かつてアジアン・ポップスのブームがあった頃、ホリプロがサウンデイジアというレーベルをやっていたことがあった。本盤は、せっかくホリプロが自主レーベルを立ち上げたのだから…と、同事務所の重鎮だった鈴木ヒロミツさんがリリースしたシングルだと思われる。発売当時の音楽雑誌でも大して大きく取り上げられたわけではない。ただ、ヒロミツさん自身がレギュラーで出ている番組で宣伝していたことは覚えている。
タイトル曲の作詞・作曲やプロデュースを担当したのはバブルガム・ブラザーズの二人。バックのミュージシャンも完全に彼等の人脈である。よって曲調はホーン・セクションを配したソウル/ファンク路線で、モップス時代のようなロックを期待すると少なからずガッカリする。カップリングの"たどりついたらいつも雨ふり"のリメイクも女性ボーカルをフィーチャーしたレゲエ調である。
ヒロミツさんをはじめ、この世代のミュージシャンは昔と同じことをやり続けることをよしとしない人も多い。亡き河島英五さんなんかも、"昔と同じことばかりやってていいのかな?"とよく言っていたような。だから、バブルの二人にプロデュースを依頼したのは"あえて"の行動なのだと思う。何より、タイトル曲の歌詞には(作詞そのものはブラザートムが担当しているものの)ヒロミツさんの人生観が反映され、長年歌ってきたこの曲へのアンサーソングになっている。それだけに、この曲がヒロミツさんの最後の新曲になってしまったことが残念でならない。まだまだ続きが聴きたかった。