この作品は「漫画で読む自転車講座」であり「自転車乗りの物語」ではありません。8巻まで読みましたが,技術論・社会論的な考察内容にはとても共感できます。しかしキャラクターの内面は一向に描かれず,どうやら作者さんには物質的世界だけが見え,精神的世界は見えていないのでは?と感じました。
例えば主要な語り部である輪の母親。子育てをした母親の人間味は皆無で,全編表情を変えずに知識と理論を展開し続ける,さしずめ女性版Mr. スポックです。彼女のラーメン屋での講義による理論編と,登場人物たちが走る実践編で作品は構成されています。主人公ノリの人間性もほとんど描写されません。肝心な所では「読者次第でどうにでも取れる」曖昧な表情で彼の内面は描かれず,読者側が想像で補完するようになっています。
作風というよりは,キャラの精神像を作者さん自身が想像できないように見えます。
ヒロインの輪は最後まで人格を与えてもらえず,何を考えているのか分かりません。ノリ以上の「どうにでも取れる」表情の背後には人としての主体,思春期の少女らしい心を感じられません。その一方でプロレスとラーメン作りの共通点という中年オヤジのような洞察をしたり,人物像の不自然さが目立ちます。7巻のラストにノリと反目しかけた時内面が見れるかと思いましたが,何も起きず謝り合って終わり。作者さん自身,この時二人が何を感じどう行動するか,想像できなかったのではと思います。
私は発達障害(自閉症スペクトラム)ですが,自閉症の人間は物事を物理的に捉え,いわゆる心の働きが希薄です。他人を「こういう状況に置かれると,こう反応する」というブラックボックスとして捉えていて,その時心の中で何が起きているかはあまり想像できません。
そういう人が作家になった場合,知にフォーカスすることで情の欠如を補い,SFやサスペンスの作風になる傾向が多そうです。思い浮かぶのはアニメ監督の押井守さん,SF作家の川又千秋さんなど,圧倒的な知性と鮮やかな表現の反面,どこか乾いて情の欠けた作風です。また物事を物質的に捉える性向が強いと,身体構造への興味と精神への無共感から,スプラッタ描写が多くなるようです。
キャラ達が真空の世界で生きているような空虚感のある作画は,そうした精神面の欠落の産物ではと感じました。キャラの表情描写について意地悪い言い方をすると,何かを考えている「ように見える」表情描写によって内面を描けないことをカモフラージュし,読者にはその表情に意味があるように錯覚させる,そういう人物描写を続けてきたように見えます。
人をモノとは違うヒトたらしめるココロ。自覚がお有りか分かりませんが,その心が分らない・描けない人が物語作家になると大きなハンデを背負うことになります。作者さんへの一案としては,原作者と組んでストーリーやキャラの行動などを考えてもらう,という執筆体制をとってみたらいかがでしょうか。
のりりん(1) (イブニングコミックス) Kindle版
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言語日本語
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出版社講談社
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発売日2010/7/23
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ファイルサイズ77555 KB
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2019年6月10日に日本でレビュー済み
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13人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2019年1月9日に日本でレビュー済み
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正直初見のときはいつキャラが死ぬのか不安でしたが誰も死なないので安心して見てください
ロードバイクの漫画ですが主人公がのっけからものすごい勢いでロードバイクをディスったりしますがばくおんよりはましなのでロードバイクユーザーも安心です
ロードバイクの漫画ですが主人公がのっけからものすごい勢いでロードバイクをディスったりしますがばくおんよりはましなのでロードバイクユーザーも安心です
2014年5月31日に日本でレビュー済み
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なるたる の頃から鬼頭さんの作品は読んでいますが、
今まではいじめや虐待などをテーマにした暗い作風でした。
しかし、この作品は社会人の趣味としてのスポーツ自転車を
テーマにしたさわやかな内容で登場人物も明るい人々ばかりです。
スポーツ物ですがプロの世界を描いたものではないので、
暑苦しい熱血ドラマもありません。
軽い大人のラブコメ要素も含みつつ軽いスポーツを楽しむタイプのさわやかな作品です。
鬼頭さんにしては毒の無い作品なので驚きました。
私生活で何かいいことでもあったのでしょうか。
今まではいじめや虐待などをテーマにした暗い作風でした。
しかし、この作品は社会人の趣味としてのスポーツ自転車を
テーマにしたさわやかな内容で登場人物も明るい人々ばかりです。
スポーツ物ですがプロの世界を描いたものではないので、
暑苦しい熱血ドラマもありません。
軽い大人のラブコメ要素も含みつつ軽いスポーツを楽しむタイプのさわやかな作品です。
鬼頭さんにしては毒の無い作品なので驚きました。
私生活で何かいいことでもあったのでしょうか。
ベスト1000レビュアーVINEメンバー
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当方、永遠の初心者ロードバイク乗り。自転車系コミックに触発されてロードバイクに乗り出した訳では無いですが、幾つかの自転車を題材としたほのぼのとしたノリのコミックは微笑ましく好ましく読んでいました。
本作は1巻を手にしただけですが、これ以上読み続けるのは無理です。自転車が嫌う主人公の内面の理由が匂わせられるところで1巻が終わりましたから今後の展開は有る様なのですが、非常にネガティブな事が主人公の身に降りかかり、無理やりではないものの、「自転車に乗らざるを得ない」形で自転車と出会い(再開?)ます。
登場人物の中には、頭がおかしいんじゃないか?レベルで無理やり主人公を自転車に乗せようとする人物も出てきます。読んでいて、自分が嫌いなタイプの自転車マニアに嫌がらせされているような、とても嫌な気分になりました。
読み進めると違った展開が広がってくるのかもしれません。かつてヴァンデミエールの翼に衝撃を受けた身ではありますが、現在、この作者の熱心なファンではない以上、1巻でこんなに楽しくない気分になったコミックを読み進めるのは私には無理です。
本作は1巻を手にしただけですが、これ以上読み続けるのは無理です。自転車が嫌う主人公の内面の理由が匂わせられるところで1巻が終わりましたから今後の展開は有る様なのですが、非常にネガティブな事が主人公の身に降りかかり、無理やりではないものの、「自転車に乗らざるを得ない」形で自転車と出会い(再開?)ます。
登場人物の中には、頭がおかしいんじゃないか?レベルで無理やり主人公を自転車に乗せようとする人物も出てきます。読んでいて、自分が嫌いなタイプの自転車マニアに嫌がらせされているような、とても嫌な気分になりました。
読み進めると違った展開が広がってくるのかもしれません。かつてヴァンデミエールの翼に衝撃を受けた身ではありますが、現在、この作者の熱心なファンではない以上、1巻でこんなに楽しくない気分になったコミックを読み進めるのは私には無理です。
2018年8月11日に日本でレビュー済み
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クロスバイク乗りですが、ロードが気になり読みました。
お話は徐々に起動に乗ってくるのですが、女のキャラクターの魅力がかなり弱いのと、全体的に画面が白いのが結構印象に残りました。進化していくのかな。
お話は徐々に起動に乗ってくるのですが、女のキャラクターの魅力がかなり弱いのと、全体的に画面が白いのが結構印象に残りました。進化していくのかな。
2017年9月13日に日本でレビュー済み
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自転車漫画なので読んでみたかったが、あの鬼頭先生なのでずっと敬遠してました。登場人物の内面の見せなさなどは、いつもどおりだが、抑制出来ている感じ。自転車うんちく少な目で一巻乗りきった力量なども気になるところなので、次の巻も読んでみるつもり。
2016年5月11日に日本でレビュー済み
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他の作品にみられるような影はなく、さわやかな作品でした。
オートバイ・クルマを乗り回していた私ですが、一気に読み終えた後に宗旨替えし、ロードバイクを購入しました。
男は30超えたら自転車ね、の意味は走ればわかります、確かに。
オートバイ・クルマを乗り回していた私ですが、一気に読み終えた後に宗旨替えし、ロードバイクを購入しました。
男は30超えたら自転車ね、の意味は走ればわかります、確かに。
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