか、なぜ笑えないのか
11 全てを人に届ける
12 説明不足
13 「コード」にすがる
14 ノイズを増やす
15 4回泣けます
16 コーヒーを吹くかもしれない
17 深いって何だろう
18 見せかけの優位
19 偶然は自分のもの
20 わざと雑にする
21 そんなこと言ってないのに
22 自分に迷わない人たち
23 みんなで考えすぎ
24 人はいつもぐちゃぐちゃ
おわりに コロナ禍の「わかりやすさ」の中で
内容(「BOOK」データベースより)
次々と玄関先に情報がやってくるから、顧客が偉そうになった。わかりやすさの妄信、あるいは猛進が、私たちの社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。
著者について
武田砂鉄 (たけだ・さてつ)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。
著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)、『芸能人寛容論―テレビの中のわだかまり』(青弓社、2016年)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋、2017年)、『日本の気配』(晶文社、2018年)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアでの連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している。
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。
著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)、『芸能人寛容論―テレビの中のわだかまり』(青弓社、2016年)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋、2017年)、『日本の気配』(晶文社、2018年)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアでの連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
武田/砂鉄
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。著書に『紋切型社会―言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞、2019年に新潮社で文庫化)などがある。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2020/7/7)
- 発売日 : 2020/7/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 278ページ
- ISBN-10 : 4023318760
- ISBN-13 : 978-4023318762
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 47,739位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 123位社会と文化
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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2020年7月14日に日本でレビュー済み
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ベスト500レビュアー
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NHK「これでわかった!世界のいま」という番組で、アメリカの人種差別に対する抗議デモの背景を解説する動画が逆にとんでもなく人種差別的であるということで批判が殺到し、謝罪した。「わかりやすく」説明しようとすることがステレオタイプに直結するということを実にわかりやすく見せてくれた一件だった。それを見て思ったのが、NHKを含むあらゆる時事解説系番組の「池上彰化」がこうした不祥事につながったということ。その池上彰氏が本書と時をたがわずして『わかりやすさの罠』という本を出したというのだから皮肉なものだ。その本は読んでいないからなんともいえないが、池上氏が自分が「わかりやすい」の権化として消費されることに対して危機感をもっているということだろうか。読んでいない本の話はさておきこの本だ。メディアに蔓延する「わかりやすさ」病とでもいえそうな現象に斬り込むという企画である。池上彰化するメディアについてつらつらと考えていたときだったので思わず手に取った。結論から言うとわかりやすさについての論考を読むというより、いちゃもんを聞かされているような気分になる本だった。素材は良いのだけれど生煮えというか。味がしっかりついていないというか。この本を読んで「残尿感があるのだとすれば本望」とあとがきには書いてあるが、残尿感ではなくて味気無さ。わかりやすさやスッキリ感に警戒しろといっている本ではあるのだが、世相を斬るコラムなのだから、何カ所かは「膝を打つ」ような箇所があってほしい。といっても通読はした。引用している本などは興味深いものもあり、むしろレファレンスとして読める。ベルクソンの『笑い』、アーチャー&ジョッカーズの『ベストセラーコード』などは通しで読んでみよう。と書いて思い出したが、本の「まとめサービス」についての見解には膝を打ったのだった。昔からあるサービスだが、しょせんまとめはまとめであるという節度がまとめる側にもまとめを読む側にも失われている気がする。真実や現実は簡単にはまとめられない。そこはもう文学の出番かなと思う。芝居が終わってから「誰が悪者なのですが」と聞く観客の態度に嘆く鴻上尚史の話が出てくるが、そういう質問を引き出すのが文学だ。
ベスト500レビュアー
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「わかりやすさの罪」というタイトルの本で、中身もその通りの内容。簡単に要約することを良しとしないという趣旨のことも書かれているので、分かりやすく要約してレビューするような行為は著者の意に反すると思う。なので、あくまで一読しての感想を。
個人的には、ときおり感じるモヤモヤ感の正体を上手く言語化してくれており、何度も頷きながら読んだ。ただ、その言語化は一直線に行われるものでなく、モヤモヤの正体に行き着くまでに距離があった。この距離をもって、「わかりにくい」「読みにくい」という感想を抱く人もいると思うが、その距離こそがモヤモヤの核心であって、そのモヤモヤを綺麗に整理してしまうと、かえってモヤモヤがモヤモヤでなくなってしまうと思う。この本を読みながら、モヤモヤを感じ、そして、その正体に迫ることが出来るはず。
特に「なるほど」と思ったのは、「わかりやすいこと」と「雑に考えること」が特に共犯関係になるという指摘。雑がわかりやすさを生み、わかりやすさが雑を生む。この共犯関係に着目しての、政治界隈の不穏な動きの読み解きはまさに卓見だと思った。
わかりやすい本を求めている層は途中で読むことを諦めてしまいそうだが、当方は最後まで手が止まらずに一気に読み終えた。
個人的には、ときおり感じるモヤモヤ感の正体を上手く言語化してくれており、何度も頷きながら読んだ。ただ、その言語化は一直線に行われるものでなく、モヤモヤの正体に行き着くまでに距離があった。この距離をもって、「わかりにくい」「読みにくい」という感想を抱く人もいると思うが、その距離こそがモヤモヤの核心であって、そのモヤモヤを綺麗に整理してしまうと、かえってモヤモヤがモヤモヤでなくなってしまうと思う。この本を読みながら、モヤモヤを感じ、そして、その正体に迫ることが出来るはず。
特に「なるほど」と思ったのは、「わかりやすいこと」と「雑に考えること」が特に共犯関係になるという指摘。雑がわかりやすさを生み、わかりやすさが雑を生む。この共犯関係に着目しての、政治界隈の不穏な動きの読み解きはまさに卓見だと思った。
わかりやすい本を求めている層は途中で読むことを諦めてしまいそうだが、当方は最後まで手が止まらずに一気に読み終えた。
2020年8月17日に日本でレビュー済み
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なんというか、文章がまったく魅力的でないので読むのが大変ではあるのだが、大いなる流れ、全体の雰囲気といったものにいちいち食って掛かる小うるさい人は世の中に必要だとは思う。ので、一応応援しています。
2020年8月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
谷崎潤一郎ばりのダラダラした文章。
小林秀雄ばりの独善的な文章。
考えてみれば高校時代の教科書、特に数学・理科・社会の教科書は実に分かりにくい代物であった。
例えば昭和史で習った高橋是清蔵相による1931年の金輸出再禁止実施措置。
なんのことかさっぱり分からなかった。
たった一つの事柄を理解するのでも、参考書の助けを借りながら多くのことを調べないと理解不能なことが多く、こんなに不便なものがなぜ「教科書」と呼ばれるのか、不満は募るばかりだった。
しかし今思えばあの難解極まりない書物と悪戦苦闘したことが「考える力」を培ってくれたと思う。
もし教科書が、読むだけでその内容がたちどころに理解できる魔法の本だったなら、自分の頭で「何これ?なぜ?どうして?」と真剣に問うことはしなかっただろう。
とは言うものの、生まれつき歌の上手い人や足の速い人がいるように「複雑な事象を複雑なものとして理解する」ことができるかどうかも、得手不得手があるのではなかろうか。
ジョージ・オーウェルの小説「1984年」や丸山眞男の論文集「現代政治の思想と行動」、小林秀雄の「考えるヒント」は私の愛読書であり、ボロボロになるまで読み返してきた書籍であるが、これらの本を通読して感嘆のため息をもらすことができる人はマイノリティに違いない。
複雑な思考に耐えられない人たちに向かって「分かりやすさを求めることの危険性」を説くのは少し酷なような気がする…。
以上、分かりにくく、論理の飛躍があり、丁寧に説明することを敢えて拒む文体で感想文を書いてみました。
小林秀雄ばりの独善的な文章。
考えてみれば高校時代の教科書、特に数学・理科・社会の教科書は実に分かりにくい代物であった。
例えば昭和史で習った高橋是清蔵相による1931年の金輸出再禁止実施措置。
なんのことかさっぱり分からなかった。
たった一つの事柄を理解するのでも、参考書の助けを借りながら多くのことを調べないと理解不能なことが多く、こんなに不便なものがなぜ「教科書」と呼ばれるのか、不満は募るばかりだった。
しかし今思えばあの難解極まりない書物と悪戦苦闘したことが「考える力」を培ってくれたと思う。
もし教科書が、読むだけでその内容がたちどころに理解できる魔法の本だったなら、自分の頭で「何これ?なぜ?どうして?」と真剣に問うことはしなかっただろう。
とは言うものの、生まれつき歌の上手い人や足の速い人がいるように「複雑な事象を複雑なものとして理解する」ことができるかどうかも、得手不得手があるのではなかろうか。
ジョージ・オーウェルの小説「1984年」や丸山眞男の論文集「現代政治の思想と行動」、小林秀雄の「考えるヒント」は私の愛読書であり、ボロボロになるまで読み返してきた書籍であるが、これらの本を通読して感嘆のため息をもらすことができる人はマイノリティに違いない。
複雑な思考に耐えられない人たちに向かって「分かりやすさを求めることの危険性」を説くのは少し酷なような気がする…。
以上、分かりにくく、論理の飛躍があり、丁寧に説明することを敢えて拒む文体で感想文を書いてみました。
2020年8月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読む人によって、毒か薬にはなるだろう本。
読んで全く無意味な訳ではない(そもそも、そのような本はあるのか?)。
私にとって、この本は、・・・。
なぜなら、・・・。
思うことはありますが、安易なreviewを書くと、
書籍やコラムで曝されますので、これ以上は書きません。
読んで全く無意味な訳ではない(そもそも、そのような本はあるのか?)。
私にとって、この本は、・・・。
なぜなら、・・・。
思うことはありますが、安易なreviewを書くと、
書籍やコラムで曝されますので、これ以上は書きません。
2020年7月27日に日本でレビュー済み
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単純に何でも表現されないし、また理解してもらわなくてはならないという風潮に
こうじゃないんだと、しつこく語ってくれる。
深読みよりも浅読みが加速していく社会は、生きにくさも加速していくのにね
こうじゃないんだと、しつこく語ってくれる。
深読みよりも浅読みが加速していく社会は、生きにくさも加速していくのにね