「ゆるカワ」にフォーカスしながら埴輪に始まり、日本の美術史を語る本書。
馴染みのない作者も多く登場し、見聞を広げさせられる。
禅画で紹介されている仙厓義梵の布袋図の子供や一見ブタかと思えるような犬図のゆるカワは秀逸。
耳鳥斎の「絵本水や空」などもはや現代のギャグ漫画として通ずる。
18世紀の医学書に茨木元行が描いた蟯虫や肺虫はコミカルで思わず可笑しくなる。
有名どころだと、
お馴染み伊藤若冲も紹介されており「蝦蟇河豚相撲図」のカエルとフグの相撲を取っている絵が誠にユーモラスである。
さらに
円山応挙は可愛らしい子犬。
尾形光琳は竹虎図の虎。
いずれも多くの方は何処かで見たことはある絵だろうが、あらためて「ゆるカワ」として見直すとなるほどと思う。
著者はマンガやアニメで人物を平板に描き、背景は克明に描く。ジブリのような画法は、人物がかわいく見える。リアル過ぎるとかわいくないという。対照的にピクサーなどのCGを用いた作品を挙げている。
好みの問題であろうが、腑に落ちる意見だと感じた。
タイトルが「ゆるい」し、軽いノリで書かれた本かと思うとさにあらず。もちろん写真だけ眺めて「ゆるカワ」の世界に浸るだけでも楽しめるが、文章を読むと、しっかりと美術史を学ぶことも出来る。そして現物を所蔵している美術館へ足を運びたくなる。
もっともっと評価されてよい一冊だと思う。
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ゆるカワ日本美術史<ヴィジュアル版> (祥伝社新書) 新書 – 2019/2/1
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「ゆるカワ」こそ日本文化の重要キーワード
日本がアニメ・マンガ大国やキャラクター天国になったのには理由がある。 西洋では、より実物に肉薄するリアリズムの追求がアートの目標であって、ゆるくてかわいい美術は育たなかった。ところが日本には「ゆるカワ」を大人向けの鑑賞物にしてきた長い歴史がある。それが現代になってアニメ・マンガとして実を結び、世界中の人たちに受け入れられるようになったのだ。
本書は、土偶・埴輪から各時代の仏像、鳥獣戯画はもちろん、その他、中世の寺社縁起絵巻、お伽草子絵巻、近世・近代絵画まで、ゆるカワな名品ばかりを集め、通史とした初の試みである。もうひとつの日本美術史の豊かさに驚かされるにちがいない。
●60点以上の「ゆるカワ」な名作をカラー写真で収録!
日本がアニメ・マンガ大国やキャラクター天国になったのには理由がある。 西洋では、より実物に肉薄するリアリズムの追求がアートの目標であって、ゆるくてかわいい美術は育たなかった。ところが日本には「ゆるカワ」を大人向けの鑑賞物にしてきた長い歴史がある。それが現代になってアニメ・マンガとして実を結び、世界中の人たちに受け入れられるようになったのだ。
本書は、土偶・埴輪から各時代の仏像、鳥獣戯画はもちろん、その他、中世の寺社縁起絵巻、お伽草子絵巻、近世・近代絵画まで、ゆるカワな名品ばかりを集め、通史とした初の試みである。もうひとつの日本美術史の豊かさに驚かされるにちがいない。
●60点以上の「ゆるカワ」な名作をカラー写真で収録!
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社祥伝社
- 発売日2019/2/1
- ISBN-10439611561X
- ISBN-13978-4396115616
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、土偶・埴輪から各時代の仏像、中世の絵巻、近世・近代絵画まで、ゆるカワな名品ばかりを集め、通史とした初の試みである。もうひとつの日本美術史の豊かさに驚かされるにちがいない。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
矢島/新
1960年、長野県生まれ。跡見学園女子大学教授。東京大学大学院博士課程中途退学。渋谷区立松涛美術館学芸員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1960年、長野県生まれ。跡見学園女子大学教授。東京大学大学院博士課程中途退学。渋谷区立松涛美術館学芸員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 祥伝社 (2019/2/1)
- 発売日 : 2019/2/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 264ページ
- ISBN-10 : 439611561X
- ISBN-13 : 978-4396115616
- Amazon 売れ筋ランキング: - 326,359位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 241位東洋・日本美術史
- - 290位祥伝社新書
- - 1,312位日本の伝統文化 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年8月21日に日本でレビュー済み
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殿堂入りNo1レビュアーベスト10レビュアーVINEメンバー
堅苦しさとは無縁の分かり易い語り口で日本美術の面白さを伝えています。
日本美術に登場したものが、こんなに多様でユーモラスな画風やアイテムだったことを教えてもらえる新書でした。あまり一般的に知られていない日本美術の作品も多く、そんな中から「ゆるカワ」のテーマに相応しい絵柄を紹介しているわけですから、従来の日本美術史の本とは一線を画しています。
第1章から第7章まで、結構幅広いジャンルを取り上げ、その特徴と魅力、かわいいポイントなどを示していました。「ゆるカワ」のキーワードとは遠い美術品だと思っていましたが、丹念にみればそのような描き方や取り上げ方がしてあり、新たな発見がありました。
以前、京都と東京の国立博物館で展覧会があった「鳥獣人物戯画(63p)」を紹介してありました。「ゆるカワ美術の代表作」のキャッチ・コピーの通り、確かにかわいい絵柄ですし、本書のテーマとぴったりのイメージを持つ絵巻です。
第5章の「江戸のかわいい動物たち」の愛らしさも興味を覚えました。理屈抜きに江戸絵画に登場したかわいい動物の姿を楽しめるような企画になっています。ここでも、企画した発想と構成力そして掲載絵画のかわいらしさと秀逸さが本書の価値を高めているのは間違いありません。
第5章の目次の掲載画家一覧を見ますと、俵屋宗達、尾形光琳、伊藤若冲、円山応挙、尾形光琳、中村芳中、歌川国芳など江戸時代を代表する絵師の代表的な作品が取り上げられています。
江戸時代に描かれたかわいい動物の愛らしさは、時代を超えて現代に伝わってきます。
多分それは洋の東西を問わず、見る者を魅了するものでしょうし、何かしら我々に語りかけているようでした。そんな可愛い動物の様々な形態を描写した章でした。犬だけでなく、様々な動物を取り上げ、珍しい描き方も多々あり、現代の感覚と比較しても遜色なく、斬新で、個性的な作品が列挙してありました。
現代のペットのイラストに通じる感覚で描かれていました。現代の図案鑑賞の感覚で眺めてみても遜色はない出来栄えですし、時代を超えてその魅力がダイレクトに伝わってきます。
173ページの「応挙の子犬」にスポットライトをあてた文章を楽しく読みました。円山応挙が子犬を沢山描いているのは知っていますし、美術館でも観賞しました。これまで一連の大作と比較してこれまであまり評価されてこなかったのも事実です。
「ゆるカワ日本美術の基本作」という紹介は、本書掲載作品を眺めれば理解できるものでしょう。
「国芳の金魚」で紹介されている金魚も含めて、確かに江戸絵画はかわいらしさに満ちていました。
時代を超えて「ゆるカワ」にスポットライトをあてた企画はとても楽しく、美術愛好家を増やす内容だったと思います。
日本美術に登場したものが、こんなに多様でユーモラスな画風やアイテムだったことを教えてもらえる新書でした。あまり一般的に知られていない日本美術の作品も多く、そんな中から「ゆるカワ」のテーマに相応しい絵柄を紹介しているわけですから、従来の日本美術史の本とは一線を画しています。
第1章から第7章まで、結構幅広いジャンルを取り上げ、その特徴と魅力、かわいいポイントなどを示していました。「ゆるカワ」のキーワードとは遠い美術品だと思っていましたが、丹念にみればそのような描き方や取り上げ方がしてあり、新たな発見がありました。
以前、京都と東京の国立博物館で展覧会があった「鳥獣人物戯画(63p)」を紹介してありました。「ゆるカワ美術の代表作」のキャッチ・コピーの通り、確かにかわいい絵柄ですし、本書のテーマとぴったりのイメージを持つ絵巻です。
第5章の「江戸のかわいい動物たち」の愛らしさも興味を覚えました。理屈抜きに江戸絵画に登場したかわいい動物の姿を楽しめるような企画になっています。ここでも、企画した発想と構成力そして掲載絵画のかわいらしさと秀逸さが本書の価値を高めているのは間違いありません。
第5章の目次の掲載画家一覧を見ますと、俵屋宗達、尾形光琳、伊藤若冲、円山応挙、尾形光琳、中村芳中、歌川国芳など江戸時代を代表する絵師の代表的な作品が取り上げられています。
江戸時代に描かれたかわいい動物の愛らしさは、時代を超えて現代に伝わってきます。
多分それは洋の東西を問わず、見る者を魅了するものでしょうし、何かしら我々に語りかけているようでした。そんな可愛い動物の様々な形態を描写した章でした。犬だけでなく、様々な動物を取り上げ、珍しい描き方も多々あり、現代の感覚と比較しても遜色なく、斬新で、個性的な作品が列挙してありました。
現代のペットのイラストに通じる感覚で描かれていました。現代の図案鑑賞の感覚で眺めてみても遜色はない出来栄えですし、時代を超えてその魅力がダイレクトに伝わってきます。
173ページの「応挙の子犬」にスポットライトをあてた文章を楽しく読みました。円山応挙が子犬を沢山描いているのは知っていますし、美術館でも観賞しました。これまで一連の大作と比較してこれまであまり評価されてこなかったのも事実です。
「ゆるカワ日本美術の基本作」という紹介は、本書掲載作品を眺めれば理解できるものでしょう。
「国芳の金魚」で紹介されている金魚も含めて、確かに江戸絵画はかわいらしさに満ちていました。
時代を超えて「ゆるカワ」にスポットライトをあてた企画はとても楽しく、美術愛好家を増やす内容だったと思います。
2020年12月22日に日本でレビュー済み
キャッチーなタイトルで一見ゆるそうな本に見えるが、中身はしっかりと安心して読める美術史本。著者は学芸員時代、渋谷区松濤美術館で数々の意欲的な展覧会を企画してきた。その蓄積から生まれた本書では、素朴でかわいい特徴を「ゆるカワ」と称し、日本美術のオリジナリティを見出してゆく。対する概念は「リアリズム」、それは中国・西欧から伝来するものであるという。みうらじゅん・いとうせいこう『見仏記』に出てくるキーワード「伝来」「由来」を思い出す。日本美術が西欧へ刺激を与えたジャポニズムを指して、リアリズムの先を行くとか、日本の独自性を強調するような論調には思わず身構えてしまうが、日本美術の展開をゆるカワとリアリズムの間の振れで捉える堅調な史論や、16世紀を素朴絵のピークと見て茶陶に共通性を見出したり、竹久夢二を現代のかわいい文化の基点と位置付けたり、水墨のリアリズムとやまと絵のデザイン性の折り合いが光琳あたりで決着するなど、折々に挟まれる鋭い指摘になるほど唸らされる。“素朴の系譜”という新しい鉱脈が日本美術の中に発掘されるのだが、どうやら著者には東アジアが視野に入っている。次は読者に、東アジアの全体図を示すような、広がりある造形史を書いて欲しい。