むらさきのスカートの女、というタイトルに惹かれて購入。その後読む前に、芥川賞を受賞したことを知って、期待して読み始めた。
実はここ何年か現代の日本人作家の小説を読んでがっかりさせられることが多いので読み始めるのを躊躇していたのだ。
中編程度の長さなので、三時間足らずで読了。
感想は…
黄色いカーディガンの女、という人(語り手)がいて、日頃から近所に住む紫のスカートの女が気になって仕方がない。
その人に近づく手段をあの手この手を使って考え出し、やっとのことでなんとか近づいたと思ったら、その人はするりと抜けだして何処かに消えてしまう、というようなストーリーである。
確かに、最初の導入部はワクワクさせる。
しかし、読み進むにつれ、おかしいのは紫のスカートの女では無く、語り手である黄色いカーディガンの女では?と気付き始め、そのあたりから急速につまらなくなってくる。
紫の方は職場でも普通に仕事をして、上司と不倫関係に陥ったりもする、どこにでもいそうな女であった。
そして、そのどこにでもいそうな女にそこまで執着して日常生活をすらまともに送れない黄色の方が遥かに異常である、ということが明らかになってくるのであるが、さてそうなると何故黄色が紫に執着するのか、というのが皆目わからない。
最後に思わぬドンデン返しでもあって、オチがつくのだろうと思いながら読み進めても結局何もわからず、そこには何も残らないのである。
元々ミステリーではないのだから、そんなオチを期待して読む方が悪いのだが、これではあんまりな気がする。
都会に生きる孤独な人間のストーカー的な狂気を描いているということなのだろうか。
そんな例を提示することによって、今の時代というものを描いているのか?
この小説を読み終わって感じたのは、書きっぱなし、という感じである。
確かに紫、黄色という補色関係を名称に用い、こうだと思ったのが実はこうだった、というような反転を描いている面白さはあった。でもその後に得るものが何もないのである。読み終わって虚しさだけが残る。
芥川賞の選考委員がどのような点で評価したのだろうか。
レビューで、アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」を引き合いに出しておられる方があったが、実にうまい対比だと思った。
まさにそれである。
この小説も、こうだと思ったのが、実はこうだった、というのだが、読み終わった時に、鳥肌が立つような感覚があった。
怖いのである。殺人も何もないが一人の人間が裏返すと全く違う面を持っていたと気づくことの恐ろしさ。読み終わった後思わず自分自身や、周りの親しい人たちを違った目で見てしまう、
人を見る見方がぐるりと反転する恐ろしさ。
ある意味で彼女の書いてきた数々の殺人事件より怖いと感じた。
小説を読む面白さとは、これではないだろうか。
読む前と読んだ後で、ほんの少しでもいい、世界が違って見えること。それこそが、小説を読むことの醍醐味であると、私自身は思っている。
その意味で、この「むらさきのスカートの女」にはそこまでの筆力を感じなかった。
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むらさきのスカートの女 Kindle版
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の最新作。
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2019/6/7
- ファイルサイズ1686 KB
商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
今村/夏子
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に三島由紀夫賞受賞。2017年『あひる』で河合隼雄物語賞、『星の子』で野間文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に三島由紀夫賞受賞。2017年『あひる』で河合隼雄物語賞、『星の子』で野間文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
出版社からのコメント
第161回 芥川賞 受賞作
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B07SHDXPSF
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2019/6/7)
- 発売日 : 2019/6/7
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1686 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 121ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 16,089位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 1,156位日本の小説・文芸
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
芥川賞候補になったということで、今村さんの作品を初めて読みました。とても面白かったのですが、他のかたも書いていたと思いますが面白さを説明することが難しく、また自分なりの「こういうことか」といった落とし所みたいものが見つけられず、気がつくと、この作品のことを考え続けています。つまりはそういう面白さがあるということなのかな。プロの方の書評とか感想とか、もっと色々読んで他の方の解釈を知りたいなと思わせる作品。
2019年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ずっと今村夏子さんのファンでしたが、この作品で芥川賞なんてがっかりです。
この作品を喜び勇んで読み終わった直後、ああ今回はダメだった、芥川賞また逃しちゃったな、と思いました。でも獲れたなんてビックリです。
おそらくこれまで「あひる」「星の子」で受賞させてあげられなかったので、そろそろ今回で……程度の理由で選ばれたんじゃないでしょうか。
これが今村さんの代表作になってしまうのだとすれば、芥川賞のした仕事は最悪です。
今村さんの小説は正体不明の違和感を描くことに優れていますが、それが定着してこの本では最初から狙っていったかんじです。正直、鼻につきました。いつも文章全体に漂っている詩情も、今回はありません。一言で言えばペラいです。
これまでの作品を読んできたかんじ、今村さんは少女が主人公の話のほうが良く書けるようです。大人を主人公にするとただ気持ち悪くなるだけということがわかりました。
このレビューを読んで今村夏子を読もうか迷っている人は「こちらあみ子」を読んでください。デビュー作にして最高傑作です。
この作品を喜び勇んで読み終わった直後、ああ今回はダメだった、芥川賞また逃しちゃったな、と思いました。でも獲れたなんてビックリです。
おそらくこれまで「あひる」「星の子」で受賞させてあげられなかったので、そろそろ今回で……程度の理由で選ばれたんじゃないでしょうか。
これが今村さんの代表作になってしまうのだとすれば、芥川賞のした仕事は最悪です。
今村さんの小説は正体不明の違和感を描くことに優れていますが、それが定着してこの本では最初から狙っていったかんじです。正直、鼻につきました。いつも文章全体に漂っている詩情も、今回はありません。一言で言えばペラいです。
これまでの作品を読んできたかんじ、今村さんは少女が主人公の話のほうが良く書けるようです。大人を主人公にするとただ気持ち悪くなるだけということがわかりました。
このレビューを読んで今村夏子を読もうか迷っている人は「こちらあみ子」を読んでください。デビュー作にして最高傑作です。
2019年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は今村さんの作品を他の媒体では読まないので毎回、単行本が初読みになります。
今村さんの作品が大好きで単行本になったものは全て読んでいるのですが、
この作品は他の作品ほど心がザワザワしません。
あみ子のようにガツンと来ることもないですし、
あひるなどのようなザワザワ感もそれほどなく、心軽く最後まで読めます。
ですが、上手く言えないのですが、あれ?あれっ?ってな感じでドキドキはします(笑)
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、
黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女に一種の憧れのようなものを抱いていたのかなぁと。
こーゆー人、なんか好きです、黄色いカーディガンの女。
個人的にはくすぐられる感じに近いかも。
今村さんの作品が大好きで単行本になったものは全て読んでいるのですが、
この作品は他の作品ほど心がザワザワしません。
あみ子のようにガツンと来ることもないですし、
あひるなどのようなザワザワ感もそれほどなく、心軽く最後まで読めます。
ですが、上手く言えないのですが、あれ?あれっ?ってな感じでドキドキはします(笑)
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、
黄色いカーディガンの女はむらさきのスカートの女に一種の憧れのようなものを抱いていたのかなぁと。
こーゆー人、なんか好きです、黄色いカーディガンの女。
個人的にはくすぐられる感じに近いかも。





