著者は元々、障害や福祉には関心がなかったようだ。そこからボランティアや取材をとおしての目線。ライターとしての批判的姿勢は鋭く、さりげなく痛いところを突いている。
それは障害を囲むホンネとタテマエ論や、福祉の経験者が必ずしも理解者とはいえない点、あるいは「一億総障害者」などという記述からして、専門家の紋切り型福祉論とは異なる新鮮味がある。また介護と介助の違いや、「障害者」という表記の問題、障害者制度の行き詰まりなど、細部且つ広範に目配せもしている。この辺は福祉関係者や当事者でも学びがあるように思う。
また「相模原障害者施設殺傷事件」をどう解釈するかは、私も他誌の特集などを気にして読んでいるが、本書でもその点は全章において通底している。「障害者は生きている価値があるのか」という問いへの模索に「私はこう思う」という書き方は、既成の押しつけではない、考えた末に言葉を選んだ誠実さの表れともいえるだろう。社会の仕組みや表裏を交えて、広い視点からバランスよく述べられている。それはいちばん本質の近くに導くかのようでもある。
植松被告の主張を抽象的に批判するばかりでなく、さまざまな意見が混じる現実社会。それをどう考えるかの材料は本書で与えられている。
なぜ人と人は支え合うのか (ちくまプリマー新書) (日本語) 新書 – 2018/12/6
渡辺 一史
(著)
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本の長さ256ページ
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言語日本語
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出版社筑摩書房
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発売日2018/12/6
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ISBN-104480683437
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ISBN-13978-4480683434
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
障害者について考えることは、健常者について考えることであり、同時に、自分自身について考えることでもある。2016年に相模原市で起きた障害者殺傷事件などを通して、人と社会、人と人のあり方を根底から見つめ直す。
著者について
ノンフィクションライター。1968年、名古屋市生まれ。中学・高校、浪人時代を大阪府豊中市で過ごす。北海道大学文学部を中退後、北海道を拠点に活動するフリーライターとなる。2003年、札幌で自立生活を送る重度身体障害者とボランティアの交流を描いた『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社、後に文春文庫)を刊行し、大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞を受賞。2011年、2冊目の著書『北の無人駅から』(北海道新聞社)を刊行し、サントリー学芸賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、地方出版文化功労賞などを受賞。札幌市在住。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
渡辺/一史
ノンフィクションライター。1968年、名古屋市生まれ。中学・高校、浪人時代を大阪府豊中市で過ごす。北海道大学文学部を中退後、北海道を拠点に活動するフリーライターとなる。2003年、札幌で自立生活を送る重度身体障害者とボランティアの交流を描いた『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社、後に文春文庫)を刊行し、大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞を受賞。2011年、2冊目の著書『北の無人駅から』(北海道新聞社)を刊行し、サントリー学芸賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、地方出版文化功労賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ノンフィクションライター。1968年、名古屋市生まれ。中学・高校、浪人時代を大阪府豊中市で過ごす。北海道大学文学部を中退後、北海道を拠点に活動するフリーライターとなる。2003年、札幌で自立生活を送る重度身体障害者とボランティアの交流を描いた『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社、後に文春文庫)を刊行し、大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞を受賞。2011年、2冊目の著書『北の無人駅から』(北海道新聞社)を刊行し、サントリー学芸賞、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、地方出版文化功労賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2018年12月16日に日本でレビュー済み
すばらしい本でした。
小さな、そして忘れがちな常識的な考え方を積み重ねて、障害者の存在を力強く肯定しています。
障害者と、その周りの人たちに、つまりすべての人に、大きな勇気を与える一冊だと思います。
第5章では、ある女性の主張を取り上げています。そこでは、障害者の価値や意味は、人が「見いだすものだ」と説かれています。
筆者は、それを受け、そうした価値や意味を見いだす力が、人が幸福を感じる力ともつながっていると述べています。さらに、そうした幸福を感じ取る力の弱さが、人が憎悪を社会にまき散らす理由になりうるとも指摘しており、昨今の憎悪をめぐる社会の問題を考えるうえで、大きなヒントになると思いました。
第1章では、2016年の障害者施設襲撃事件について、丁寧に考察を巡らせています。大変読み応えがあり、自分の考えを再点検し、より整ったものにすることに、おおいに役立つでしょう。
他の章も、非常に面白いです。
小さな、そして忘れがちな常識的な考え方を積み重ねて、障害者の存在を力強く肯定しています。
障害者と、その周りの人たちに、つまりすべての人に、大きな勇気を与える一冊だと思います。
第5章では、ある女性の主張を取り上げています。そこでは、障害者の価値や意味は、人が「見いだすものだ」と説かれています。
筆者は、それを受け、そうした価値や意味を見いだす力が、人が幸福を感じる力ともつながっていると述べています。さらに、そうした幸福を感じ取る力の弱さが、人が憎悪を社会にまき散らす理由になりうるとも指摘しており、昨今の憎悪をめぐる社会の問題を考えるうえで、大きなヒントになると思いました。
第1章では、2016年の障害者施設襲撃事件について、丁寧に考察を巡らせています。大変読み応えがあり、自分の考えを再点検し、より整ったものにすることに、おおいに役立つでしょう。
他の章も、非常に面白いです。
2020年6月4日に日本でレビュー済み
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高齢者の在宅介護の経験があります。私の方が元気を頂く方が多かった。未熟な私の介護に我慢してもらう事も多くて、どっちが上なんでないなあと感じたものです。この本を読んで改めて思い出した感じです。