アルバム3作目の「この道の向こうに」は、音楽家としての確かな成熟を感じさせるが
この2作目「とき」は、音楽家としての苦悩がそのままに描かれている。
粗削りで人間臭く、まるで実験的な表現の模索。
シンプルなメロディラインを、心の不協和音が奏でていく。
光と影、純粋と不純、平静と狂気、優しさと暴力性、良作と駄作。
そのピアノは、矛盾するエネルギーに悶え苦しみ、助けを求めるかのように
弾き出されていく。
ある意味では、この頃の彼女でしか出し得ない音なのかもしれない。
それは時折、突然に、予想出来なかった驚くべき音楽的発見を与える・・・
その音は、聴くたびに、また違う表情を私にみせた。
いつも同じで、いつも違う音。
究極の芸術とは、常に未完成なものなのかもしれない。