筆者は『はじめに』で、なかなか思い通りにならない人生だが、どんな人生であっても前向きに生きていくためのヒントを示すのが本書の目的であり、その鍵を握るのが記憶だとしている。筆者は、私たちの人生は記憶に依存しており、自分の人生を振り返って、後悔だらけの人生だったという人の人生は、その人自身の記憶の中にしか存在していないのではないかとし、本書では、筆者が開発してその成果を学会等で発表してきた自伝的記憶を引き出す自己物語法と、学会等で発表してきた学術的な知見をもとに考案した記憶健康法をもとに、人生を前向きに生きるためのヒントを提示することにしたいとしている。
さて、その本書を読んでいると、途中から、筆者が同じようなことを繰り返し繰り返し言っていることに、否が応でも気づかされる。途中から、「この話は、さっきも言っていたよな」「この話をされるのは、もう何度めだろう」と思わされるようになり、結局、そうした思いは最後まで変わることはなかった。率直に言って、筆者の言わんとしていることは、最後まで読まなくても、途中までで全て語り尽くされていると言っても過言ではない。ただ、筆者が言っていることは、いちいちもっともだと納得させられることばかりであったので、同じ話を何度も聞かされても、ダレたり、あきることはなかったし、筆者にしてみれば、ネガティブ思考が染みついた人には、何度も何度も繰り返し同じことを言わなければ、その思考を変えることはできないという思いもあるのかもしれない。
筆者が本書で繰り返し問題視し指摘していることを簡潔にまとめてしまえば、「人が人生を生きていくにあたって、記憶がいかに重要な役割を果たしているか」「ネガティブ思考の人は、日頃からネガティブな気分で過ごしているので、ポジティブなことがあっても、ネガティブなことばかりを記憶に刻み、ネガティブなことばかりを記憶から引き出すので、ますます気分が落ち込むという悪循環に陥っており、思い出したくない過去の記憶に蓋をしてしまう人もいる」ということだと思う。
ところで、私は『はじめに』や本文を読んでいても、自己物語法と記憶健康法それぞれの位置付け・関係がよく分からなかったのだが、私なりに整理すると、どうやら自己物語法が手段で、記憶健康法はその方法のようであり、ネガティブ思考の人がポジティブ思考の人間に生まれ変わるための手段が自伝的記憶を引き出す自己物語法であり、ネガティブな自伝的記憶をポジティブに整理し直して引き出す方法などが記憶健康法ということのようだ。
筆者は、その記憶健康法として、たとえば、ネガティブな記憶をポジティブな記憶に置き換える、ネガティブな気分のときは過去を振り返らないことを徹底するなど、さまざまな視点・角度からのアドバイスを行っている。
ただ、私もネガティブ思考を自認している人間なので実感として感じるのだが、一度自己物語法と記憶健康法でポジティブな気分になったとしても、それはあくまで一時的なものであり、すぐに元に戻ってしまうと思う。心に染みついたネガティブ思考を継続的・根本的にポジティブ思考に変えるというのは、言うは易く行うは難しで、簡単なことではない。どんな方法であれ、ネガティブ思考を克服できるかできないかは、どれだけ強い意志を持ってそれを根気強く続けられるか、結局は、本人次第という気がする。
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なぜイヤな記憶は消えないのか (角川新書) 新書 – 2019/6/8
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心理学者が20年にわたりライフワークとして続けてきた研究を書籍化!
なぜ同じような境遇でも前向きな人もいれば、辛く苦しい日々を過ごす人がいるのか。出来事ではなく認知がストレス反応を生んでいる。そう、私たちが生きているのは「事実の世界」ではなく「意味の世界」なのだ。
なぜ同じような境遇でも前向きな人もいれば、辛く苦しい日々を過ごす人がいるのか。出来事ではなく認知がストレス反応を生んでいる。そう、私たちが生きているのは「事実の世界」ではなく「意味の世界」なのだ。
- 本の長さ216ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2019/6/8
- 寸法11 x 1.1 x 17.3 cm
- ISBN-10404082251X
- ISBN-13978-4040822518
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ同じような境遇でも前向きな人もいれば、辛く苦しい日々を過ごす人がいるのか。出来事ではなく認知がストレス反応を生んでいる。そう、私たちが生きているのは「事実の世界」ではなく「意味の世界」なのだ。
著者について
●榎本 博明:心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした研修・教育講演を行う。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
榎本/博明
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表、産業能率大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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結局は「ポジティブであれ」「前向きに」「肯定的にとらえる」といった他の本でも言われているのであって、
ではそのイヤな記憶に悩まされ続けている人は、ただ「しない選択をしている」と切り捨てていいのだろうか。
「病気」として投薬治療だったりすればいいのだろうか。
その打開策・方法論を記されているようだけれど、基本 一つの価値観(ポジティブであれ)にのっとっている限り、その有効性はいかがなものだろうか、と無見識に問うてみる。
ではそのイヤな記憶に悩まされ続けている人は、ただ「しない選択をしている」と切り捨てていいのだろうか。
「病気」として投薬治療だったりすればいいのだろうか。
その打開策・方法論を記されているようだけれど、基本 一つの価値観(ポジティブであれ)にのっとっている限り、その有効性はいかがなものだろうか、と無見識に問うてみる。
ベスト500レビュアーVINEメンバー
”記憶というのは、どんな些細な事柄と思われるものであっても、本人にとっては記憶する
価値のあるものなのである。自分にまつわるエピソードが語られるとき、重要なのはエピ
ソードそのものではなくて、そのエピソードが記憶され、想起され、語られたということ
なのだ”(PP86-87)…「この人は、なぜ、いま、このことを思い出して語っているのか?」
と思いながら、クライエントさんに向き合っています。そんな、『記憶』についての特徴を
いろいろと教えてくれます。
楽しい気分は楽しい記憶を引っぱり出して、イヤな気分は嫌な記憶を引っぱり出す”気分一致
効果”、うつ傾向の人の超概括的記憶のわけ…などを説いてくれますが、著者・榎本さんが開発
した、”自伝的記憶を引き出す『自己物語法』という面接法”については、ぼわぁと触れるに
留まっているところが、少し残念です。紙幅の都合かもしれません。
価値のあるものなのである。自分にまつわるエピソードが語られるとき、重要なのはエピ
ソードそのものではなくて、そのエピソードが記憶され、想起され、語られたということ
なのだ”(PP86-87)…「この人は、なぜ、いま、このことを思い出して語っているのか?」
と思いながら、クライエントさんに向き合っています。そんな、『記憶』についての特徴を
いろいろと教えてくれます。
楽しい気分は楽しい記憶を引っぱり出して、イヤな気分は嫌な記憶を引っぱり出す”気分一致
効果”、うつ傾向の人の超概括的記憶のわけ…などを説いてくれますが、著者・榎本さんが開発
した、”自伝的記憶を引き出す『自己物語法』という面接法”については、ぼわぁと触れるに
留まっているところが、少し残念です。紙幅の都合かもしれません。
2019年7月24日に日本でレビュー済み
日々の出来事が人生をどう形作るか考えさせられる好著。
自分の成り立ちを説明する物語、著者は自己物語と名付けるが、まさにそれが振り返りうる人生。人生において無数の出来事を経験するがすべてを記憶するわけではなく、今の自分=自己物語に都合のいい記憶だけが選ばれて残り、それによってさらに自己物語が改訂されていく。つまり記憶と人生観にはフィードバックの環がある。記憶は事実そのものではなく、事実から自分が認知した意味。
ゆえに、現在の自己物語が明るければ明るい記憶が残り、さらにポジティブなフィードバックが起こる。悪い出来事でも、それが将来のより良い出来事につながる・つながったと認知することで記憶自体も変容させられる。
人生を肯定的に振り返ろう!記憶をポジティブに回せ!
自分の成り立ちを説明する物語、著者は自己物語と名付けるが、まさにそれが振り返りうる人生。人生において無数の出来事を経験するがすべてを記憶するわけではなく、今の自分=自己物語に都合のいい記憶だけが選ばれて残り、それによってさらに自己物語が改訂されていく。つまり記憶と人生観にはフィードバックの環がある。記憶は事実そのものではなく、事実から自分が認知した意味。
ゆえに、現在の自己物語が明るければ明るい記憶が残り、さらにポジティブなフィードバックが起こる。悪い出来事でも、それが将来のより良い出来事につながる・つながったと認知することで記憶自体も変容させられる。
人生を肯定的に振り返ろう!記憶をポジティブに回せ!
2022年1月12日に日本でレビュー済み
「ネガティブな記憶ばかり思い出すな、ポジティブであれ」という主張がひたすら繰り返されるだけの本。
それが間違っているとは思わない。だがあまりにくどい。
それに、「ネガティブな人は不幸を人のせいにしすぎ、呆れるほどにネガティブな記憶ばかり話す」と本書の想定購読者層を小馬鹿にするような発言もちらほらあり(この気質は同氏の別著タイトルを見ても分かるだろう)、心理学者なのに共感力の低さがありありと見て取れる。
認知改善にはあまりオススメしない本です。
それが間違っているとは思わない。だがあまりにくどい。
それに、「ネガティブな人は不幸を人のせいにしすぎ、呆れるほどにネガティブな記憶ばかり話す」と本書の想定購読者層を小馬鹿にするような発言もちらほらあり(この気質は同氏の別著タイトルを見ても分かるだろう)、心理学者なのに共感力の低さがありありと見て取れる。
認知改善にはあまりオススメしない本です。






