英文学講義の予備知識を入れるために本書を購入しました。ヴィクトリア時代が、そしてその当時のイギリスがなんなのかを知らなかった私の第一冊目の本としてはちょうど良かったと思います。
社会学者であるアメリカ人著者が渡英し、身なりも貧民街の人々と同じものを着て、身分を隠し、貧民社会に混じった実体験が書かれているので、著者の個人的な意見が入ってしまうものの、紙の上の話でなく リアリティをとても感じられる本だったと思います。
視線を貧民の視線に合わせて書かれているところが良かったと思います。
また、端々に現れる著者の「つぶやき」的な訴えは 私個人的には非常に刺さりました。
本書を読んでから、Dickensのオリバーツイストを読み始めたところ、本書で読んでおいた知識が役立ちました。
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どん底の人びと―ロンドン1902 (岩波文庫) 文庫 – 1995/10/16
一九〇二年夏,エドワード七世の戴冠式でにぎわうロンドンのイースト・エンドの貧民街に潜入したジャック・ロンドン(一八七六―一九一六)が,「心と涙」で書き上げたルポルタージュ(一九〇三).救世軍の給食所での不衛生な食事,小さな靴工場の悲惨な労働環境―苛酷な世界に生きる人々の姿が迫真の筆致で描かれる.著者撮影の写真を収録.
- 本の長さ352ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1995/10/16
- ISBN-10400323152X
- ISBN-13978-4003231524
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
1902年夏、エドワード七世の戴冠式でにぎわうロンドンのイースト・エンドの貧民街に潜入したジャック・ロンドンが、「心と涙」で書き上げたルポルタージュ(1903)。救世軍の給食所での不衛生な食事、小さな靴工場の悲惨な労働環境―苛酷な世界に生きる人びとの姿が迫真の筆致で描かれる。著者撮影の写真数点を収録。
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1995/10/16)
- 発売日 : 1995/10/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 352ページ
- ISBN-10 : 400323152X
- ISBN-13 : 978-4003231524
- Amazon 売れ筋ランキング: - 271,824位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 116位イギリス・アイルランド史
- - 1,006位ヨーロッパ史一般の本
- - 1,905位岩波文庫
- カスタマーレビュー:
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2015年4月8日に日本でレビュー済み
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産業革命をリードし、ヴィクトリア女王治世下で栄耀栄華を誇った大英帝国の心臓部ロンドンにおける庶民の生き様を、作家らしい観察眼で活写した秀作です。1902年は、前年に崩御したヴィクトリア女王の後を襲って、エドワード7世の戴冠式が行われた年であり、夏目漱石がロンドン留学中であった時期とも重なります。訳者である行方氏は、「あとがき」で、「原文を訳出しながら、気が滅入って仕方がなかった」と記されていますが、貧困と病苦にあえぐ労働者とその家族の悲惨さに、現代人は涙を禁じえないでしょう。紀田順一郎『東京の下層社会』を読んだ際にも、明治期大東京の庶民生活の悲惨さに衝撃を受けましたが、20世紀初頭における大都会は、ロンドンであれ、パリであれ、ニューヨークであれ、惨憺たる庶民の暮らしが繰り広げられていたようです(例えば、ジョージ・オーウェル『パリ・ロンドン放浪記』に描かれているように)。経済史の標準的テキストでは描写されることのない産業革命の陰の部分を改めて教えられました。
2009年12月3日に日本でレビュー済み
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「下層社会」などという言葉が叫ばれる今だからこそ、この約百年前のロンドンの貧民街のルポルタージュは読まれる価値があります。
そこにあるのは劣悪な居住環境、低賃金かつ過酷な労働、崩壊した家族、形ばかりの貧民救済策。そして何よりも人の心の荒廃ぶりです。
「貧しくても心は豊か」などというのは嘘です。貧しさは人の心を荒ませ、無気力を招き、それがさらに人々を貧しさから抜け出せない理由となっています。作者は判断の尺度として、「生きている喜び、肉体上および精神上の健全さ」をあげていますが、そうだとすればここにあるのは「絶望」のみであります。しかしそれでも、ロンドンはそれに正面から向き合い、そしてこう言ったに違いありません。
「でも、やるんだよ!」
ここであげられた下層階級の姿は、決して今の日本においても他人事とはいえないものであります。ジャック・ロンドンがこの本でつきつけた社会の現実は単なる過去のロンドンの姿ととらえてはならない、今の日本が向かおうとしている姿かもしれないのです。作者はこれを政治の管理の問題として告発していますが、それ以上に危険なのは、これら貧困の問題を個人の人間性の問題へとすり替えようとする世間の風潮であると私は思います。下層階級が存在するということは決して他人事ととらえてはならない、政治も含めたわれわれの社会全体が直視しなければならない問題なのです。
繰り返しますが、この本は今こそ読まれる価値があります。
そこにあるのは劣悪な居住環境、低賃金かつ過酷な労働、崩壊した家族、形ばかりの貧民救済策。そして何よりも人の心の荒廃ぶりです。
「貧しくても心は豊か」などというのは嘘です。貧しさは人の心を荒ませ、無気力を招き、それがさらに人々を貧しさから抜け出せない理由となっています。作者は判断の尺度として、「生きている喜び、肉体上および精神上の健全さ」をあげていますが、そうだとすればここにあるのは「絶望」のみであります。しかしそれでも、ロンドンはそれに正面から向き合い、そしてこう言ったに違いありません。
「でも、やるんだよ!」
ここであげられた下層階級の姿は、決して今の日本においても他人事とはいえないものであります。ジャック・ロンドンがこの本でつきつけた社会の現実は単なる過去のロンドンの姿ととらえてはならない、今の日本が向かおうとしている姿かもしれないのです。作者はこれを政治の管理の問題として告発していますが、それ以上に危険なのは、これら貧困の問題を個人の人間性の問題へとすり替えようとする世間の風潮であると私は思います。下層階級が存在するということは決して他人事ととらえてはならない、政治も含めたわれわれの社会全体が直視しなければならない問題なのです。
繰り返しますが、この本は今こそ読まれる価値があります。
ベスト500レビュアー
やってる事も言ってる事も崇高なんだろうとはおもうけど、体験ルポってそういうモンだけど端々でどうにも「金持ちの道楽」臭を感じてしまったのも正直なトコ
六十年以上働いて、所有物はなくとも、1日の終りに1パイントのビールを楽しんで質素な生活で満足できるのは大変幸せな人生の気がする
自分の労働を評して「生活水準の高い人間は、生活水準の低い人間より、常に多くの仕事を立派にやってのける」と自負しちゃうトコに金持ちの遊びの傲慢を感じた。昨日の疲労もなく明日の労働を考えず1日の働きに全力をつぎ込めるなら、そら何事も立派にできるだろうよ、と。
老人には向けなかった哀れみを若くて元気で丈夫そうな男に向けるのは性的衝動じゃないよ…「まだ取り返しや巻き直しが効くであろうに」の哀れみなんだよ
労働争議は旗振るとその先には悲惨が待ってるんだよね…
自殺未遂は裁きを受ける罪だというのが結構新鮮な驚きだった
身も蓋もないが、
たいてい二、三回未遂をやらないとうまくいかない。に笑ってみた。練習できないからね…。で、失敗すると大概がどん底だと思ってた底が上げ底だったという結果になったりするのは容易に想像できることで
「なぜちゃんとやって始末をつけなかったのだ?」に、無慈悲と残酷より正論を感じてしまう
若い内に読む本だったなー…。ダメだ。最終章が大変鼻についた。他所の部族捕まえて「原始的」で「未開」で「野蛮」よばわりはどうも。文明ってやつがそもそも「野蛮」の結果だしなー…
この時代のアメリカ人の限界を感じた
六十年以上働いて、所有物はなくとも、1日の終りに1パイントのビールを楽しんで質素な生活で満足できるのは大変幸せな人生の気がする
自分の労働を評して「生活水準の高い人間は、生活水準の低い人間より、常に多くの仕事を立派にやってのける」と自負しちゃうトコに金持ちの遊びの傲慢を感じた。昨日の疲労もなく明日の労働を考えず1日の働きに全力をつぎ込めるなら、そら何事も立派にできるだろうよ、と。
老人には向けなかった哀れみを若くて元気で丈夫そうな男に向けるのは性的衝動じゃないよ…「まだ取り返しや巻き直しが効くであろうに」の哀れみなんだよ
労働争議は旗振るとその先には悲惨が待ってるんだよね…
自殺未遂は裁きを受ける罪だというのが結構新鮮な驚きだった
身も蓋もないが、
たいてい二、三回未遂をやらないとうまくいかない。に笑ってみた。練習できないからね…。で、失敗すると大概がどん底だと思ってた底が上げ底だったという結果になったりするのは容易に想像できることで
「なぜちゃんとやって始末をつけなかったのだ?」に、無慈悲と残酷より正論を感じてしまう
若い内に読む本だったなー…。ダメだ。最終章が大変鼻についた。他所の部族捕まえて「原始的」で「未開」で「野蛮」よばわりはどうも。文明ってやつがそもそも「野蛮」の結果だしなー…
この時代のアメリカ人の限界を感じた
2016年1月25日に日本でレビュー済み
社会主義者 ジャック・ロンドンの古典的名著ですが、シャーロック・ホームズの生きた時代を知る上でも、古典的名著です。
時は1902年、大英帝国が栄華を極めたビクトリア朝も終わりを告げ、20世紀にはいったばかりの時期。
アメリカ人ジャック・ロンドンは、ロンドンの貧民街イースト・エンドで労働者に扮して庶民の生活を見聞します。
現在の社会学でいう「参与観察」を通して大変リアルなルポルタージュを書きました。
表題の「どん底の人びと」は正にその姿を一言で象徴しています。
描かれた姿は、英国の繁栄の陰に取り残され、救いもなく朽ちていく低所得者層の悲惨でした。
ジャック・ロンドンはその姿に寄り添い共感しつつも、参与観察者としての冷徹な目で、その社会的問題の所在を分析します。
彼らは自らの運命に抗うことなく、ただ体制の支配に従い、その環境に順応し、徐々に貧困の度合いを深め、そして死んでいくだけであると。
本書は社会学や経済学などの古典であるばかりでなく、ホームズの生きた時代とも一致していますから、ホームズ譚に描かれたテムズ川河畔のシーンやイーストエンドの姿を理解するためにも大変有用な1冊です。
時は1902年、大英帝国が栄華を極めたビクトリア朝も終わりを告げ、20世紀にはいったばかりの時期。
アメリカ人ジャック・ロンドンは、ロンドンの貧民街イースト・エンドで労働者に扮して庶民の生活を見聞します。
現在の社会学でいう「参与観察」を通して大変リアルなルポルタージュを書きました。
表題の「どん底の人びと」は正にその姿を一言で象徴しています。
描かれた姿は、英国の繁栄の陰に取り残され、救いもなく朽ちていく低所得者層の悲惨でした。
ジャック・ロンドンはその姿に寄り添い共感しつつも、参与観察者としての冷徹な目で、その社会的問題の所在を分析します。
彼らは自らの運命に抗うことなく、ただ体制の支配に従い、その環境に順応し、徐々に貧困の度合いを深め、そして死んでいくだけであると。
本書は社会学や経済学などの古典であるばかりでなく、ホームズの生きた時代とも一致していますから、ホームズ譚に描かれたテムズ川河畔のシーンやイーストエンドの姿を理解するためにも大変有用な1冊です。
2014年8月10日に日本でレビュー済み
20世紀初頭、米国の作家である著者が、単身ロンドンのスラム街への潜入取材を試みた社会派ルポルタージュである。
時は1902年、華やかに着飾った紳士淑女たちが新王エドワード7世戴冠の式典に浮かれる陰で、そこから遠くないイースト・エンドは奈落の世界だった。富裕層をさらに富ませるだけで貧困層にはほとんど何の恩恵ももたらさない「好景気」。労働者を低賃金でこき使うだけでなく、消費面でも衣食住の全て(特に「住」)において徹底的にしゃぶり尽くす搾取のシステム。人間への危害より財産への侵害の方が重く罰せられる裁判。十代前半で路上生活や犯罪行為を余儀なくされる子供たち…。ちょっとした病気やケガで簡単に転落し2度と這い上がれなくなる下層階級の不安定な生活と、彼らに職や食を与える雇用主や保護施設が握る絶対的な殺生与奪の権は、支配される側だけではなく支配する側の人間性までも堕落させ(いわゆるブラック企業の経営者に人間性を疑わせるような言動が目立つのも同じ理屈だろう)、マスメディアは天候不順による農産物の不作で仕事を失い飢える季節労働者には目を向けないまま農場主たちが被る「経済的損失」の大きさばかりを書き立てる。そうした絶望の中で時折出会うささやかな(そして報われない)勇気や善意の物語が、読んでいて逆にやるせない。
訳者による解説にもあるように、100年前の英国は決して日本のスノッブたちが憧れるような「古き良き時代」などではなかったのである。そして残念ながら、本書に描かれた悲惨さや不公正の背後にある構造は、現代の日本でも基本的に変わっていないように思える。本書が投げかける問いは21世紀の今も重い。
時は1902年、華やかに着飾った紳士淑女たちが新王エドワード7世戴冠の式典に浮かれる陰で、そこから遠くないイースト・エンドは奈落の世界だった。富裕層をさらに富ませるだけで貧困層にはほとんど何の恩恵ももたらさない「好景気」。労働者を低賃金でこき使うだけでなく、消費面でも衣食住の全て(特に「住」)において徹底的にしゃぶり尽くす搾取のシステム。人間への危害より財産への侵害の方が重く罰せられる裁判。十代前半で路上生活や犯罪行為を余儀なくされる子供たち…。ちょっとした病気やケガで簡単に転落し2度と這い上がれなくなる下層階級の不安定な生活と、彼らに職や食を与える雇用主や保護施設が握る絶対的な殺生与奪の権は、支配される側だけではなく支配する側の人間性までも堕落させ(いわゆるブラック企業の経営者に人間性を疑わせるような言動が目立つのも同じ理屈だろう)、マスメディアは天候不順による農産物の不作で仕事を失い飢える季節労働者には目を向けないまま農場主たちが被る「経済的損失」の大きさばかりを書き立てる。そうした絶望の中で時折出会うささやかな(そして報われない)勇気や善意の物語が、読んでいて逆にやるせない。
訳者による解説にもあるように、100年前の英国は決して日本のスノッブたちが憧れるような「古き良き時代」などではなかったのである。そして残念ながら、本書に描かれた悲惨さや不公正の背後にある構造は、現代の日本でも基本的に変わっていないように思える。本書が投げかける問いは21世紀の今も重い。
2005年6月5日に日本でレビュー済み
ボーア戦争を取材する予定だったが急にキャンセルされてしまった為、ロンドンがロンドンの(駄洒落ではない)イースト・エンドに潜り込んで約七週間最下層貧民の暮らし振りを体験して書き下ろした迫真のルポ。統計資料等に頼って書いている部分もあるが、エドワード国王の戴冠式に賑わう世界の大都市の繁栄の陰にはびこる目を覆うばかりの貧困の実態と、それを生み出し剰え助長する社会制度についての告発が怒りを込めて生き生きと描かれている。
内容はいちいち紹介しているとキリがないので、以下に目次を記しておく。訳文については一長一短だが、この岩波文庫版は各章冒頭に掲げられている詩文もきちんと訳出しているし、数点収録されている写真の印刷状態も鮮明で良好、幾つかある邦訳の中でもお薦め出来るものとなっている。
序文/奈落で暮らし出す/ジョニー・アプライト/私の下宿のことなど/どん底とある男/瀬戸際の人びと/フライパン横町と地獄/ヴィクトリア十字勲章受章者/荷馬車屋と大工/浮浪者収容所/「旗をかつぐ」/給食所/戴冠式の日/波止場人夫ダン・カレン/ホップとホップ摘み人夫/水夫の母/「財産」対「人間」/非能率/賃金/ゲットー/喫茶店と安宿/不安定な生活/自殺/子供/夜の光景/飢えの嘆き/飲酒と禁酒と節約/管理運営
因みに、元々"People of the Abyss"と云う言葉を考え出したのはH.G.ウェルズ。ウェルズもロンドンも文明改革の熱情に燃えて社会主義的な小説を幾つもものしたが、ウェルズが教育や合理性、人間の知的な可能性に重点を置いたのに対して、ロンドンは独特な弱肉強食的世界観で味付けをしており、仲々に迫力がある。興味を持たれた方は他の小説等にも当たってみることをお勧めする。
内容はいちいち紹介しているとキリがないので、以下に目次を記しておく。訳文については一長一短だが、この岩波文庫版は各章冒頭に掲げられている詩文もきちんと訳出しているし、数点収録されている写真の印刷状態も鮮明で良好、幾つかある邦訳の中でもお薦め出来るものとなっている。
序文/奈落で暮らし出す/ジョニー・アプライト/私の下宿のことなど/どん底とある男/瀬戸際の人びと/フライパン横町と地獄/ヴィクトリア十字勲章受章者/荷馬車屋と大工/浮浪者収容所/「旗をかつぐ」/給食所/戴冠式の日/波止場人夫ダン・カレン/ホップとホップ摘み人夫/水夫の母/「財産」対「人間」/非能率/賃金/ゲットー/喫茶店と安宿/不安定な生活/自殺/子供/夜の光景/飢えの嘆き/飲酒と禁酒と節約/管理運営
因みに、元々"People of the Abyss"と云う言葉を考え出したのはH.G.ウェルズ。ウェルズもロンドンも文明改革の熱情に燃えて社会主義的な小説を幾つもものしたが、ウェルズが教育や合理性、人間の知的な可能性に重点を置いたのに対して、ロンドンは独特な弱肉強食的世界観で味付けをしており、仲々に迫力がある。興味を持たれた方は他の小説等にも当たってみることをお勧めする。
2008年6月19日に日本でレビュー済み
アメリカの小説家ジャック・ロンドンが1902年の夏にロンドンの最下層の生活の中に
入って書き上げたルポです。
世界で最も裕福な大英帝国の中心地ロンドンというのは、当時だれひとり否定する
ことがなかったことで、その暗部に迫り、現実のロンドンの貧困を、鋭い洞察力を持って
書き上げたジャック自身も、あまりにも酷い貧民街イースト・エンドの状況に驚いている
ことが理解できた。自らイースト・エンドの生活レベルに合わせ、貧民者に成り切って
の正にフィールド・ワークは、今日のあらゆる研究の原点ともいえるだろう。
当時のロンドンの様子が手に取るように理解できる点は、社会学、経済学的にも価値が
ある内容で、また、カナダのイヌイット族と英国人の比較などはジャックだからできた
ことかもしれない。
将来のアメリカを含めた、文明の発展に警笛を鳴らしたジャックは、現在でも十分に
通じるものがあり、その後の社会主義思想者へ影響を与えたことは言うまでもない。
入って書き上げたルポです。
世界で最も裕福な大英帝国の中心地ロンドンというのは、当時だれひとり否定する
ことがなかったことで、その暗部に迫り、現実のロンドンの貧困を、鋭い洞察力を持って
書き上げたジャック自身も、あまりにも酷い貧民街イースト・エンドの状況に驚いている
ことが理解できた。自らイースト・エンドの生活レベルに合わせ、貧民者に成り切って
の正にフィールド・ワークは、今日のあらゆる研究の原点ともいえるだろう。
当時のロンドンの様子が手に取るように理解できる点は、社会学、経済学的にも価値が
ある内容で、また、カナダのイヌイット族と英国人の比較などはジャックだからできた
ことかもしれない。
将来のアメリカを含めた、文明の発展に警笛を鳴らしたジャックは、現在でも十分に
通じるものがあり、その後の社会主義思想者へ影響を与えたことは言うまでもない。