G(グローバル経済圏)とL(ローカル経済圏)の対比について、明瞭に図示やグラフを用いながら、
解説されている。
日本のGDPの7割はLの経済圏であり、ローカル経済圏が日本のGDPの復興に重要である事が説かれている。その分析は、秀逸であり、冨山和彦氏の慧眼が垣間見える。
新型コロナの影響で、地方分散が進む可能性がある中、ローカル経済圏の復興、見直し等を考えてみて損のない時期。経済成長戦略を練るには、非常に参考になる一冊と言える。
バブル以後、グローバル経済圏で規制緩和をして生産性を上げても、結果的にグローバル経済圏とローカル経済圏の格差が広がってしまうだけだった。例えば、IT起業家が繁栄を謳歌する一方で、ローカル経済圏の労働者は不満だった。
新自由主義の考えでは、グローバル経済圏が豊かになれば、ローカル経済圏も豊かになる
トリクルダウンが働くことになる。
しかし、「トリクルダウン理論」は起こらなかった。
以下、書籍の内容の個人的に気になる内容を簡単にまとめた。
【グローバル化のパラドックス】
グローバル化が進めば進むほど、返ってグローバル経済圏から切り離される人が多くなる現象。
実際先進国でも大半の人はドメスティックな仕事をしていて、ドメスティックな顧客から収入を得ている。
経済活動を付加価値構成に分解して考えると、実は非常に大きな割合が、ローカルな世界から生産され消費されている。
多くの人々の頭の中は、今だに昭和40年代の加工貿易立国で占められている。
今も国内に残っている工場に行ってみれば、ほとんど人がいないことに驚く。
従業員がいるのは機械を操作するためのブースや、工場を管理する部門の事務所くらいで、日本の工場は、世の中の大半を象徴する存在ではなくなっている。
日本国内に残っている機能のかなりの部分はサービスやメンテナンスなどの第3次産業的機能である。
かつて、加工貿易立国だった時代だったら、パナソニックや日立、トヨタが打撃を受けると、
その下請けや孫請けも共倒れになった。
今は、このゾーンがわずか3割程度に過ぎない。
例えば、ローカルなサービス産業は、大手メーカーがリーマンショックで打撃を受けても直接の関連性がないため、あまり影響がない。
【田中角栄の列島改造計画による地方分散】
「地方は疲弊していて仕事がなく、結果的に人手が余っていて、職に困った若者が東京に出て言ってしまい空洞化が起こっている。」
加工立国モデルによる高度経済成長は、日本人の所得を大幅に上昇させた。
1970年代に入り、産業地域間の格差が顕在化すると、今度は田中角栄元首相の列島改造計画による、日本型所得再分配政策が始まり、バブルが弾ける頃まではこれが上手く機能した。
地方に積極的な公共投資を行うという形で再分配を行い、道路や新幹線が通った後にさらに工場を立てて行くパターンだ。工場労働者の生活水準は高く保たれていた。
企業という単位での様々なノウハウの蓄積がうまく機能していた。
但し、この時代の競争は本当の意味でのグローバル化では無かった。
東西冷戦の終結と同時にバブル経済も崩壊し、同じようなモデルでキャッチアップしてくる国が、
長期にわたって登場しなかった。
【バブル以後のITとグローバル化による東京一極集中】
グローバル化が進み、日本が謳歌してきたモデルと同じようなことをあらゆる国がやり始めた。
ITが導入され、ものづくりのモジュラー化が進み水平分業型になって行くと、組み立て加工の付加価値はますます下がる。
残ったのは、比較的生産性の低い労働集約型産業で働く人と高度な機械・設備による資本集約型産業や高度な専門スキルを必要とする、知識集約型産業に携わる人たち。
この二極化が、ますます進んで行った。
前提条件が崩れ、格差がで始めた頃から、日本でもイデオロギーの論争が始まった。
この20年ほどの経済政策論争は、新自由主義に行くか、社会民主主義に行くかという二項対立だった。ただ、どちらのイデオロギーにも政策は行き詰まり、イデオロギーの議論によって明確な解は生まれなかった。
【労働市場はローカル経済圏に有効】
労働市場が国際的に効率的だった試しは人類史上に置いて一度も無いし、今後も起きるとは思えない。
グローバルマーケットで一斉に競争が始まるので、比較優位が無いものは瞬く間に淘汰される。
グローバルな完全競争の経済圏では、日本企業がグローバル競争に勝っても、必ずしも国内に大量の雇用を生む訳では無い。
人件費の高い先進国では、GDPに占める割合もコンスタントに減って行く傾向がある。
例えば、トヨタがアメリカで車を売っても、日本のGDPには換算されない。
海外の生産に依存している限り、日本のGDPには一銭もカウントされない。
グローバル経済圏の製造業やIT産業では、国内では上位数パーセントの人しか雇用として吸収できない。
経済学は、貿易財(トレーダブルグッズ)の世界で物事を考えようとする癖があるため、
経済学者、特に新自由主義者(ネオコン)的な立場の人からすると、非常に説明しやすい世界。
世界中がグローバル経済圏になってくれた方が、経済的には説明がしやすくバイアスががかかる。
一方ローカル経済圏は基本的に、非製造業が中心で、本質的に「コト」
(観るコト、運ぶコト、治すコト、泊まること、・・・)
分散的な経済構造を持つ世界。
【ローカル経済圏とグローバル経済圏のGDP について】
ローカル経済圏の産業は、GDPや雇用のおよそ7割を占める。
さらにローカル経済圏の産業領域は、対面でサービスを提供するので、本質的には労働集約的になる。
サービス産業にICTを導入すればグローバル経済圏の企業のようになるという考え方があるが、それは正しく無い。
対面で行う作業を効率化することはできる。が、最終的には人間が対面でサービスを提供することに変わりは無い。
グローバル化の進展で大手製造業者の多くがローコスト大量生産モデルの生産拠点を海外に移転してしまった。理由は人件費の安さであったり、成長する海外市場へのアクセス重視の地産地消戦略。
先進国で問題となっている格差問題は、資本主義の貪欲さとか、新自由主義の暴走とか、
そんなイデオロギー的な話が本質ではく、何と言っても産業構造的、経済構造的な所に真因がある。
グローバル経済圏での日本のGDPは縮小している。
地産地消型の戦略をとる場合も、世界の中での日本市場の魅力は低下している。
よく、日本企業は株主資本利益率(ROE) が低い、資産効率が悪いと言われる。
大半の企業と大半の人がグローバル経済圏とは無縁で、全国のローカル経済圏とは無縁で、
全国のローカル経済圏、中小企業で生きているという事実を、生活している私たちが正確に把握できていない場合が多い。
【トレーダブルグッズ(貿易財)の発想】
経済学の根底にはトレーダブルグッズで発想する習慣がある。
サービス業などの非貿易財の経済学は、世の中に存在しないに等しい。
労働力は国や地域をまたいで自由に移動することがない。
製造業の場合はモノが移動するので、労働力が移動しないことを克服出来る。
しかし対面型のサービス産業は、完全にその地域、場所の労働力に規定される。
新自由主義寄りの人たちは、自由競争の原理を徹底追求する一方で、
労働市場の自由化による労働「移動」を促し、社会民主主義寄りの論者は、所得再分配と労働規制の強化で、かつての日本型正規雇用に少しでも多くの労働者を移動させようとする。
【GとLの共栄共存を目指す】
アメリカで最も安定的に高収益を稼ぎ出す金融機関がある。
ローリスク・ハイリターンで業績の振れ幅が小さく、ROEが持続的に高い銀行。
「ウェルズ・ファーゴ」という銀行は、グローバル金融には全く背を向けたスーパー地銀である。
地域のドミナントを作り、そこでせっせと預金を集め、地域内の顧客にせっせと貸すという業態。
金融機関においても、多くの商業銀行は本来的にはローカル経済圏のビジネスである。
事業そのものの問題は、いくら銀行が泣いても解決しない。
再生における問題の本質はP/L(損益計算書)の負債よりも事業の部分。
ローカル経済圏のサービス産業が勝つために必要なのは、集約化を進め、ベストプラクティスに真面目にコツコツ取り組むことだ。
「Lの世界」の名門が傾くのは、競争に負けるパターンよりも、いわゆる腐敗や内紛に起因するパターンが多い。
極端な腐敗が起こるのは、所有と経営が一致しているオーナー企業に多かった。
実際問題、将来に見通しが立たない企業に融資するより、将来のビルであろうM &Aの書い手にお金を貸した方が、金融機関に取っても建設的だ。
むしろこれから安定的な資金需要があるのは、Lの世界の企業や産業である。
Lの経済圏の企業は非上場の中堅、中小、零細企業が多く、足元の収益力の低い会社も多い。
したがって、間接的に依存せざるを得ない。
加えて、労働需要の逼迫やエネルギーコストの高騰で、生産性の向上を厳しく迫られている。
そこで、潜在的には設備投資やIT投資、省エネ投資、あるいは淘汰再編に関わるM &A 資金などの
資金需要は高まっている。
・Lの世界に生きる企業の最重要KPI(主要業績指標)は労働生産性。
・サービス産業はキャッシュフローが安定している。
・金融的にはローリスク・ローリターンのカテゴリーにいるビジネスモデルである。
・エクイティー(出資生資金)ではなく、デット(融資性資金)と相性が良い。すなわち、商業銀呼応モデルの地域金融機関と相性が良い。
【中小企業の経営者の資質】
中小企業の場合、事業体の6割から7割程度は経営者の資質になる。
地味な創意工夫や改善努力を営々続けるのに必要な経営に関わる基礎知識と、意志の力にかかっている。スーパーカリスマ経営者を求めているわけではない。
チャラチャラしたアイデアや人脈を人脈を吹いて回る奴、ふわふわしたビジョンばかり語るような奴は、どんな高学歴でも、どんな華麗な社交人でも、Lの世界の経営者には絶対向いていない。
経営者の資質は、多くの場合は、現場に投影される。
その人の実力は現場現物程度だと思った方が良い。
【日本における地方分散の推移】
限界集落の多くは、戦後の引き揚げと都会の空襲被害で焼け出された人で増加した人口を吸収するために作られた。
太平洋側が工業化し大量の雇用を必要としたため、東北や日本海側から凄まじい人が流出した。
減少に転じたのは、田中角栄元首相の登場による。
新幹線を通し、道路を通し、工場を誘致する事で人は地方に戻って言った。
バブル後、再び減少に転じた。
【ローカル経済圏のキーワードと集約化】
・一つはコンパクトシティ化
・効率的な公共サービスや高密度の消費構造を作ること。
・外国人労働者の急増による社会的ストレスに対し、日本社会はかなり脆いと思っている。
アメリカのように最初から移民で出来上がった国とは事情が異なる。
・移民政策は、今よりもっとややこしい民族問題になる。
・ヨーロッパでネオナチが台頭した背景には、移民政策から生まれた失業増などの
社会ストレスがある。
・グローバル経済圏の外国人労働者を雇用する事は、最低賃金を下げる効果を持つ。
・ローカル経済圏の産業は、事業、そして地域の長期的なサスティナビリティにコミットしなければならない。
・グローバル経済圏では、積極的に高度人材である外国人を受け入れる事を推奨したが、この世界に入って来る外国人はインテリである。
・GとLのそれぞれに優劣はなく、選択できる環境づくりが肝要。
なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 (PHP新書) (日本語) 新書 – 2014/6/13
冨山 和彦
(著)
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本の長さ273ページ
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言語日本語
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出版社PHP研究所
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発売日2014/6/13
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ISBN-104569819419
-
ISBN-13978-4569819419
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
GDPと雇用の7割を占めるローカル企業こそ、日本経済の切り札となる。グローバルGとローカルLで人類史上初の巨大なパラダイムシフトが起こっている!会社再生のプロが説く、復活へのシナリオ。
著者について
経営共創基盤CEO
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
冨山/和彦
1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストン・コンサルティング・グループ入社後、コーポレイト・ディレクション社設立に参画、後に代表取締役社長に就任。産業再生機構設立時にCOOに就任。(現職)オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、中日本高速道路社外監査役、みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会専門委員、国土交通省・下水道政策研究委員会委員、経済産業省・新ものづくり研究会委員等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1960年生まれ。経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。ボストン・コンサルティング・グループ入社後、コーポレイト・ディレクション社設立に参画、後に代表取締役社長に就任。産業再生機構設立時にCOOに就任。(現職)オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、中日本高速道路社外監査役、みちのりホールディングス取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会専門委員、国土交通省・下水道政策研究委員会委員、経済産業省・新ものづくり研究会委員等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2014/6/13)
- 発売日 : 2014/6/13
- 言語 : 日本語
- 新書 : 273ページ
- ISBN-10 : 4569819419
- ISBN-13 : 978-4569819419
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Amazon 売れ筋ランキング:
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- - 203位PHP新書
- - 10,463位ビジネス・経済 (本)
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2020年8月1日に日本でレビュー済み
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2015年12月12日に日本でレビュー済み
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本書のざっくりとした議論は以下の通りである。
1)アベノミックスなる政策を推進されている現在の日本では今までの経済の常識(例えば、「景気が良いと人手が不足し、景気が悪いと人手が余る。」)が通用しなくなっている。これは日本の少子高齢化が大きな原因である。
2)更に、企業の分類を今までの大企業と中小企業という分類⇒グローバル(略してG)企業とローカル(略してL)企業の分類に変えると現状がすっきりと理解できる。
3)現在の日本ではLのGDP貢献は7割もあり、雇用に至っては8割も占めているため、L企業の活性化が重要である。しかし、未だに、日本の社会的にはG企業の動向に注目が集まりがちな現状である。
4) GとLの企業の各々を活性化するための冨山流の処方箋が示されている。
以上のような流れから言って、あくまでもLの企業を活性化する処方箋が重要であり、
・人手不足の解消と利益向上のために労働生産性の向上が重要である。
・従来は労働生産性の低い企業も生きながらえさせる政策が採られてきたが、今後はこのような企業には穏やかに退出できるような政策への転換すべきである。
(感想)
1) 大 対 中小企業の分類からG 対 L企業の分類への転換は日本の現状をすっきりと認識でき、素晴らしい発想と思い、星5つにしました。
2) 但し、ロジカルには富山さんの主張はよく理解できるが、圧倒的に数が多いLの企業で同時並行的に経営者に退出を決断させることは難しいのではないかと私は思う。(冨山さんは金融機関にこの役割を期待しているが、現在の地方の金融機関の現状は自分の事をどうするかで精一杯なのではと思う。)
まだまだ、冨山流処方箋は役不足に思う。このあたりが冨山さんが本書の題名を「ローカル経済から日本は甦る」と出来なかった理由があると思う。多くの方からの処方箋の提案を期待したい。
1)アベノミックスなる政策を推進されている現在の日本では今までの経済の常識(例えば、「景気が良いと人手が不足し、景気が悪いと人手が余る。」)が通用しなくなっている。これは日本の少子高齢化が大きな原因である。
2)更に、企業の分類を今までの大企業と中小企業という分類⇒グローバル(略してG)企業とローカル(略してL)企業の分類に変えると現状がすっきりと理解できる。
3)現在の日本ではLのGDP貢献は7割もあり、雇用に至っては8割も占めているため、L企業の活性化が重要である。しかし、未だに、日本の社会的にはG企業の動向に注目が集まりがちな現状である。
4) GとLの企業の各々を活性化するための冨山流の処方箋が示されている。
以上のような流れから言って、あくまでもLの企業を活性化する処方箋が重要であり、
・人手不足の解消と利益向上のために労働生産性の向上が重要である。
・従来は労働生産性の低い企業も生きながらえさせる政策が採られてきたが、今後はこのような企業には穏やかに退出できるような政策への転換すべきである。
(感想)
1) 大 対 中小企業の分類からG 対 L企業の分類への転換は日本の現状をすっきりと認識でき、素晴らしい発想と思い、星5つにしました。
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まだまだ、冨山流処方箋は役不足に思う。このあたりが冨山さんが本書の題名を「ローカル経済から日本は甦る」と出来なかった理由があると思う。多くの方からの処方箋の提案を期待したい。
ベスト1000レビュアー
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グローバル化が叫ばれる昨今ではあるが、実はグローバル企業というのはそれほど多くない。
日本の産業を支えているのはサービス業であるし、そのサービス業は範囲の経済に支配されるローカル経済圏である。
ローカル経済圏では不完全な競争となり、生産性の低い企業でも生き残ってしまう。
この二極化構造を捉えることがこれからの日本経済を捉える上では重要。
日本の成長の鍵はグローバル化だと思っている方におすすめ。
日本の産業を支えているのはサービス業であるし、そのサービス業は範囲の経済に支配されるローカル経済圏である。
ローカル経済圏では不完全な競争となり、生産性の低い企業でも生き残ってしまう。
この二極化構造を捉えることがこれからの日本経済を捉える上では重要。
日本の成長の鍵はグローバル化だと思っている方におすすめ。
2017年7月1日に日本でレビュー済み
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既に書評がたくさん出ていますので、少し視点を変えて。「トレーダブルグッズの世界で物事を考えようとする」「自然科学の世界では万有引力の法則がどこでも働く、といったような説明をしたがる」経済学者に対する批判が結構出てきますね。でも、実際に経済学徒の方が読んだら、かなり納得してしまう部分も多いんじゃないかと思います。貿易財・非貿易財の2セクターの枠組み、両セクター間の関連性の希薄化(特に両セクター間の労働力移動の困難さ)の想定を軸として、肝心のローカル経済セクターを律する密度の経済性の影響力の考察、企業間の生産性のばらつきの分析…。いずれも経済学の理論・実証の土俵にがっつり乗っかった、実に良く考え抜かれた議論が展開されているからです(もちろん厳密な経済学用語や、数理・統計モデルが使われているわけではありません)。
さらに著者は、そんな世界で生きていくというのはどういうことなのか、何が大事なのか、説得力を持って活写してくれます。その迫力たるや、若い経済学徒が読んだらその後の人生が変わっちゃうんじゃないかと思うぐらい。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンは、国際競争における地域産業の集積の役割に焦点を当てた、あのマイケル・ポーターの著書「国の競争優位」からヒントを得て、ノーベル賞受賞理由の一つとなった新経済地理学を確立させたと言います。ひょっとしたらこの本も、読む人によってはそれぐらいのインパクトを持ちうるかも、と言ったら言い過ぎか?心からお勧めします。
さらに著者は、そんな世界で生きていくというのはどういうことなのか、何が大事なのか、説得力を持って活写してくれます。その迫力たるや、若い経済学徒が読んだらその後の人生が変わっちゃうんじゃないかと思うぐらい。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンは、国際競争における地域産業の集積の役割に焦点を当てた、あのマイケル・ポーターの著書「国の競争優位」からヒントを得て、ノーベル賞受賞理由の一つとなった新経済地理学を確立させたと言います。ひょっとしたらこの本も、読む人によってはそれぐらいのインパクトを持ちうるかも、と言ったら言い過ぎか?心からお勧めします。
2014年12月28日に日本でレビュー済み
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(1)サンプル版にはサービス業は日本のGDPの70%と書いてあるが、2008年時点でサービス業19%、製造業は22%程度(内閣府資料より)。(2)グローバル経済は製造業中心と書いているが、現在の日本においてのグローバル企業という意味ならトヨタなど製造業が多く思い浮かぶが、世界的にみてグローバル企業の中の製造業の割合は売上高で見て減っているのではないだろうか。