はんなりとした実存主義的小説ともいうべきでしょうか。何度も何度も繰り返し時間によって洗濯された洗いざらしのように汗臭い実存の臭いはすっかり消えて、あとに残るのは時間の残香のようです。
ある箇所を似非京都風に変換してみました。
「聞いておくれやす、いつのことやら忘れてしまいましたが、なにしろ突然ですねん、二十六人もの知りとおもない見知らぬ子供さんに囲まろて、このときですがなはじめて理解不能なものが出現したんどすなあ。ようは人生とお母さんについてわてが十分わかっとるつもりやったものと一致させられへんものができたということでんねん。それでどすな、わてはわかろうとする試みを途中で放棄して、すでにわかっとるものによりぴったりする別の始まりをさがし始めましたんどす。こやしてなんであれわてにはものごとを序の口しか把握できておらへんという想いが生まれましたんどすなあ。えらいこってすわ」
なにか根本的なおかしみというものが表現されているように感じます。
お薦めです。
なお、翻訳が見事です。ぐいぐいと読み込んだ痕跡が多く見られます。その結果として図らずも味わい深い軽味のようなものが醸造されているように感じます。大袈裟でいけませんが、こういった方々によって文化がしっかりと支えられていると実感できます。
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そんな日の雨傘に (エクス・リブリス) 単行本 – 2010/6/1
ヴィルヘルム ゲナツィーノ (著) 著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます この著者の 検索結果 を表示 |
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- 本の長さ197ページ
- 言語日本語
- 出版社白水社
- 発売日2010/6/1
- ISBN-104560090106
- ISBN-13978-4560090107
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商品の説明
出版社からのコメント
《46歳、無職、どこにも居場所がない...》
重いけれど軽やかな、「靴男」の果てしないモノローグ。「自分が許可してもいないのにこの世にいる」という気分から逃れることができない、46歳、無職の主人公は、何をするでもなく、「人生の面妖さ」に思いをめぐらし、平凡で、どこにでもある、様々な路上の出来事に目を留める。地下道のホームレスの男たち、足元に置かれた他人のトランク、サーカスの娘と馬のペニス......。そのたびにとりとめのない想念が脳裏をよぎり、子ども時代の光景がなんとなしに思い出され、なにげない言葉が心に引っかかる。遊歩の途中でつぎつぎと出会うのは、過去になんらかの関係を持った中年の女たち......彼女らの思い出がふつふつと浮かんでくる。主人公がなにかから気をそらすように歩き回るのは、同棲していた女が愛想を尽かして出て行ってしまったからだ。しかも靴を試し履きする臨時収入が減り、生活もままならなくなってきている。そうした挫折と失意が、居場所のない思いをいっそう深めてゆく......。
作家は本書で一躍注目を浴び、2004年にドイツ最高の文学賞《ビューヒナー賞》を受賞している。
内容(「BOOK」データベースより)
46歳、無職、つい最近、彼女に捨てられた。どこにも居場所がない…。頭に浮かぶのは、「人生の面妖さ」をめぐる妄想ばかり。重いけれど軽やかな、「靴男」の果てしないモノローグ!“ビューヒナー賞”受賞作品。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ゲナツィーノ,ヴィルヘルム
1943年、ドイツのマンハイム生まれ。ギムナジウム(中等高等学校)を中退し、17歳の頃からジャーナリズムにかかわる。30代になって高校卒業資格を得て、40代の前半にフランクフルト大学でドイツ文学、社会学、哲学を学ぶ。ラジオドラマの執筆、フリージャーナリストとして活躍しながら、数多くの小説を発表する。長い間、ごく一部の読者にしか知られていなかったが、『そんな日の雨傘に』がテレビの文学番組で絶賛されたのをきっかけに、一躍脚光を浴びる
鈴木/仁子
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学准教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1943年、ドイツのマンハイム生まれ。ギムナジウム(中等高等学校)を中退し、17歳の頃からジャーナリズムにかかわる。30代になって高校卒業資格を得て、40代の前半にフランクフルト大学でドイツ文学、社会学、哲学を学ぶ。ラジオドラマの執筆、フリージャーナリストとして活躍しながら、数多くの小説を発表する。長い間、ごく一部の読者にしか知られていなかったが、『そんな日の雨傘に』がテレビの文学番組で絶賛されたのをきっかけに、一躍脚光を浴びる
鈴木/仁子
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学准教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 白水社 (2010/6/1)
- 発売日 : 2010/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 197ページ
- ISBN-10 : 4560090106
- ISBN-13 : 978-4560090107
- Amazon 売れ筋ランキング: - 306,011位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年7月17日に日本でレビュー済み
表紙の写真にひかれて読みました。
外国作品は難しい印象があり、この作品もまた理解できたのかどうかあやしいところです。
自分の存在価値を認めない神経質な中年の男性が、過去や、女性や、世間をやり過ごしている日常が、止まない長雨のように暗く絶望的でもあるはずなのに、どこか軽やかで美しく描かれています。
舞台は外国(ドイツ)であり、登場人物の名前も、風景も、そしてその描写が詩集を思わせる翻訳の良さなのでしょう。
タイトルどおり、季節の、また人生の梅雨時期に重なる作品です。
この作品はドイツでも多くの賞を受賞しており、芸術としての文学作品とはこういうものなのだなと勉強になりました。
外国作品は難しい印象があり、この作品もまた理解できたのかどうかあやしいところです。
自分の存在価値を認めない神経質な中年の男性が、過去や、女性や、世間をやり過ごしている日常が、止まない長雨のように暗く絶望的でもあるはずなのに、どこか軽やかで美しく描かれています。
舞台は外国(ドイツ)であり、登場人物の名前も、風景も、そしてその描写が詩集を思わせる翻訳の良さなのでしょう。
タイトルどおり、季節の、また人生の梅雨時期に重なる作品です。
この作品はドイツでも多くの賞を受賞しており、芸術としての文学作品とはこういうものなのだなと勉強になりました。
2010年9月21日に日本でレビュー済み
「靴の試し履き」という職業はいかにもファンタジーっぽいが、
実在するんだろうか?
あったらなんとも、世界の奥深さを痛感するところだけれど。
「面妖」という言葉が頻出し、
(もちろん訳者の言葉選びのテクニックでもあるわけだが)
なるほど確かに世界は、人生は、「面妖」で、妙に腑に落ちる言葉だ。
仕事やら何やらで忙しく、忙しいわりに、
どうも毎日おんなじこと繰り返して足踏みしてるだけじゃないか?
と行き詰まっている(私の)日々の中で、久しぶりに読んだ、文学らしい文学。
実在するんだろうか?
あったらなんとも、世界の奥深さを痛感するところだけれど。
「面妖」という言葉が頻出し、
(もちろん訳者の言葉選びのテクニックでもあるわけだが)
なるほど確かに世界は、人生は、「面妖」で、妙に腑に落ちる言葉だ。
仕事やら何やらで忙しく、忙しいわりに、
どうも毎日おんなじこと繰り返して足踏みしてるだけじゃないか?
と行き詰まっている(私の)日々の中で、久しぶりに読んだ、文学らしい文学。