「たろうどの。ぜひ、お目にかかりたくそうろう」―奇妙な葉っぱのハガキに誘われて奈良に向かった太郎を待っていたのは、ちょっとヘンなやつばかり。動く狛犬や石の猿に、しゃべりだす飼い猫のキジ。そして平城遷都1300年祭のマスコット「まんとくん」。奈良の古い町並みを舞台に、おもしろキャラたちが大暴れ。
寮美千子(作)
1955年、東京生まれ。外務省勤務、広告コピーライターを経て、1986年、毎日童話新人賞最優秀賞受賞をきっかけに作家活動に入る。童話、詩、小説、ノンフィクションと幅広く活躍。2005年、小説『楽園の鳥』で泉鏡花文学賞受賞。2006年、奈良市に移住。2007年より奈良少年刑務所で詩の授業を受け持ち、受刑者の詩集『空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集』(長崎出版)を編纂。2010年より奈良佐保短期大学非常勤講師。奈良の民間キャラクター「まんとくん」を応援。近著に奈良のお水取りをイメージしたファンタジー長編「夢見る水の王国」(角川書店)がある。
クロガネジンザ(絵)
1971年、埼玉県生まれ。専門学校卒業後、漫画家アシスタントを経て1994年、『月刊コミックNORA』(学研)で佳作となった「KI・RI・KA」でデビュー。その後読み切り作品を3本掲載。イメージキャラクター採用歴に奈良の「まんとくん」、青森浅虫水族館の「ここる」。 シンボルマーク採用歴に埼玉県鴻巣市のシンボルマークがある。その他入賞歴多数。現在はイラスト業をメインに活動中であり、童話の挿絵を担当するのは本作が初となる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
寮/美千子
1955年、東京生まれ。外務省勤務、広告コピーライターを経て、1986年、毎日童話新人賞最優秀賞受賞をきっかけに作家活動に入る。童話、詩、小説、ノンフィクションと幅広く活躍。2005年、小説『楽園の鳥』で泉鏡花文学賞受賞。2006年、奈良市に移住。2007年より奈良少年刑務所で詩の授業を受け持ち、受刑者の詩集を編纂。2010年より奈良佐保短期大学非常勤講師
クロガネ/ジンザ
1971年、埼玉県生まれ。専門学校卒業後、漫画家アシスタントを経て1994年、『月刊コミックNORA』(学研)で佳作となった「KI・RI・KA」でデビュー。その後読み切り作品を3本掲載。イメージキャラクター採用歴に奈良の「まんとくん」、青森浅虫水族館の「ここる」。シンボルマーク採用歴に埼玉県鴻巣市のシンボルマークがある。その他入賞歴多数。現在はイラスト業をメインに活動中であり、童話の挿絵を担当するのは『ならまち大冒険―まんとくんと小さな陰陽師』が初となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
About this Title
「ほら、ここの丘がじゃまだから、いま削っているところだ。でっぱったところを削って、この周りの溝を埋めて平らにするんだ。道をまっすぐに通さなければならないし、お役人の家もたくさん作らなきゃならないからな」
「あ、これは......」
太郎は、びっくりしました。丘のてっぺんから見渡せば、それは教科書で見た古墳の形をしていたからです。前方後円墳です。鍵穴の形の古墳のまわりには、深い溝があって、削った土で、それを埋めているのでした。
「ねえ、これ、古墳でしょ。えらい人のお墓じゃないの?」
「ああ、そうらしいな。だけど、ずいぶん昔のものだ。いまじゃもう、だれのものかもわからない。いいかい、これからは、ありがたい仏教の世になるんだ。おれたちは、そのために新しい都を作っているんだよ」
「そんな。ってことは、ここは平城京の建設現場? まさか、ぼくたち、千三百年前に、タイムスリップしたってこと?」
「どうも、そうらしいね」とまんとくんがいいました。
「それにしても、鬼はどこに逃げたんだろう」とまんとくんは、あたりを見回しました。すると、丘の下のほうから、ざわざわと声があがりました。
「あ、また出てきた。なんだか気味が悪いな」
「なんなんだ、これは」
行ってみると、地面のなかから、赤茶色の埴輪がいくつも、掘りだされています。博物館に入れたらいいような、すばらしい埴輪です。
すると、りっぱな服を着たお役人がきて、いいました。
「こらこら。こわがるでない。それは、ただの土人形だ。昔の人のまじないだ。気にしないで、壊すがよい!」
みんなは、ははあ、と頭をさげました。そして、手に手に棒やシャベルを持って、埴輪を壊しはじめました。
「うわぁ、もったいない」と太郎は思わずつぶやきました。
そのときです。